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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第二十九篇:フレデリカ・レヴィ×フィリップ・ベレッタ
「こういう昼下がりも素敵ですよね」
 樹上に作られたオープンテラスで紅茶を飲みながら、フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)は対面に座るフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)にそう告げた。
 フィリップが大好きな童話のイメージから形作られた風景で、彼の好きな銘柄の紅茶を飲み、優雅な昼下がりの一時を過ごす。
 それが、フィリップもといフレデリカの望んだシチュエーションだった。
 ――フィル君に理想のシチュエーションを体験してもらい、彼が喜んでいる顔を見たい。恋愛はやっぱり自分本位ではなく、相手の事を第一に考えるべきだと思うのです。
 そう考えたフレデリカはただ一つ、これだけを思って『本』の中に入った。
(私が理想のシチュエーションを体験するより少しでもフィル君が喜んでくれたら……)
 その時のことを思い出していたフレデリカがぼうっとしていると、唐突にフィリップが問いかけてくる。
「フリッカ。結局、フリッカの理想の恋愛シチュエーションって何だったの?」
 突然声をかけられ、フレデリカはびくりと震えたものの、次の瞬間には恥ずかしそうに顔を赤らめ、口をゆっくりと動かす。
「理想の恋愛シチュエーション!? 興味あるけど私よりフィル君に体験してもらいたいな」
 そして、小さな声で、しかし確かな声でこう付け加えた。
「私はその隣にいれたらそれだけでいいの」
 ミスティルテイン騎士団の仕事等で多忙な毎日を過ごすフレデリカ。
 柔らかな日差しの中、二人だけの世界でゆっくりした時間を過ごすこの瞬間が、彼女にとっては素晴らしいものだった。
 そして、彼女のそんな素晴らしい瞬間は、まだまだ続きそうだ。