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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第二十八篇:如月 正悟×泉 美緒
「お嬢様、学校につきました」
 一足先にリムジンから降りた如月 正悟(きさらぎ・しょうご)泉 美緒(いずみ・みお)の乗る座席のドアを開けた。
「ご苦労様。では、行ってまいりますわ」
 リムジンの運転手に向けて手を振る美緒。正悟は美緒の鞄を持ちながら、一緒に校舎へと入っていく。
「お嬢様、上履きでございます」
 下駄箱から上履きを取り出し、美緒の前に並べる正悟。彼女に仕える執事――それが正悟の立場だった。
「おはよ! 正悟くん! 今日さー、学校フケて一緒に映画行かない?」
 すると、気さくな印象を受ける女子生徒の一人が正悟に声をかけてくる。ちなみに、この女子生徒、とびきりの美人である。
 正悟は『本』の中の世界においては、なぜかやたらとモテていた。今、声をかけてきたこの女子生徒以外にも、色々な女子生徒から言い寄られているのだ。
「如月。わたくし、良いことを思いつきましたの。昨今、運動不足が叫ばれておりますでしょう? ですから、貴方も健康の為に、屋敷まで歩いて帰りなさいな。リムジンの運転手には、今日はわたくし一人で帰ると連絡しておきますからご心配なきよう」
 そして、やはりお約束として、正悟は主である美緒に嫉妬されているのだった。
「ちょ……! お、お嬢様、それはあまりにも!」
 焦る正悟に美緒はくすりと笑って応える。
「郊外までたった20キロの距離でしょう。たいしたことはありませんわ」
 そう返してくる美緒にげんなりしつつ、正悟は苦笑する。
 ――戦いもない日常。もしできるのならば、こんな日常もいいかもしれない。
 ふと、そう思う正悟であった。