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花屋の一念発起

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花屋の一念発起

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第四章 再開と来客万歳


「……これで終わり。あとは並べる花だけ」

 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は『設備投資』で少しばかり花屋シャビーを増築して魔法花の販売スペースを作っていた。今はその作業が一段落したところだ。

「……ここが特設コーナーですかぁ」
 ガヤックと共に片付けをしていた明日香がルカルカが作り上げた特設コーナーを見学しに来た。みんなが不満を口にする花を相手にしている間、明日香とガヤックは着実に後片付けを進め、ルカルカは再開に向けて頑張っていた。

「そうだよ♪ あとは花を並べるだけ。ガヤックさん、元気になったんだね」

 ルカルカは明日香に答えてから珍しげに特設コーナーを眺めているガヤックに声をかけた。
「……おかげさまで何とか。本当に申し訳なくて」
 申し訳なさそうにルカルカに頭を下げた。

「そんなことないよ。それよりガヤックさん、希望者に売り子さん体験させることできないかな?」
 ルカルカは、作業終了後にガヤックに許可を取ろうと思っていたアイディアを話した。

「売り子さん体験?」

 予想外の言葉にガヤックは思わず、聞き返した。

「きっと、お客さんがたくさん来て忙しくなるから。花屋さんに憧れる子いるかもだし店も助かるしね。それに花がもっと好きになってくれるかもしれないよ」
 ぐるりとガヤックが丹精込めて育て花達を見回しながらルカルカは理由を説明した。

「私も賛成ですぅ。こんなに綺麗な花がたくさんあるのに誰も知らないのは寂しいですよ〜」
 明日香はルカルカを援護した。後片付けをしながら並んでいる花々を見たりしたが、どの花も他の花屋に並んでいる花よりもずっと綺麗に咲いているように見えた。

「……花屋に憧れる子かぁ」

 二人の視線の中、思いもしなかったアイディアにガヤックは感心していた。本当ならルカルカが口にしたアイディアや街での宣伝については自分が思いつかなければならなかったことだ。そう思うと短絡的に物に頼ってしまった自分が恥ずかしくなってしまう。

「構わないよ。あと、これも並べてくれるかな」
 エプロンのポケットから成功した種を取り出し、一度確認してからルカルカに渡した。確認する間、今回の事件のきっかけになり、花を愛することを見つめ直したことを考えていた。

「あ、成功した種だね」
 種を受け取ったルカルカは早速、工夫して販売スペースに並べた。

 その時、店の外から元気な声が聞こえてきた。

「こんつぁ〜」

 散歩する花と増殖する花を捕獲し終えたアキラが宣伝を聞きつけ、きょろきょろと店内を見回しながらルカルカが作った特設コーナーにやって来た。

「宣伝聞いたけど、何があってオカシナ花が表で騒いでたの?」
「それはですねぇ、魔法実験に失敗した種を間違って届けてしまったからなんですぅ。花は三種類あるですよ〜」

 成功した種を届けた明日香がガヤックに代わってアキラに説明した。

「本当に迷惑をかけて申し訳なくて」
「これよりすげーことが日常茶飯事で起こってるんだからどうってこたぁねーよ。心配すんなよ」
 申し訳なさそうにガヤックが謝るとアキラは楽しそうに笑ってガヤックを励ました。

「それより、不満を口にする花が欲しいんだけど」
 自分がまだ手に入れていない花のことを思い出し、訊ねた。

「それじゃ、私が持って来るです〜」
 明日香は不満を口にする花を取りに行った。もうこの時はすっかりみんなの努力で花達は静かになっていた。

「これって成功した種かぁ。これも欲しいなぁ。何か気を付けることとかある?」
 明日香が花を取りに行っている間、アキラはコーナーに置かれている成功した種を手に取り、ルカルカに花の世話についての注意事項を訊ねた。

「不満を解決したり、癒しの匂いに気を付けたり蔦に気を付けることかな」
「そりゃ、おもしれーな」
 ルカルカの注意事項にアキラはますますオカシナ花を気に入った。

「持って来ましたよ〜」
「じゃ、それと……」
 不満を口にする花を持って明日香が戻って来た。花を受け取り、アキラはレジに向かいながら気に入った鉢植えの花を二つほど手に持ってレジへ。

「で、いくら?」
「合計は」
 レジに立ったガヤックに訊ねると彼は熟考した末。三種類の迷惑植物についてはかなりの安値にした。迷惑をかけたことについての申し訳なさのためと無料にするには花を価値が無いとしてしまうから。

「こんなおもしれー花そんなに安くて大丈夫かぁ」
「いえ、買って頂いてありがたいです」
 あまりの安さにアキラは、念のため訊ねるもガヤックは申し訳無いというように笑って答えた。

「それじゃな〜」
 アキラは、たくさん買い物をしてから箒にまたがった。

「おもしれー買い物ができたなぁ。話題になるかもなぁ。まぁ、枯らすだけなら簡単だし」
 と呟きながら家路に着いた。

「……電話?」
 アキラを見送った後、ガヤックの携帯が鳴り響き急いで電話に出た。
 相手は宣伝活動をしているルファンからだった。

「……それは本当に申し訳ないです。花束をですか。もし代わりになると言うのなら用意をします。当然、お金の方はいりません。本当に迷惑をかけて申し訳ないです」

 内容は、散歩する花のせいで大切な贈り物が台無しになり、代用として花束はどうだろうかというものだった。話しながらぺこぺことガヤックは頭を下げていた。

「ふぅ」 
 話を終え、電話を切って疲れたように息を吐いたところで品種改良を終えたダリルが鉢植えを持って現れた。