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リアクション
レポート作成奇憚。
日夜遊んでいるように見られるが、水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)はれっきとした大学生である。
さらに言えば鉱石学を専攻していて、日々勉学に励んでいる。
「というわけで、今日はレポートを書くことにしたの」
「どのようなものじゃ?」
「『良質の鉱石と種もみマンの因果関係について』」
天津 麻羅(あまつ・まら)に問われたので、表題を読み上げてみた。ふむ? と首を傾げられたので、もう少し説明を続ける。
「種もみマンって良質の土に植えると強いのが出来るみたいだけど、それを良質の鉱石が取れる所に植えたらどんな種もみマンができるのか。その興味を追求してみようと思ってね」
「ふむ……面白いな。この結果何らかの因果関係が見つかれば、良質の鉱石の採掘所の見つけ方も容易になるというわけか」
「鍛冶産業も発展するわよ」
「そこまで考えておったか。緋雨にしてはやるのぅ」
『にしては』は余計だが、褒められるのは悪くない。
「じゃあ行くわよ!」
「うむ! ……どこにじゃ?」
「良い土壌がある場所。場所は前もって調べてあるわ」
「おお……緋雨らしからぬやる気と用意周到さ」
「ねえ麻羅。さっきから一言余計だわ」
「すまなんだ。緋雨がいつも以上に本気もーどだからかのぅ、素直に褒めようとしておるのじゃが」
いろいろと引っかかる言葉だが、まあいい。それより早く調べたい。
そういうわけで、あらかじめネットで目星をつけておいた場所へ向かう。
「戦闘力……たったの五か。ゴミね」
「緋雨、おぬし見たレベルと違う数値を言うでない」
「ハイドシーカーで相手の強さを見るとき、一度は言ってみたいセリフよね。これ」
実際に出てきた数値はレベル二十五とあった。そこそこ強い。が、そこそこだ。緋雨からしてみればなんてことはない。
「ちょっと歩けば来れる程度の土壌じゃこんなものなのかしら」
レポートに書きながら呟き、
「じゃあ次。次はドルイドである麻羅に勘で選んでもらおうと思います」
「わしか? ふむ、よかろう。この神の直感を見ておれっ!
……ここじゃ!」
「ラジャー」
植えて、待つこと数分。誕生した種もみマンに、ハイドシーカーを向ける。
「……あら、今度こそ戦闘力たったの五だわ」
「神の直感は使えないのか……」
「まあ、下手に高すぎてこれが壊れちゃっても今後使えなくなって研究できなくなるし。これでよかったのかもしれないわ。さあ次に向かいましょう」
続けて二人は獣人の村の鉱山へ向かった。
さらにはキマク鋼、アダマンタイト、ミスリルの産地と足を向け。
「……疲れたわ、さすがに」
「……うむ」
「早くレポートを終わらせてフィルさんのお店で美味しいケーキを食べたいところね」
「そんなに毎日ケーキを食べておるとふと」
「麻羅ー。それ以上言ったら私の戦闘力が五十三万になるわよ。……っと、こんなこと言ってないでまとめないと」
言って、緋雨は研究結果をまとめることにした。
獣人の村の戦闘力、もといレベルは三十程度。良質の土壌と変わりない。
キマク鋼やアダマンタイトの産地は共に四十五と高く、これは共通点なのだろうかと思いきや、ミスリルの産地で測ると三十に下がり。
「……まだ研究の余地があるようだ、っと。まとめ終わり!」
背伸びして、最後にもう一度レベルを見てみようとハイドシーカーを種もみマンに向ける、と。
「……あら?」
ぴぴ、と数値が上がっていった。
「え、ちょ。ちょっと待って」
「ん?」
どうした、と近付いてきた麻羅に、これ見て、とハイドシーカーを渡す。
「な、なん……じゃと!?」
数値の上がり具合に、麻羅も困惑している。
「この種もみマンの戦闘力は五だったのに……まだ上がっていくというの!?」
「ば……バカな……! こやつ、種もみマンじゃないのか……!?」
「更に上がって……きゃっ!!」
ボンッ。
小さな爆発音を上げて、ハイドシーカーは壊れた。
「……この結果、どう報告したものかしら」
「ありのまま今起こったことを書くしかないのう……」
余談だが。
後日、ある時期に出荷されたハイドシーカーに不調が見られたとして、大規模な回収作業が行われた。
緋雨の所持していたそれも回収対象に当たっており、つまりあの時の研究は意味を成さなかったことになり。
「ヤケケーキよ! フィルさん、おかわり!」
フィルスィック・ヴィンスレット(ふぃるすぃっく・う゛ぃんすれっと)の店で大量にケーキを食べる緋雨の姿があったとか。
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