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リアクション
アジト内・牢獄。
外の異変はこの場所にも波及していた。
騒がしい内部の様子に看守たちも少し落ち着かない様子になっている。
そんな様子を見て、捕まっている生徒たちは助けが来たのではという期待を抱く。
「ここか……!」
そんな生徒たちの期待に応えるように、結城奈津はエースからの通信をティ=フォンで聞き、いち早く牢屋があるエリアへとたどり着いた。
彼女は壁に隠れて、敵の様子をうかがう。
するとそこには牢屋を守る数人の看守がいた。
どうしたものかと奈津が考えていると、そこに他の契約者たちがやってきた。
仲間が集まれば百人力と、奈津は今まで懐に隠していたマスクを被り、皆に合図を送る。
それにうなずき、契約者たちは一斉に敵へと襲いかかった。
突如として現れた敵に看守たちは慌てて武器を構える。
「うおりゃーっ!」
奈津は鬼神の力を解放して本領発揮。敵が乱射する銃弾の中を突っ切ってタックルをぶちかます。
「奈津!」
そんな奈津の姿を見て、牢屋の中の幼なじみ永倉八重が思わず声をあげる。
奈津は幼なじみの声を聞いて牢屋の方を振り向いた。
「へっ、まったく世話のかかる奴だぜ」
「ご、ごめんなさい!」
と、タックルで吹き飛ばされた敵がナイフを取り出して隙だらけの奈津に斬りかかる。
それを見た八重は叫んだ。
「――危ないッ!」
だが奈津と敵の間に長原淳二が割り込み、手にした智杖でナイフを受ける。
そして相手を押し返すと、淳二は槍斧型の光条兵器バルディッシュを呼び出した。
「大人しくてろッ!」
普段とは違う口調になっている淳二は、バルディッシュを振るう。
その攻撃に敵は再び吹っ飛び、壁に激突すると動かなくなった。
他の敵たちも契約者に次々と鎮圧されいく。
そして契約者たちは牢屋の看守が持っていた鍵を見つけ出すと、ついに牢獄の中から生徒たちを救い出すことに成功した。
だが、牢屋の外に出た生徒たちは衰弱しているものが多数おり、人の肩を借りなければ歩けない者が多い。
「皆さん、大丈夫ですか?」
そんな生徒たちの側にリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が駆け寄った。
そして回復呪文を使って彼らを回復させていく。
「どうやらとても不気味な場所に閉じ込められていたようですわね」
リリィはそういって、生徒たちがいた牢屋を見つめる。
なんだかよくわからない文字で書かれた魔術式を目にしたリリィは眉をひそめた。
「痛々しい……」
精神の不調を訴えるものが多数いるのはきっとこの魔術式のせいなんだろう。リリィはなんとなくそう思いながら、生徒たちの回復に全力を傾ける。
傷などがある生徒にはヒールをかけ、精神の不調を訴える生徒には錬気で練った気を流し込んでみた。
するとそれは効果があったのか、皆なんとか自力で歩けるくらいには回復する。
そして彼らは口々にリリィにお礼を言った。
「……よかった。皆さん少しはマシになったようですわ」
リリィは微笑みながらそうつぶやいた。
そして皆に早くこの場を出るようにと促し、契約者たちは牢屋を後にする。
「おっと、これをやっておかなくちゃな」
と、エヴァ・ヴォルテールがアジトに入った時に敵から奪った通信機を取り出した。
そしてわざと低い声を出しながら、敵に嘘の情報を伝える。
そうれば脱出の際に逃げやすくなると踏んだ彼女の行動だった。
エヴァはみんなから少し遅れている生徒の背中を叩くと、牢屋を出て脱出を開始した。