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夏初月のダイヤモンド

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夏初月のダイヤモンド

リアクション

 大体一時間ほど前だろうか。
 さゆみとアデリーヌは二人はランジェリーフロアへやってきていた。
 しかしさゆみは昼間からエロスな事を悶々と考えていたのだ。
 恋人、アデリーヌとの情事の際に着用する勝負下着はどれにしようかなーという妄想だ。
 アデリーヌはというと矢張り同じような事を考えていたのだ。
 黒を基調にしたアダルティで大胆なブラジャーとパンツとガーターのセットを着用したさゆみ。
 そしてこちらは白を基調にした清楚で可愛らしい下着を着用したアデリーヌ。
 ――今晩はこの下着で決まりかしら?
 なんてお互い考えていると、ふと触れた指先が絡みあって、もつれ合って
「……アデリーヌ」
「……さゆみ」
 色っぽい雰囲気になったところでカーテンがバッと開いた。
「何なのよ一体!?」
「いいから外に出ろ!」
 さゆみにそう指示したのはランジェリーフロアへ潜入する為に下手な女装と化粧を施した男だった。
 半端な女装なんて許せない。
 妙なところでカチンときたコスプレーヤーを魂を持つさゆみだったが、
 外へ連れ出されようと男の手が繊細な乙女の柔肌を掴んだ瞬間、頭に血が上りきった。
「その汚い手で触るな!」
 と叫ぶや否や、膝蹴りを強盗の股間にかまし、更に立てかけていた富士の剣で氷結攻撃を行い敵を氷像にしてしまう。
「さ、さゆみ……今のは」
「外に出よう。何か起こったんだわ」
 さゆみはアデリーヌの手をひいて歩き出した。
 彼女の口からは悲しみの歌や恐れの歌が交互に紡ぎだされていく。
 試着室の廊下に居た女装強盗達は恐怖心から意気消沈させている。
 さゆみは続いて震える歌と怒りの歌で攻撃力を上昇させると、剣で強盗の服を粉微塵に切り裂いて全裸にしていった。
「で、どういうつもり……?」
 裸に剥いた男達を並べて、さゆみは問いただした。
 強盗団の一人曰く、探していた女子高生と間違えた。だそうだ。
「女子高生……ってもうすぐ女子大生だけど……を、なめんなー!!」
 さゆみは言いながら矢張り冷気を放って男達を氷漬けにしていく。
「清らかな女の園に獣じみた男の欲望剥き出しで闖入したばかりか、花も恥じらう乙女の柔肌を犯そうとするとは……許さーん!」
 叫びながらフロア内の強盗団へと向かって行った。
 アデリーヌは最初は何が何だか訳も判らず戸惑っていたのだが、やがて強盗達がさゆみに乱暴狼藉を働こうとするのを見て
 ――実際のところ乱暴狼藉をしているのがさゆみで、されているのが強盗団だったが――意識が吹き飛び、すっかりバーサークモードという奴になっていた。
 片っ端から炎の精霊や天のいかづち、凍てつく炎などの魔法を残された能力値など気にせずガンガン使いまくり、
 さらにさゆみと同じく敵を冷気でカチンコチンに凍らせるなど後先考えずに暴れ回った。
 そして粗方片づけたところで、二人は冷静になって互いの下着姿を見た。
「……さゆみ」
「……アデリーヌ」
 美しさにしばらく見惚れあっていた時だった。
 二人の世界を破壊する新たな刺客が現れて、二人の頭の中の糸がぷつーんと切れる音がしたのは……。

 こうして、さゆみとアデリーヌは倒した強盗達を紐で縛り上げると、ジェットコースターの後にくくりつけるという暴挙で制裁を行ったのだった。



 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)も試着室で強盗達と出会ってしまった不運な一人だった。
 ミア・マハ(みあ・まは)と一緒に買い物にきていた時の出来ごとだ。

