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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

リアクション

 8.――『    』





     ◆

 手記の周りには、真っ黒な魔方陣の様な物が展開されている。
「アッハッハッハ!!! ソウカヨソウカヨォオオォオオオ!!!!! ソイツで封じ込めようッテェエエ魂胆カヨォオオ!!!! あーあ」
「知っているか、機晶姫」
「何をする気だ!」
 手記に向かい声を挙げたのはコアである。彼だけではない。その場の殆どが、今から起こることに疑問と畏怖を感じていた。ラムズ、手記、そしてラナロックを除いては。
「イィゼっ!! 封じてミロよ!!!!!! ただなぁ、ナンダッテこんな体ノナカニイクツモノ存在がアルのか、考えて見りゃあ、ワカルダロウヨっ!!!!」
「何? どういう事だ」
 今度は馬超が、ラナロックへと向かい声をかけた。
「俺たちぁあああああよぉオオぉおおお!!!!! 『亡霊』が怖くて恐くてたまんねぇのさぁあああ!!!!!!」
「負け惜しみ、だろうよ」
「ケッヒヒヒ!! じゃあ、ヤレヨ!!!」
 何かを観念したのか、ラナロックは羽交い締めにしていたラグナを手放し、手を広げた。笑顔のままに――、手を広げる。
「ジャアナ、先にイッテンゼ………………………!!!!!!!!!!!!!」
 手記の持っていた石、『封印の魔石』が手記の手から離れて宙に浮くと、ラナロックは声とは思えないような声で叫ぶ。漆黒の光が辺りを包み、そして何かを自ら中に押し込めた魔石は、光るのを止めて落下を始める。それと同じタイミングでラナロックの体も膝から崩れ落ちた。
「………………………やったのか!?」
「ラナロックさんが、倒れてる…………?」
 佑也がポツリと呟くと、大吾が恐る恐る様子をうかがいに彼女へと近付いた。が、先程の事があった手前、彼女の手が届く距離までは踏み込まない。
「………………………まさか、死んじまった、何て事、ないよな」
 アキュートは構えながら近付いていき、ラナロックへと手をさしのべる。
「だからそれは――!」
 その中では、ラナロックが倒れているときは近付くな。という暗黙の了解がなりたっていた。が、アキュートとしては関係ないらしい。
「おーい」
 彼が肩を抱き上げた時、ラナロックの瞳が開く。当然、全員が身構え、アキュートが人質に取られるものと武器を向けるが、彼女はそのまま半身を起こして辺りを見回すと、誰もいないところへ向かって微笑した。
「……………誰に?」
 ラグナが思わず首を捻ると、今度はアキュートの方を向いたラナロックが再び笑顔を浮かべる。が、彼の事は見ていないのだろう。焦点が定まっていない笑顔で、彼女はゆっくりと立ち上がった。
「どうしたんですかね、彼女――」
「知らぬよ。それより次を」
「次?」
「次の魔石を」
「これも使うんですか! 高いんですよ? この魔石」
「高いだ安いだは、命があってのものだろうよ」
「まぁ、そうですけど…………」
 ラムズと手記は会話を交わし、ラムズは渋々最後に持っていた魔石を取り出す。
「動くのなら更に――」
 魔石を構えた手記は、そこで一斉に止められるのだ。ラムズを除く全員から。
「待つんだ、彼女の様子がおかしい。何をした?」
 コアの質問に手記が返事を返した。
「魂を封じた」
「だから今の人格が――消えたのですね」
 辛そうな表情を浮かべるアイン。彼女の肩に手を当てたラグナは、やはり辛そうな顔をしながらに、ただ俯き、首を横に振った。
「仕方の無いこと、ですな。母上。に、しても、何故動いて――」
 ツヴァイはそこで言葉を止める。立ち上がり、虚ろな瞳で自分の横を通過していくラナロックの姿を見て。
「行かせるか!!! 此処で止めるんだ。止めなければラナロックさんは、彼女は引き返せなくなる!!!」
 大吾は再び盾を構えて、彼女の進行方向に立ち塞がる。彼は背に、最後のシャッターを背負っていた。
「ハーティオン、俺たちも行くぞ」
「あ、ああ! そうだ、彼女を止めなければ!!」
 大吾の横へと並んだ二人は武器を構えてラナロックを見詰める。が、ラナロック自身は相変わらず焦点の定まらないまま笑顔を浮かべている。
「もうお止めなさい!!! お嬢さん!!!!」
 懸命に声をかけるラグナは、ラナロックに駆け寄っていって彼女の肩に手を置く。
『私は向かわなければならない。私はこの先に進まなければならない』
 もう、普通の喋り方ではなく、電子音声のそれと成り果てているラナロックは、自ら肩に手を置いたラグナへと笑顔を向けて呟いた。
『ありがとう』
「………………その…………」
 彼女は返事を待たず、その手を優しく振りほどいて歩みを進める。
「ラナロック…………」
「退くが良い、再び封印を――」
 セイルの後ろから、手記が再び先程の力を行使すべく、二つ目の魔石を握ってラナロックへと歩み寄っていく。
「あの状態でも更に封印するする気ですか」
「仕方がなかろう。以外に止める手だてはないのだ」
 平坦に喋る手記は、黒い光を放ち始める。

