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リアクション
第7章 魔列車の引き上げ開始!
祥子も引き上げの準備をしようと、パートナーたちに声をかける。
「静香、ザイルを機体に装着させてくれる?」
「はい、母様!」
彼女のためならばと静香はインドラに登山用ザイルをセットする。
「朱美は点検をお願いね」
「ちぇんとセットしたから、千切れない限りは大丈夫よ」
「空から引き上げる時は、2回ライトを点滅して合図が送られますけど。その後の指示は照らしながら送ってくれるそうですよ」
「レリウスの言う通り、その合図で引っ張り上げてね」
「了解しましたわ、母様」
「後は合図を待つだけね」
2人はそう言うとインドラに乗り込んで引き上げの合図を待ち、空で待機する。
発掘現場の方では、すっかり怒りを納めたヨンが客車の発掘を手伝っている。
「アリスさん、車輪の中の砂利が取れていませんよ」
懸命に作業する皆を見てひとまずアキラへの怒りは忘れて、頑張らなければとアリスと一緒に発掘の手伝いを始める。
「このスコップ、掘りづらいわヨ・・・。きゃあっ!」
といってもアリスサイズなのだが、彼女にとっては砂利が重すぎるようで、ザザーッと崩れたそれに埋もれてしまう。
「大丈夫ですか!?」
ヨンは大急ぎで砂利を指で退けてやり、小さな少女を救出する。
「私が土を崩しますから、それを退けてくれます?」
「はーい、分かったわヨ。手元くらいは照らしてあげるネ」
せめて怪我しないように補助するネ、と作業員用の耐水性ライトを点けて照らす。
「ありがとうございます、アリスさん」
彼女が作業しやすいように千枚通しの先を、小さな穴に入れて崩してやる。
「ワタシなら細かいところもキレイに取れるネ!」
「そろそろ簡易レールの掃除も終わりそうでしょうか?」
途中で小石などが詰まってローラーが動かなくならないよう、デッキブラシで掃除しているコレットをちらりと見る。
「このレールの上に、砂粒一粒すら存在させないわっ」
趣味レベルで自宅に線路を敷いた主人に、庭師として雇われたかのように、ハウスキーパーで塵1つ残さずキレイにする。
「枕木の間に石が!?」
障害物発見レーダーでもついているのかと思わせるほど、小さな石すら見逃さず、さっと除去する。
「掃除終わったわよ」
「丁寧に作ってもらえたし、特に問題はなさそうだな。いつでも引き上げオッケーだ」
レールの点検を終えた一輝は洞窟の外へ出る。
「アキラさんのところへ戻るので、10分後くらいにお願いしますね!」
そう言うとヨンはアリスを肩に乗せてパートナーのところへ戻る。
「もうすぐ引き上げ開始みたいですよ」
陸に上がった彼女はパタパタと駆け寄り、怒っていたことをすっかり忘れてアキラに知らせる。
「おー、よし。ピヨの出番か!」
「そろそろヨンたちが陸についた頃だな。合図を送るか」
海面に顔を出した静麻はライトのスイッチを入れ、レリウスとコレットがいる方角を照らし合図を送る。
「引き上げ開始ですわね!」
その合図にコレットはハンドルを握りエンジンをかける。
アクセルをゆっくりと踏み、レリウスに目配せをしてタイミングを合わせて引き上げ始めた。
「おや・・・アキラのガーゴイルとゴーレムたちも手伝っているみたいですね?」
機体に装着しているロープを引っ張り、懸命に手伝おうとしている彼らをレリウスが見る。
「ゴーレムさん、コレットさんの方の方を手伝ってあげてください」
バランスを取ろうとヨンは彼女の補助に回してやり、ザイルを引っ張るように指示する。
ライトの明りが2回点滅し、空にも合図が送られた。
「今だピヨ、列車を持ち上げるんだ!」
アキラの指示にジャンアントピヨが短い羽をはばだかせる。
「さて、ここからどうするんだ?」
いったん海に潜って聞くかと静麻は一輝に顔を向ける。
「(車体をレールの上に乗せる指示を送ってくれ)」