 初めに逃げた先は二階だった。
 闇雲に逃げまくった女性達の中で、レキは冷静だったのだ。
 即ち事態が解決した時に直ぐに戻って着替えられる位置をキープする為に、二階で強盗等事件が集結するまでやり過ごそうと考えたのだ。
 レキの作戦は上手く行った。
 同じく二階に居た美緒やアリサ等はあちこちで見つかっては逃げ回ったり、殆ど戦い続けていたのにも関わらず、
 レキはミアと共にあるファンシーショップの棚を移動させると、その後ろに身を隠したまま安全を確保し、恐らく事件が集結してきただろうと踏んで外に出たのだ。
 非常に残念だったのが、ここからの展開だ。
「とりあえず逃げたはいいものの、強盗を放っておくわけにはいかないよね」
 と、服を取り戻しがてら強盗を倒し三階へ向かおうと、レキは考えたのだ。
「そうじゃな。
 確かにこのままでは余り気持ちのいい終わりではないわ」
 ミアも賛同してくれた。
 かくしてレキとミアの二人は三階へ階段を使いながら昇り始めた。
 レキの武器、銃は試着室に置いて来ちてしまったから、使えるのは指に嵌めていた”闇の輝石”くらいだ。
 しかし魔術が得意かと聞かれれば、レキも余り元気よく答えられるものじゃない。
「やっぱり戦うとしたらこの身体だよね」
 と生身で肉弾戦する事を考えて進んだ。
「三階、まだ沢山強盗残ってるかなー。
 何かあったら戦う気はあるけど……」
 そんな事を言いながらレキが一段一段歩みを進めていたときだった。
 危険を察知しようと貼っていたイナンナの加護に反応があったのだ。
「一体何が……」
 正面や左右を見たが異変はなさそうだ。
 つまり……
 後ろ?
「レキ! まずいぞ!!」
 ミアの声と一緒に振り向くと、下からドドドドドという地鳴り音を立てながら強盗団が階段を駆け上がってきたのだ。
「な? 何あれ!?」
「駄目じゃ! 巻き込まれるるるるるる」
 こうしてレキとミアは――鞭を持ったお姉さん達から逃げる為――駆けあがる強盗団の波に巻き込まれ、屋上までやってきてしまったのだ。
「どうしてこんな目に……」
 屋上のミニ遊園地のティーカップのような遊具をベンチ代りに腰をおろしていると、
 レキは周囲から自分に向かって視線が向けられてる事に気が付いた。
 ミア曰く、レキの体形は”ぼんっ、きゅっ、ばーん!”の三拍子だ。
 もはや――矢張りというべきか――目的等どうだってよくなった強盗団達は彼女の肉体にくぎ付けで、彼女の元へ這い寄って行く。
「なんて肉体美」
「下手なエロ下着じゃなくてスポブラなのもいい!」
「俺はスポブラ派なもんでね! 色がブルーなのもボーイッシュ萌えとしてはそそられるぜ!」
「キ、キミ達何を言ってるの?」
 イナンナの加護がビンビン反応している。
 乙女の大ピンチだ。
「座って居ろ!!」
 そのアリサの声はコンソールボックスから響いた。
 レキが慌ててティーカップのベンチにで姿勢を正すと、ガタンと音がして身体が揺れるのを感じた。
「うわあ!」
 強盗団の男たちはアリサがライドスタートボタンを押したせいで突然動きだした床に地面に倒れだす。
「今のうちに」
 レキは頷くことで返事しつつ、立ち上がろうとしている強盗達に向かってサイコキネシスで近くの物を投げつけてた。
 強盗達は目を回している。
 その隙を利用して、レキは無事にライドの外へジャンプした。
「ってあれ? ミアは?」
 レキがミアの姿を探すと、ミアはまだティーカップの中に座っていたのだ。
「ミア、早くこっちへ!!」
 しかしミアは手招きしているレキの方を見ない。
 そしてその目は赤く血走っていた。
「そなたら……わらわに見向きもしないとはどういう事じゃ!?
 ええい、子供扱いするでないわ!!」
 見向きされない理由は十分自覚があったらしい。
 寄せて上げるタイプを選んでも寄せるモノすらないミアの体形は、幼児。という言葉がぴったり似合う。
 色は紫、レースの上品な大人の女性に相応しいものを選んだにもかかわらず、身長も子供そのものだから”子供がお母さんのブラジャー付けて遊んでる”状態になってしまっていた。
 唯一大人だと示せる材料があるとすれば、下着の素材にシルク選べる財力だろうか。 
 予断だが、ミアは肌が敏感なので安物だと腫れてしまうことがあるのだ。
「うぅ、わらわの方がレキよりも年上なのに、この差は一体なんじゃ!?」
 吹き荒れるブリザードで、強盗達はガタガタと回り続ける盆の上で震えている。
「くぅぅ! いつかおおきくなる薬や魔法を手に入れて見せる! 絶対じゃ!!」
 ミアが強盗達に向かって指を突きつけると、強盗達はカチーンと凍って動かなくなった。

 ちなみに、その後凍らされた強盗達は「そんなに下着が好きなら下着姿になってると良いよ」と、レキに脱がされてパンツ一枚にされてしまった。