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リアクション
「勇者どの、旅人の宿屋へよくぞこられた。ゆっくりと休んでいきなされ」
勇者たちがLV上げに疲れ町に戻ってくると、宿屋の主人が暖かく出迎えてくれました。
渋いお爺さんのグラン・アインシュベルト(ぐらん・あいんしゅべると)です。
「今夜は“お楽しみ”の予定ですかな? 枕を新調してあるのじゃが」
ふぉふぉふぉ……と意味ありげに笑うグランに、島井と聖、そしてオルフェリアたちは顔を見合わせます。
若い男女がお泊りです。やることは決まっています。
「そ、そんな予定はありませんっ!」
何を思ったのか、オルフェリアは少し赤くなりながら答えます。
「それは残念じゃの。枕投げには最適だと思ったのじゃが、新しい枕……」
「はい?」
「枕投げを楽しむのではなかったのかの?」
「……やります、枕投げ」
「若い者はそう来なくてはのう……」
グランの厚いおもてなしにより、勇者たちは十分にくつろげそうです。
店内は客も少なく、静かな環境です。
「……」
ふと店内を見回すと。
明らかに他の泊り客とは違う、怪しい(?)一団がいるではないですか。
武装しています。モンスターがどうこうとか物騒な話をしております。
「……」
向こうがこちらに気づきました。
「あなたたちは……」
「にゃ? 御影は勇者にゃ」
「え? 私たちも……」
東 朱鷺(あずま・とき)が答えます。
「じゃあ……」
なんと前の章辺りで大暴れしていた、ドラゴンを退治した勇者たちではありませんか!
「バオヒヒヒ〜ン!」
外で馬のいななきまで聞こえます。
馬車ごと大勢で、ここで合流です。はい大丈夫です。あのまま置き去りじゃありませんよ。
「よろしくお願いします」
冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が皆を紹介してくれます。
洞窟内で仲間になった赤羽 美央(あかばね・みお)や柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)もいます。
台詞喋ってませんけど、いますよええ。みんな大切な仲間です。
「わいわいわいわい……」
一気に騒がしくなりました。
給仕が料理を持ってきてくれます。
それを見計らって。
「ところで、通常の料金にプラスで特別サービスでもつけようと思うのじゃが。なにプラス料金といってもたったの1VGじゃ」
「なんですか、それは……?」
島井が聞きますが、グランは微笑むだけです。
「頼んでみましょうよ、優しそうなお爺さんですし」
ルクレーシャは言いますが、そこに店員のアーガス・シルバ(あーがす・しるば)がそっとよってきてぽそりと耳打ちしてきます。
「特別サービスだけは断るように」
「?」
重要な助言だったようですが、よくわからなかったのでスルー対応らしいです。
「まあ、それならそれでいいが、他人の話は聞いておくようにな。もし、向こうの大陸に行って困ったら、また宿屋を訪ねるといい。仲間が働いている」
アーガスはそう教えてくれます。
結局。猫勇者が欲しがるのもあって、彼らはたらふく飲み食いしました。
特別サービスも。
「……ぐはっ!?」
勇者たちは、何か嫌な色の物を吐き出してその場に突っ伏してしまいます。
「やれやれ、言わんこっちゃない」
アーガスが丁重に介抱してくれたおかげで一命は取り留めたようです。彼は特別サービスを速攻で処分し、証拠隠滅です。
そして、そのままジロリとグランを一瞥。
「わかってはいたが、自重するように」
「……なぜじゃ? わしの渾身の手料理が……」
まあ、こんなのも旅のだいご味でしょう。
次の夜には枕投げ大会も堪能し、楽しく過ごしました。また来ましょう。
勇者たちは、よくわからないまま宿に二泊して、快適に旅立って行きました。
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