リアクション
祥子のワニワニバーガー、菊のラーメンと続けて完食した男は、満足気な笑みを浮かべる。
「フ……もう私は自分の正体や使命等全てがどうでも良くなってきたぞ。世の中には、例え私が誰であろうと関係なく、周囲にコレほどの快楽追求が溢れているのだからな」
ニート一直線にも思える発言をした男が、ふと、テーブルに置いたドラムスティックを見る。
「しかし……あの青年……何故、これを私に託したのか……」
と、手に持ったドラムスティックでラーメンの器を叩いてみる。
そこに美羽がやってくる。
「ねー、誰かドラム出来る人知らない? お願いしていたドラマーがヒトデ食べて食中毒で運ばれたの!! もうすぐ出番なのよ!!」
客を見渡す美羽の目に、ドラムスティックで器をリズミカルに叩く男が映る。
「あ……」
「む?」
見つめ合う男と美羽。
暫し経った時、そこにボディペインティングサービスが一旦休憩に入ったアスカがラムネを買いにやって来る。
「あ〜、流石に疲れたわぁ……て、まだいるの? 金髪ギリシア彫刻君?」
「アスカ! 彼を説得するの手伝って!!」
美羽がアスカに駆け寄る。
「手伝う……て何を?」
「ドラムに縁がありそうなのは彼だけなのに、何か正体がバレるとか記憶がどーとか言って……」
「バレるぅ……? あ……」
アスカの頭に、先程彼が「まるで嫌味の宝物庫だ」と言っていた『エポドス』という友人の存在が浮かぶ。
「ははぁーん! なるほどねぇ……つまりぃ、正体がバレなければ出るって意味だよねぇ?」
アスカが男にニンマリと笑いかける。
「……変装しろ、とでもいうのか?」
「ううん、私がメイクアップしてあげるぅ!! あと、名前も考えてあげないとねぇ!」
全ての歯車が噛み合った瞬間であった。