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リアクション
第2章 可愛い生き物でも食べれらるなら食料としか見ない乙女たちPart1
「お腹もいっぱいになったし。頑張って発掘しよー♪」
透乃は人目を気にせず鎧貝スタイルのまま海の中へダイブする。
「やっぱりウォータブリージングリングの方が快適だね、使ってる人も何人かいたし。陽子ちゃんも早くおいでー」
「え・・・このままですか?せめて上にTシャツとか、大きな鎧貝に・・・」
「なぁに?聞こえないよーっ」
「いえ、何でもないです。ふぅ・・・」
絶対聞こえてるはずですよ・・・と思いながらも陽子はしぶしぶ海の中へ入る。
「陽子ちゃんの後姿・・・やばいな。紐がちゃんと結べているか、私がチェックしてあげよう」
遠目で見ると何も着ていなさそうに見え、霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)は黒色の双眸をギラつかせる。
取れてしまわないか、さりげなくチェックしてあげるだけのつもりだったが・・・。
もっとじっくり拝見したい気持ちに負けてしまい大接近する。
「(―・・・はっ、やっちゃんがこっちを!?)」
危険な眼差しを向けられ、陽子は胸を両手でぱっと隠して彼から離れる。
「よ、陽子ちゃん誤解だ!私は紐が取れないかどうか見ようと・・・」
「紐を取る気だったんですか!?」
取ろうとされたのかと勘違いした彼女は大声を上げる。
「やっちゃん、いくら見たいからってそんなの私が許さないよ!。紐を引っ張るのは私なんだから」
「ちょっと透乃ちゃん、人が聞いているのに・・・なななな何を言い出すんですかーっ」
「ありゃ。えへへ〜♪」
「はぁ〜、日の高いうちから何言ってるのよ」
「芽美さんまで鎧貝・・・!?」
陽子と違いガン見されても平気な月美 芽美(つきみ・めいみ)まで、2人とお揃いのギリギリな姿に泰宏は鼻血をジュバッと噴出す。
「ねぇねぇ、芽美ちゃん。ちょっとこっちに来て!」
何やら良からぬことを思いついた透乃は彼女を手招きする。
「ん、どうしたの?」
「あのさ、どうせならやっちゃんも・・・ごにょごにょ・・・」
「―・・・へぇ、面白そうね」
「2人で何をこそこそ話してるんだ?って、こっちに来てるけど・・・何だか嫌な予感がっ」
「やっちゃ〜ん、つーかまえた♪」
「抵抗しても無駄よ」
「へっ!?あの・・・何を?この状況はとっても嬉しいが・・・。いやいや、そうじゃなくってどうして陸に!?魔列車を発掘するんじゃないのか」
「その前にやることがあるんだよね」
陸に上がった2人は泰宏をテントの陰に引きずり、男子用の鎧貝を渡す。
「これをどうしろと?」
「それに着替えるんだよ」
「誰が?」
「やっちゃんが」
「どうして・・・私が!?」
「他の誰かになんて着せるわけないし。はい、これは頭につけてね」
「そんな・・・明らかにヤバイと思うし、やっぱり私はダイビングスーツで!芽美さんからも、こんなのナシだって言ってくれ。えっ、無視か・・・」
芽美に助けを求めるもののシカトされる。
「―・・・分かった。着るからちょっと離れていてくれるか?しくしく・・・」
2人の“命令させて”の態度に負けてしまい、しぶしぶ着替える。
「着れた?」
「何とかな・・・。(こんな姿、あまり他の女子には見せられないな)」
「うん似合ってるよ♪」
「それって喜んでいいのか?」
どんよりとへこみつつ、泰宏は2人と共に海の中へ戻っていった。
1人で待っている恋人の元へ戻った透乃だったが、どこにも姿が見当たらない。
「あれれ、陽子ちゃんどこいったのかな?」
「透乃ちゃん、向こうの岩場にいるみたいよ。あんなところで何しているのかしら」
ぐるぐると岩場の回りをうろつく陽子を芽美が見つける。
「そんなところで何やってるの?」
「―・・・芽美ちゃん、この岩の隙間にニャ〜ンズが逃げ込んでしまったんですよ」
陽子のアボミネーションの禍々しい気に怯えてしまい、隙間へ逃げ込まれてしまった。
「そのサイズだと小さいみたいね。どのみち、入れそうにないから諦めましょう」
