校長室
混沌のドリームマシン
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第五章 夢の終わりに…… 「平和ですね。この衣装もすーすーして少し落ち着きません」 普段は身に着けないような普通のお洒落な格好をして平和な町を歩くのはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)だ。普段修行や戦いに身を置く彼女がスカートを穿いているのは珍しかった。そのフレンディスに人々は温かい声をかける。それにぎこちないながらも笑顔で応えるフレンディス。 「はあ、こんなに幸せでいいのでしょうか? まるで夢のようです、って夢なんでしたっけ?」 現実感溢れる夢の中に少々困惑しながらも街の中を歩き続けるフレンディス。いつもなら出来ない日常を彼女は満喫していた。しかしその幸せも長くは続かない。 「そこな少女! 私と勝負だ!」 「な、何奴ですかってきゃー!」 そこにいたのはパンツを被った男。その姿で堂々と歩きあまつさえフレンディスに話しかけるどこからどうみても変人にしか見えない男は更に続ける。 「さあ私とパンツ四天王ブリーフ番町の座を争うために戦うのだ!」 そういいながらブリーフを手渡そうとしてくる男。あまりの出来事にフレンディスは後ろに飛ぶ。 「嫌です! 何でそんなもののためにこの幸せな日常を壊さなきゃいけないんですか!」 懇願するように叫ぶが男も諦めずブリーフを握り締めたままフレンディスに向かっていく。真面目な顔でやってくるものだから逆にそれが怖くなったフレンディスは逃げ出す。町の人たちは何故か微笑ましく見守っていた。 「いやです〜! 私のささやかな幸せを返してくださーい!」 そういっても男は変わらず走ってきてフレンディスはひたすらに逃げるのだった。 「これが英雄の力だ! わかったか化け物め!」 大剣を自分の身体の一部のように扱いドラゴンをものともせず勇猛果敢に戦うのは猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)だ。対するは伝説のドラゴン、その強さは他の魔物とは比べ物にならないくらい強い。しかし勇平も一歩も引かずドラゴン相手に華麗に立ち回りドラゴンを圧倒していたのだ。 「身体が軽いぜ! お前ののろまな動きじゃ今の俺は止められないな!」 そう叫びながらドラゴンに極上の一撃を見舞う勇平。 グオオオオオオオオオオオオッ! 大きな咆哮と共に吐き出される業火の炎。それを大剣を盾にして受け止める勇平。その攻撃が止まった隙を見て勇平は更に追撃を重ねる。するとドラゴンは断末魔をあげて倒れこんだ。 「よっしゃー! さあ次はどいつだ!」 ドラゴンを倒した勇平は勢いづき次なる相手を探して、見つけ、絶望する。そこにいたのはドランゴと同じ大きさくらいの、ゴキブリだった。鳥肌が立つ。 「いやいや! お前は魔物というか生き物だろ! 確かに生き物の中ではある意味ドラゴンより忌み嫌われてるけど」 やたらでかい触覚が左右上下に動き回る。何も出来ないでいる勇平、それを見かねた巨大ゴキブリがいきなりのスタートダッシュ。最初から最高速で襲い掛かるゴキブリに反応が遅れついつい大剣でガードしてしまう。 「このっ、てかきもっ!? ちか、近いって!」 眼前に広がるゴキブリボディーに堪らず後退する勇平。それを見たゴキブリがなんと喋ったのだ。 「英雄ならば、私すらも倒せるだろう?」 言っていることはかっこいいのだがいかんせん形がゴキブリなために不気味でしかないのだが、英雄と言葉に惹かれた勇平は大剣を構えなおす。 「そ、そうだ! 俺は英雄だ! だからお前だって倒せるっての!」 逃げ出したい気分を必死に押さえつけて、勿論怖さからではなく気持ち悪さから、巨大ゴキブリと対峙する勇平。その姿は立派に英雄だった。この後数時間にもわたりゴキブリとの戦いが勇平を待っているのだった。 「おじちゃんおじちゃんアレ買って〜」 「その前に抱っこしてー」 「はっはっは! よーしよし、順番にやってあげるからちゃんと待つんだぞー」 ちびっこたちに囲まれて嬉しそうな表情をしているのは刀村 一(とうむら・かず)だ。大好きなちびっこ達に囲まれておじさんと呼ばれてせがまれるその状況は刀村にとって天国のようだった。 