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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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第一章 心配ばかり


「……絵音ちゃんなんか、絵音ちゃんなんか」
 涙を浮かべながら汚れたリボンをしっかりと握るスノハ。大人達は慌ただしく絵音捜索に忙しいが、彼女はずっとその場に立ち尽くしている。

「スノハちゃん、絵音ちゃんは大丈夫だよ」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)がスノハに声をかけた。
「……絵音ちゃん、嫌いって言ってた。だからあたしも嫌いだもん」
 スノハは涙を拭って強がりを口にするも北都にはお見通しである。

「嫌いかぁ、本心から嫌いって言った訳じゃないでしょ。こんなに心配したり寂しがってるんだから。ね?」

 スノハの顔がしっかりと見えるように少し屈んでスノハの心を言葉にした。

「……だってぇ」
 心を言い当てられたスノハは強がりの口をまた歪めて涙を流し始めた。

「そのリボン、僕が洗ってあげるよ」
「……うん」
 北都はスノハから汚れたリボンを預かり、洗い始めた。洗う彼の横には見守るスノハ。

「絵音ちゃんが帰って来る頃には乾いてるからね。帰って来たらもう一度ちゃんとお話しようね」
「……うん」
 心配そうに汚れではなく、絵音の姿をリボンに見るスノハに言いながら洗い終わったリボンを干した。

「スノハちゃん、いっしょに遊ぼうよ」

 元気な声と共に樹乃守 桃音(きのもり・ももん)がやって来た。

「うわぁ、リボンきれいになったねぇ」
 桃音は綺麗になったリボンに気付いて嬉しそうな声を上げた。
「うん、お兄ちゃんが洗ってくれたから」
 スノハは優しくしてくれた北都に顔を向けながら言うも北都は二人の嬉しそうな言葉にどう応えていいのか分からず、顔を二人ではなくリボンの方に向けた。

「よかったね。ねぇ、遊ぼう。ねじゅお姉ちゃんもみずほお姉ちゃんもいるよ」

 桃音は自分の目的を思い出してもう一度スノハを誘ったが、スノハはリボンをここに置いたままにできないのか心配そうに見ている。そのことに気付いた北都が彼女に言った。

「リボンはここにいる僕達が見てるから行っておいで」
「うん。ありがとう」
 リボンを洗って言葉をかけてくれた北都を信頼したスノハは大切なリボンを任せて桃音と手を繋いで二人のお姉ちゃんがいる場所に急いだ。

「リボン、乾く?」
 リボンを眺めていた北都に声をかける少女。
「乾くよ。優しいねぇ」
「だって、スノハちゃんも絵音ちゃんも大好きだから」
 全身赤色の魔女の女の子は北都に答えた。他のお友達も子供なりに二人のことを心配しているようだ。

「大丈夫だよ。そうだ大人薬を飲んで大きくなってみようか」

 スノハ以外にも気に掛けるべき子供達はたくさんいる。北都はまだ何の役にも立っていない二種類の薬のことを思い出した。

「うん。そしてね、赤色のドレス着るんだぁ。あたし赤色が大好き」
 赤色大好き少女のキリスは嬉しそうにくるりと回った。

「それじゃ、綺麗な赤色のドレス着て写真を撮ろうか」
「うん」
 北都はキリスや他の女の子を連れてお姫様写真を撮るために公園を出ることにした。その前に大事な任務を任せられる人を捜してから。