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花屋の一念発起

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花屋の一念発起

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「あっ!!」
 
 突然、右角から散歩する花が現れ、思わず声を上げる椿。

「朋美殿にウルスラーディ殿」
 虎臣は、花を追いかける形で現れた朋美とウルスラーディに声をかけた。

「キミ達もあの花を相手にしてるのね。だったら」
 朋美は他のみんなにしたように三人にも消臭剤セットとティッシュを押しつけた。
「これは、ティッシュ」
 リゼネリの視線は渡されたティッシュから二人の鼻に詰められているティッシュに向かう。

「見かけなんて気にしちゃダメ! 重要なのは実質。何も、一生涯ティッシュを鼻に詰めてろっていうんじゃないんだから。あの花達を止めるまでの間だけ、よ」
 刺さる視線に朋美は、真摯に鼻ティッシュの有用性を訴える。

「……そうですか……大変ですね。でも匂いを防ぐにはいいかもしれませんね」
 素直な椿は朋美達の苦労を労いつつ、押しつけられたティッシュに目を落とす。

「そんなことよりも早く、あの花を何とかしましょう」
 虎臣は、話している内に少し遠くに行ってしまった花に注意を戻した。

「そうだ、誰か氷術系を使えないか? 『脚』にあたる根っこの部分を凍らせて、文字通り足止めできないか? 歩き回るのは厄介だからな」
 ウルスラーディは花捕獲を思い出し、協力を仰ぐことに。

「確か、君が」
 リゼネリが『氷術』を使える椿を促した。
「……あの、手伝いますよ」
「頼むぜ」
 椿はティッシュから花達に注意を向けた。
 相手をするのは、動く花二体。
 ウルスラーディは『サイコキネシス』で宙に浮かし、移動を封じた。そこに椿の『氷術』であっという間に根っこを凍らせてしまう。

 椿が根っこを凍らせたところでリゼネリの一言、

「根っこだけじゃなく、匂いが出る部分も凍らせた方がいい」

「……はい、やってみます」
 頷き、匂いを撒き散らす花の部分を凍らした。
 これでとりあえず、捕獲完了。あとは、ガヤックに引き渡すだけだ。このまま五人は花屋に向かった。その際、朋美達は、三人に増殖する花のことを伝えた。

 花屋に向かう道々、

「増殖するお花も解決したそうですから、これできっとガヤックさんのお花屋さんは大丈夫ですね。ガヤックさんのお花を貰って嬉しくならないはずはないですから」

「そうだね。成功した種も全て完売したし、来客も増えるだろう。まぁ、現状を改善する方法はそうそう無いから店が魔法に頼ったのは間違いでは無かったということかな。店側の被害も何とかなるだろうし」

 椿とリゼネリは今日の出来事を振り返っていた。花は全て配り終え、貰った人はみんな花屋に興味を示してくれていたし、種も全て完売した。何とか宣伝は成功だ。

「……リゼネリさん、今日はたくさんありがとうございます! なんだか、いつもお世話になりっぱなしで。でも本当にご一緒できて嬉しかったです……ありがとうございました……!」
 宣伝活動を終えて椿は、今日のことといつもお世話になっていることを含めて礼を言った。

「いや、こちらこそ」
 リゼネリはあっさりと言葉を返した。友人が困っていれば手伝うのは当然だと思うから。

「あとは、凍らせた花をどうするかだけですが、処分でなければ良いですが」
 虎臣は話をする二人を見守りながら持っている凍った花達を見た。とても宣伝に役立ったのだからそのことをガヤックが考慮してくれれば良いのだが。

「ようやく、解放だぜ」
 鼻ティッシュから解放されたウルスラーディは鼻に触れながら言った。
「解放って大げさよ。一生涯、詰めてる訳じゃないんだから」
 そう言う朋美も鼻に触れて自由を確認していた。