魔列車の車輪を浮かせようと、彼は静麻に片手でサインを送る。
「ちょっと上げる感じでいいのか」
「少し持ち上げればいいんですの?」
海面から顔を出した彼が照らすライトの角度を確認し、静香はインドラの高度を調節する。
「静香、このまま引っ張ればいいのかしら」
「特に指示もありませんし、高度をキープしたままそうするってことじゃないんですの?」
「まぁ、何かあればまたライトで知らせてくれるわよね」
低速にセットした朱美はモニターに映した海面をズームアップし、ライトの位置を確認する。
一方、海の中では・・・。
「運転車両が徐々に洞窟の外へ近づいています!」
刀真がカメラに向かってナレーションを続けている。
「では、空の方も見にいってみましょう」
月夜にレンズを向けてもらおうと、そこには静香たちのインドラとジャイアントピヨが、車体を引き上げようとしている。
「何やらジャイアントピヨを応援している声が聞こえますね」
「可愛い・・・私も乗ってみたいわ」
小さな翼で懸命に頑張るジャイアントピヨの上にいるアキラにレンズを向ける。
もちろん“可愛い”と言ったのは彼にではなく、黄色い大きなピヨに言っている。
「がんばれ、ピヨ!がんばれ!」
「フレーフレー、ピィ〜ヨッ!」
「がんばってください、ピヨさん!」
アキラだけでなく浜辺にいるヨンとアリスも大声で応援する。
その作業を阻もうとする大きな影が、ザイルとロープの回りをぐるぐると泳ぐ。
「紐らしきものが好きなのだな・・・」
ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)はパラミタイルカに乗り、それを玩具にしようとするニャ〜ンズを撃退しようと、ヴァーチャースピアの柄で突っつきまわす。
「それは玩具ではない、去れ!」
フォァアアア・・・!!
唸り声を上げた海のギャングは、ボフッと毛を逆立て彼にニャ〜ンアタックをくらわそうとする。
なんとか避けられたものの、尾ビレを振った先を見ると、魚たちが遥か彼方へ吹っ飛ばされていた。
「恐ろしい威力だ・・・」
オートガードや歴戦の防御術でそれほどダメージは受けそうにないが、飛ばされてしまってはその隙に、一輝たちが狙われてしまうかもしれない。
「―・・・うーむ。だいぶ怒らせてしまったようだな」
危険なヤツがいるにゃ!と思われ、岩陰からギロリと睨まれる。
「見た目と違い、なんという獰猛さなのだ!?」
怒ったネコ鮫に追いかけられ、避けるだけで一杯一杯になってしまった。
一方、一輝の方は魔列車がレールの上滑り、洞窟の外へ運び出せたのを確認した。
彼も海面から顔を出し、静麻にライトで陸側へ照らしてもらう。
「いっけーピヨ、今こそ可愛いだけじゃないって見せつけてやるんだ!」
アキラの声にジャイアントピヨは翼をはばたかせ、いっきに高度を上げる。
「あれが魔列車ですのね?」
「このまま駅の予定地へ運ぶのかしら」
「大きなヒヨコに乗っている彼に聞いてみましょう。―・・・アキラ、ヴァイシャリーの方へ運び始めますの?」
「もう日が沈みそうだから、今日は無理かなー」
「あら、そうですの・・・。では、陸の方へ運びましょう」
そう言うと静香はインドラをジャイアントピヨのペースに合わせながら、運転車両を陸へ運ぶ。
「無事に運び終わったようだな」
一輝は発掘現場へ知らせに行こうと洞窟へ戻る。
「陸に運び終わったみたいだぞ」
「よかった!もう夕飯だから戻ろうかな」
レキは海面から顔を出し、チムチムを呼んで浜辺へ戻っていった。
「静麻お兄ちゃん、ボクたちはどうする?」
「うーん、夕飯もらってから作業するか」
「じゃあいったん陸に戻るのね」
リオたちは先に食事を取ってから発掘作業に入ることにし、他の作業員も夕飯をもらおうと陸へ上がる。
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