「せっかく見つけたのに残念ですね・・・」
人間の子供すら入れないほど狭い隙間なため捕獲を諦めた。
「うわぁあっ、ニャ〜ンズが!?というか何故、私ばかり狙われるんだっ」
「この中で一番、遊びやすいからじゃないの?」
「そりゃないぜ芽美さ〜ん。このままじゃ、鎧貝の紐がーーっ!!」
泰宏は情けない声音で言い、ぺるぷみぃ〜と叫ぶ。
ニャ〜ンズに紐を咥えられ、ぶんぶんと振り回される。
「あちゃー・・・何か予想外だねー」
「いたずらはいけませんよっ」
陽子がアボミネーションの気を放ったとたん、怯えたネコ鮫は紐から口を離す。
「ふぅ、助かったぜ陽子ちゃん」
「―・・・きゃぁああぁあ!!こっちに来ないでくださいっ」
「えっ、そんな・・・私が何をしたっていうんだ!?確かに・・・ちょっと鎧貝姿をよく見ようとしたが・・・)」
いきなり拒絶された彼は彼女にいったい何をしでかしたのか、記憶をたどってみるがガン見したことくらいしか思い出せない。
「やっちゃん、下を見てっ」
「下・・・?砂とか岩とかしか見当たらないが。―・・・おわぁああっ!?」
透乃に言われて見ると・・・、そこに無ければいけないものがいつの間にか無く大慌てで探す。
「そんな危険な格好でうろつかないで、その辺に隠れていて」
「そうだよな・・・。こんなところ・・・他のヤツに見られでもしたら、変質者扱いされてしまうっ」
「こいつを狩ったら探しにいってあげるよっ」
パートナーの危機よりも食欲が優先され、底無しの胃袋におさめてやろうと迫る。
「うわっ!?噛みつこうとしてきた!」
鋭い牙をギリギリでかわすものの、パスファインダーの素早さでも、水圧により思うように動けない。
「む〜・・・、陽子ちゃんのアボミネーションの効果がきれちゃったのかな」
相手も生きるために必死なのか、生物の本能が畏怖の効果を消し去ってしまった。
「でも抵抗されるほど、食べてみたくなっちゃうんだよね♪」
食べれる美味しいものなら、ゲテだろうが何でも食べる彼女は、梟雄斧【氷月】でニャ〜ンズを頭部から尾ビレにかけて一刀両断にし、煉獄斬で膾に叩く。
「後は細かくしてしまえば浮きやすくなりますね」
ぶくぶくと沈む肉片を陽子はブリザードの吹雪で瞬間冷凍し、ぷか〜んと海面に浮かばせる。
「透乃ちゃん、早くやっちゃんの鎧貝を!」
「うん!誰かに目撃されるまえに、早く見つけてあげなきゃ・・・。ん、魚に何かひっかかってる・・・」
ひょいっと紐を摘むと真ん中に貝殻がくっついている。
「あったー!!やっちゃーん、見つけたよー」
ぶんぶんと振り回しながら泰宏のところへ持っていく。
「うぁああ透乃ちゃん、そんなに振り回すと紐が・・・」
「あっ」
ブチッと音を立てて紐が切れてしまった。
「ごめーん、今直すから待ってて」
いったんテントに戻った彼女は瞬間接着剤で紐と鎧貝をくっつける。
「うーん・・・これで大丈夫かな?」
修繕したそれを急ぎ泰宏のところへ持っていく。
「ちゃんとくっついたから平気だよ(たぶんね・・・)」
「はぁ〜・・・これで変態フラグは回避だな。見えなきゃオッケーだぜ」
その姿だけで十分危険だが、アルのとナイのとでは違うはず・・・と呟く。
「もう人前に出ても大丈夫みたいね。やっちゃん、1つ頼みがあるんだけどいい?」
「なんだい芽美ちゃん」
「ニャ〜ンズを何匹か捕まえて欲しいの」
「あのネコ鮫か・・・あぁ分かった」
ややトラウマになりかかりつつも、芽美の頼みとあらばやるしかないとネコ鮫を探す。
「(とはいったものの・・・あまりデカイのは眠らせることすら難しそうだな)」
ちょっと小ぶりなサイズでもいいかと。珊瑚や岩陰に隠れていないか辺りを見回してみる。
「―・・・ワカメにじゃれているのがいるな。特にどれくらいの大きさって言われていないしアレでいいか」
1メートルサイズもないニャ〜ンズの気を引こうと昆布をフリフリと揺らし、それにじゃれつくネコ鮫たちと視線を合わせる。
彼の黒い瞳を見てしまった海のギャングは、ヒプノシスでこっくりと眠ってしまった。
「ありがとうやっちゃん、危ないから離れていてね」
