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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション


chapter.1 漢コンテスト(1) 


 つい先日、防犯イベントが行われたばかりの空京の街。
 しかし犯罪の種というものは、どこにでもすぐ芽を出すのだということを、人々はまだ認識していなかった。

「……ダメだ」
 すれ違う人を目で追っては、いたたまれない様子で小さく呟くナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)。一体ナガンは、何に対して不満を抱いているのだろうか。
 その答えは、すぐ自身の口から語られた。
「最近の男子、全然ダメ」
 彼氏いない女子が集まった飲み会で出そうなフレーズナンバーワンのイラつきワードだが、ナガンはそんな言葉を口にしてしまうくらい、嘆いていた。最近、軟弱な男子が増えすぎてはいないか、と。
「これは、タマナシ系男子粛清計画を実行するしかない……!」
 草食系の上位版だろうか。初めて聞く系統を言いながら、ナガンは携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけた。
 短い会話の後電話を切ったナガンは、そのまま街中を走りだすのだった。



「……ということで、お前らに集まってもらったのはそういうわけだ」
「いや、どーいうわけだよ!?」
 ナガンが計画の実行を思い立ってから数十分後。ナガンの目の前には、数人の男性が並んでいた。彼らは街中を歩いていたところを強引にナガンに誘われ、ここに集った者たちである。
 その中のひとり、鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)に早速つっこまれたナガンは、改めて企画の趣旨を説明し始めた。
「最近ふちゃちんやタマナシが増えてて不甲斐ないから、ここらでパーッと漢コンテストでもしようってことだよ。それで誰が一番漢らしいのか、決定しようじゃないか!」
 それで、集められたのが彼らだったようだ。当然よく分からないまま汚い言葉でなじられた一同は、即座に反抗した。
「誰がタマナシだ! 俺はタマナシじゃねぇよ!!」
 真っ先に大声でナガンにつっかかったのは、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)だった。しかし、ナガンはそんな時のために秘策を用意していた。
「まあまあ、せっかく今回は特別講師として漢らしいこの人も呼んだんだ」
「ん?」
 ナガンが手招きしたと同時、一同の後ろから足音が聞こえてきてラルクは振り返った。そして直後、声をあげる。
「と、頭領!?」
 驚いた表情で目を丸くするラルク。そう、そこに立っていたのは彼も所属している空賊団の団長、キャプテン・ヨサーク(きゃぷてん・よさーく)だったのだ。
「空賊系イケメン、ヨサークさんだ!」
「おい、空賊系ってなんだ、俺は空賊だ」
 改めて紹介するナガンに、ヨサークが言葉を挟む。イケメンは否定しないのかよ、という点はノータッチでいこう。
「ったく、急に呼び出されたと思ったらわけわかんねえことになってんな」
 どうやらナガンが先ほど電話をかけていた相手は、このヨサークだったらしい。彼が呼び出された理由は単純明快。ナガンは、ヨサークにコンテストの審査員をやってもらおうと思っていたのだ。
 そのヨサークの登場は、ラルクの気持ちを動かした。
「頭領がいるなら、コンテストに参加しないわけにはいかねぇよな! 頭領、俺の漢っぷりを見てくれな!!」
 そう言ってラルクは、あっさりとナガン主催のコンテストへ参加を決めた。というより、おそらく元々「漢コンテスト」と題された時点で割と乗り気だったような気もする。
「いや、つうか俺は審査するなんて一言も」
「コンテストは肉体審査と実技のふたつで行う、まずは肉体審査からだ! 脱げ!」
 ヨサークの言葉をナガンが遮り、強引にコンテストを始めてしまった。しかもその第一声が脱げ、である。とんだハレンチ大会だ。
 しかし流れ的にナガンやラルクはすっかりやる気満々で、団員たちのそんな様子を見たヨサークも「仕方ねえな」と彼らの戦いを見届けることにした。
 となれば、他の者たちもその流れに乗らざるをえないのは自明の理である。各々が戦いの面構えになってきた時、ヨサークから声がかかった。
「その前に、ルールくらい説明しろよ。何がどうなったら誰が勝つんだよ」
 確かに、審査員である彼からしてみれば、最低限の勝利条件くらいは欲しいところだ。しかし、既に服を脱ぎかけていたラルクと「他も早く脱げ!」と急かすナガンが、そのオーラでもって答えを出していた。
 なるほど、これ、やったもん勝ちなんだな、と。
「あーもう、やればいいんだろやればっ! 俺だって男だってところを、ここいらでちゃんと見せてやる!」
 虚雲が諸々につっこむことを断念し、開き直ったような口調で上着を一枚脱いだ。ちなみにこの時ラルク、とっくに上半身は裸である。
「ぼけっとしてると、あっという間に脱いじまうぜ?」
 なんだかかっこいいんだか悪いんだかよく分からない言葉を吐きながら、ラルクが他のメンバーを挑発する。勢いに乗っかった虚雲の行動も相まって、それらに釣られるようにして各々も自らの衣服に手をかけ始めた。
「そうだ! その勢いで脱ぐんだ!」
 ナガンがこれ見よがしに煽る。
 こうして、早くも趣旨や到達点を見失いかけている漢コンテストが、ここに開催された。なお、念のため補足しておくがその界隈では「漢」は「おとこ」と読むとのことだ。