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リアクション
「こっちか!」
篭手型HCに届いた仲間の情報を元に、猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)は突き進む。
「ちょっと待って、勇平!?」
そんな勇平を追いかける井澤 優花(いさわ・ゆうか)は声をあげる。
なんだか今日の勇平はいつもと違う気がする――優花はそう感じていた。
サイオニックである彼女が勇平から感じられるモノ……それは増悪や怒りといったマイナスのイメージ。
エリザベートの話を聞いた時から、勇平からそんなモノが感じられるようになった。
なぜなのだろうか?
優花は少し考えてみたが、わからない。
ただなんだか危うい感じのする勇平を自分が守らなければと彼女は思う。
前を行く勇平の背中を見ながら、優花は決意と共に唇を固く結ぶのだった。
◇
「情報通りに行けば、白衣の男がいる場所まではもうすぐみたいよ」
銃型HC・Cinema Exceedに届いたマップを見ながら、リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)は前を行く柊真司に言った。
夜の闇に溶けるような漆黒の外套・エクスプリマントで姿を隠しながら移動していた真司はその足を止める。
「どうしたの?」
「隠れろ……!」
真司はそう言って、その姿を物陰に隠す。
それを見てリーラも同じよう自分の姿を隠した。
真司が見つめる先には、鏖殺寺院の信徒が道を塞ぐようにして立っていた。
「あからさまに怪しい」
リーラはそうつぶやきながら、仲間から届いた情報を確認するためにCinema Exceedへと視線を落とす。
「やっぱりね。あの先に首謀者はいるみたいだよ」
「そうか、ならあそこは突破するしかないみたいだな」
真司はそう言うと、自らの念動力を高めていく。
すると彼の周りの空気が変わり、風景が揺らぎ始める。
その力に反応して試作型ロケットシューズ・シュトゥルムヴィントがその力を発揮した。
「行くぞ!」
シュトゥルムヴィントの力で天井まで飛び上がり、そこを足場とした真司。
彼は神速の動きで天井を駆けながら、組み合わせによってその姿を自在に変える剣・ナインブレードを取り出した。
真司はそのナインブレードを2刀の短剣として使い、刀身に電撃を走らせる。
と、敵のひとりが天井を駆ける真司の姿に気づいて声を上げた。
だがその時にはすでに遅かった。
真司は地上に降りると短剣を素早く振るい、敵の肩や脚など致命傷にならない場所を狙って突き刺していく。
敵の悲鳴が次々に上がる。
帯電した刃を突き立てられた敵たちは、体を流れる電撃に白目を剥いて気絶していく。
戦闘が終わると、真司は物陰に隠れていたリーラを呼び寄せる。
そしてふたりは白衣の男がいるエリアへと突入していった。