「はい、欲しかったものはこれだな。よっし、次は抱っこだー」 「わーい」 「たかいたかーい」 「慌てない慌てないー! それー!」 そう言って一人の女の子を抱き上げる刀村。目一杯手を伸ばして、伸ばしきったところで回りだす。その目は幸福で星やらハートやらが見えていた。 「こ、こんなに幸せなことなどないぞ! このテストに参加してよかったー!」 心の底からそう思う刀村。普通ならば彼はおじさんと呼ばれる見た目ではないため、あと幼い子もなかなか寄り付かなかったりするため、この夢の全てが彼にとっては理想だった。 「あはは、あははは!」 「楽しいかー! おじさんも楽しいぞー!」 「あははあははああはっはっは」 「ん?」 「あっはあああはあアアハッハああハハハハ!」 先ほどまで無邪気に笑っていた女の子が不気味に笑い出す。首をガクガク振りながら抑揚のない笑い声で笑い続けるのだ。次第に周りの子達も奇怪な行動をし始める。ある女の子は買ってもらった人形を引きちぎり遊び、ある女の子は他の女の子と取っ組み合いの喧嘩をし始める。 「や、やめるんだ! 怪我をしたらってあたたたたっ!」 抱っこしていた女の子が刀村に噛み付いた。周りにいた女の子たちも刀村の身体全身に噛み付き始める! 「イタイイタイ! さすがの俺でもこれはきついって! や、やめるんだちみっこ達〜!」 必死に叫ぶもののその叫び声は届くことなく刀村はずっとがじがじと体中を噛み付かれるのだった。 「そろそろ終了の時間だな」 外にいたのはルカルカのパートナーであるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。今回はモニターとしは参加せずにこの装置の可能性を調べるために来たのだが残念ながら部外者には触らせることは出来ないと切り捨てられてしまい仕方なく外でルカルカを待っていたのだ。何度かスキルで無理やりにでも調べてやろうと思ったが他のテスターの危険性を考えると実行はできないでいた。 「まあそこまでひどいことは起きないと思うのだが、あっちの奴等は心配しすぎだな」 ダリルが目をやった方向にはルカルカと同じくテスターとして参加している近遠のパートナーであるユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)の三人だった。三人とも不安そうに近遠を見つめ、一瞬たりともその場から離れることはなかった。 「大丈夫でございましょうか? 途中何度かうなされていましたけれど」 「へ、平気ですわ! 多分きっと!」 「くっ! これが機械でなければなんとか出来たかもしれないものをっ歯痒く見ていることしか出来ないのか」 アルティア、ユーリカ、イグナの順で喋る三人は全員近遠を心配していた。 ピーピーピー! 警告音が鳴り響く。夢見なりの癒し効果音と共に大量の煙が機械から吐き出される。二十数名が夢から覚めてのろのろと起き上がり始める。 「だ、大丈夫でしたか!?」 「やっと起きたか。白雪姫も真っ青の爆睡ぶりだな」 「次は私が寝てもいいよねぇ?」 刹那・アシュノッドのパートナー達のアレット・レオミュール(あれっと・れおみゅーる)、セファー・ラジエール(せふぁー・らじえーる)、遊馬 澪(あすま・みお)が起き上がる刹那にそれぞれ声をかける。 先ほど近遠を心配していた三人も近遠が起き上がるのを見て三人一斉に抱きついていた。皆の様子を見たダリルだったが、皆疲れた顔をしているところを見ると結果は好ましいものではなかったと判断する。 その後モニター参加者のアンケートで今回のテストはどうでしたかという問いにほとんどの者が、疲れた、実用化するべきではない、と答えた。中には、十回分の回数券を! 何て書いてあったりもしたがそれも叶うことはなかった。 『理想の夢を見る事ができる装置(仮名)』は名前も付けられないまま夢見に返還されその後の行方を見たものはいなく、今回の騒動は大失敗が大成功に終わったのだった。
▼担当マスター
流月和人
▼マスターコメント
今回リアクションを担当させていただいた流月です。 少し変わった内容にも関わらず果敢に参加してくださいありがとうございました。 これからも勇気ある皆様に負けないようリアクションを書いていきますのお願いします。
▼マスター個別コメント