芽美はネコ鮫で実験しようと感電防止に対電フィールドを敷設する。
「タンクからポータラカマスクに変えて動きやすくなったけど。万が一ってこともあるからね」
「あぁ・・・そうさせてもらうぜ」
全力で撃ち込んでやるという残忍な目つきに変わった彼女を恐れた彼は慌てて避難する。
「遠くから撃つと当てづらさそうだな・・・。芽美さんまで巻き込まれたりしないだろうか?」
逃げた先は彼女が米粒よりも小さなサイズにしか見えないほど離れている。
「ちょっと焦がしても、後で料理してもらえばいいわね」
泰宏が安全地帯と思われる位置まで避難したのを確認した芽美は、轟雷閃の電撃をすやすやと眠っているネコ鮫に浴びせる。
獲物は悲鳴を上げることもなく息絶えてしまったが、彼女の回りを泳いでいた魚介類も巻き込まれ天に召されていく。
「そんな・・・対電フィールドがっ!?―・・・うぅっ」
彼女の力が強すぎるせいか、己自身も感電してしまい意識が飛んでしまう。
「あわわっ、芽美さーん!」
沈んでいく彼女を泰宏が抱えテントへ運ぶ。
「あっちゃー・・・。芽美ちゃんもさすがに耐えられなかったみたいだね?」
「緩和しているとはいえ。自分の攻撃のダメージを受けてしまうわけですからね」
「やっちゃんに任せて先に発掘してようか」
ネコ鮫の肉片を調理場に届けた後、彼に介抱をさせているし、待ってる時間ももったいないからと、2人は先に発掘現場へ行く。
先に現場で作業を始めているセレンフィリティは、鮫の襲撃の備え女王の加護で洞窟付近を警戒する。
「さーて、残りの作業をサクサク進めましょ」
「ニャ〜ンズが接近してきた時のために、私たちは運転車両の発掘を担当しようかしら」
奥の方で小さな爆薬を仕掛けている彼女に、セレアナがつんと肩を叩き呼ぶ。
「そうね。先にこれを爆発させたら、そっちの方に取り掛かるわ」
外へ出るとポチッとスイッチを押し、破壊工作で邪魔な岩を砕く。
「何か爆発した音が聞こえたけど。もう発掘再開しちゃってるのかなー?」
「えぇ、後部車両の方をね」
セレンフィリティは大きな声で話かける透乃の方へ振り向き、奥の方にくいっと親指を向ける。
「ねぇ、セレアナちゃん。客車は6両あるのかな?」
「気が遠くなるわね・・・」
「すごーいっ!そんなにあるなら、寝台車とか提案出来るわね!」
内装までバッチリ終わった魔列車を桜月 綾乃(さくらづき・あやの)が頭の中で想像してみる。
「でも全部発掘していると、走らせるまでかなりの日数が必要になるわよ」
「いやぁああ〜っ。全部発掘したいの!!」
さらっと希望を砕く桜月 舞香(さくらづき・まいか)に、少女はじたばたと手足をばたつかせる。
「まず走らせなきゃ意味がないからね。客車は2両分だけにして、後はどうするか校長たちに聞きましょう」
「ぶぅ〜っ。分かったわよ・・・」
「あたしは綾乃の意見書をまとめて、桜井校長先生に送っておくから発掘を進めていてね」
「ちゃんと送ってねー!」
「はいはーい、分かったわよ。まったくもう、どんだけ鉄道が好きなのかしらね」
パートナーを発掘現場に残した舞香は、意見書を送ろうと陸へ戻る。
「携帯で桜井校長先生にメール送っておけばいいわね」
ごそごそと荷物の中から携帯を探していると・・・。
「何かしら、この紙切れ」
紙切れが彼女の荷物に紛れ込んでいたのを発見し、ぺらりと開いてみる。
「えーっと・・・まいちゃんへ。念のために、この手紙を入れておいたわよ。通勤用ならドアの数が少ないと思うから増やしたほうがいいかも。長時間乗るタイプにするんだったら寝台車も必要ね。―・・・下の方にもいろいろ書いてあるわね」
読み上げてみると魔列車の内装についての、意見がまとめられている。
「まぁ、これをメールで送ればいいのね。紙の書面だと向こうに届くまで時間かかるし」
ぽちぽちと箇条書きにしてまとめ、校長のアドレスへ送信する。
「早く戻らないと綾乃に遅いって言われそうね」
10分もかからず打ち込めたが、現場へ行く時間を考えるとご立腹モードになってしまうかもと急ぎ戻る。
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