「ハッハッハ!!!! そうはさせるかっ!!!!」

 と、このタイミングで、後ろから一同に向かい声がする。そこにはアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)を纏ったドクター・ハデス(どくたー・はです)が立っている。隣にはヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)がモジモジしながら立っている。
「ラナロックよ、我等がオリュンポスが助太刀するぞ!!!」
「助太刀だぁ!? ラナロックのねーちゃんにか?」
「左様! さぁ、行け! 我が部下、人造人間ヘスティアよ! 全リミッターの解除を許可する!!!」
「かしこまりました、ハデス博士…じゃなかった、クロノス様。 全武装セーフティ解除、ターゲットロックオンです!」
 ドクターの言葉に反応した彼女は、大吾、コア、馬超に向けてミサイルを発射する。
「ハッハッハ!! 正義の味方の諸君!! 我等、秘密結社オリュンポスの技術力を存分に堪能するがよい!!!!ハーッハッハッハ!!!!」
 ヘスティアが放ったミサイルが、ラナロックの前に立ち塞がる三人へと向かう。が、そこでミサイルの軌道が変わり、行き先がバラバラになっていく。
「へ、ヘスティアよ!!! 何故ミサイルを三基も撃って一発も前に進まんのだぁ!!! ラナロックに当たったらどうするのだ!!!」
「はぅあ!? ごめんなさい! ごめんなさいぃ………………!!!」
「俺たち、避けた方が良いのか?」
「わからん…………が、ラナロックと我々に当たらなければ――」
 コアが良いかけた時、グニャグニャと安定しない弾道のミサイルの一基が、後方、何かに当たって炸裂し、爆風で三人がよろけた。
「うぐっ……………!! コアさん、馬超さん、俺のシールドに入れ!!!」
「ぬっ……すまない」
「邪魔するぞ」
 もっとも至近距離にいた三人が懸命に爆風に耐えてより数秒。顔をあげた三人の前には大きな穴を開けたシャッターがあった。
「まずくは、ないか?」
「のようだ」
「ラナロックさんは!?」
 コア、馬超の言葉を遮る形で大吾が振り返り、ラナロックの姿を探す。彼女は爆風に煽られて転倒しているが、セイル、ウーマが彼女を庇っていたため、今以上の怪我、破損はないらしい。ゆっくりと立ち上がったラナロックはその穴へと向かい、歩みを進める。
「止めなきゃ!」
「させるかぁ!」
 三人がラナロックへと向き直ろうとしたとき、やや離れていた筈のドクターが、マチェットを降り下ろして攻撃行動を取っていた。
「くっ…………」
 コアがそれを自ら剣で受け止め、後ろの二人に振り返る。
「今のうちに彼女を――」
「駄目ですよ、此処は行かせないのです!」
 ドクターとコアが鍔迫り合いをしている側面から回り込んでいたヘスティアが、両手を広げて立ち塞がる。
「コア・ハーティオン!!! 此処であったが百年目ぇ! 我が野望の錆としてくれよう!!!」
「ぬぅぅぅ………………私は負けない!!」
「行こう、ラグナさん!」
 その様子を見ていた佑也が、呆然としているラグナに声をかけると、アイン、ツヴァイもラグナへと顔を向けた。
「我々の悲しみをもう、誰も背負わなくても良いように――」
「母上、参りましょう」
「…………そう、ですわね」
 既にシャッターの穴へと足を踏み入れているラナロックの後を追って、四人は走る。
「私たちは、どうします?」
「魔石の有用性はなんとなしにわかった。それでよしとするかの。ただ、この結末はちと気になるでな。彼等には悪いが、傍観させてもらうとしよう」
「傍観、ですか」
 ラムズ、手記はのんびりといた歩幅で、ラナロックたちを追うことにした。