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夏初月のダイヤモンド

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夏初月のダイヤモンド

リアクション

 マグナ・ジ・アースのパートナー、リーシャ・メテオホルンは、試着室で襲われたさゆみと同じように歌を乱発する事で、強盗団の正気を奪って行った。
「うわあああ! し、しあわせだよぉお身体がぽかぽかなっなんで俺はこんなことをしてるんだ……最低の人間だ」
「うっうぇえんうぇえんかあちゃああん……ちくしょー!! お前さえいなきゃ」
 感情を上下に振り切りながら右往左往する強盗達に、周囲の人間はドン引きだ。
 歌い続けているリーシャはメリーゴーランドの上に居るから、彼らは彼女に惑わされている事に一切気付いていなかったのだ。
「ふふふ、いい気味だわ。
 男子禁制スペースで暴れまくった罰よ。
 もうこのまま肉体的にも精神的にも再起不能にしちゃっていいよね?」
 リーシャは不敵に笑うと立ち上がり、新たな歌を紡ぎながら光条兵器を取り出していた。

「み、皆どうしちゃったの? なんか……凄いアレよ?」
 ジゼルの周りでは戦いが続いている。
 先程までジゼルと一緒に行動していた女性、とその仲間の男性達も戦いに参戦していた。
 しかし目の前で裸に剥かれていく強盗団達に、ジゼルは同情を覚えていた。
「ちょっとやりすぎよ、そこまでやったら可哀想」
 そして何とか彼女達を止めなければならないと、ジゼルは思った。
「でもどうしよう、どうしたら」
 おろおろするジゼルの後ろに迫っていた強盗が、風の衝撃で壁にうちつけられる。
「ジゼル、助けにきたよ!」
 先程アリサに紹介されたばかりの友人、小鳥遊美羽が風銃エアリアルを片手にこちらへやってくる。
 吹き飛ばされた強盗を前に、コハク・ソーロッドは
「うーん、やっぱり裸にしたほうがいいのかな」
 と思案していた。
「美羽、どうしよう、何か凄いことになってる」
「うん、そーだね。でも大丈夫、ジゼルは怪我しないように私が守ってあげるね」
「嬉しいけど……そうじゃなくて」
「……どうしたの?」
「あの人達にもこんなこと理由があるかもしれないし、話しあって解決するなら……」
「……そうかな〜……」
「強盗ってことは少なくともお金には困ってるよね」
 戻ってきたコハクが言う。
 美羽は指を顎に当てて、数秒も考えない内に結論をだした。
「ま、迷ってる時間なんてないし、ジゼルがそう言うなら手伝ってあげる!」
 美羽はジゼルの手を取ると、ミニスカートを翻し戦場のまっただ中へ突っ込んで行った。



 美羽にサポートされたジゼルが戦いのメインステージ、100円入れると動くパンダ君の置かれた広場の前に辿り着くと、戦いはすでに集結の様相を見せていた。
 裸に剥かれ、追いつめられた強盗団達は一か所にまとめられ、周囲をぐるりと囲まれている。
「さあ、レディ達に働いたその所業の代償、払う覚悟はあるんだろうな」
 エースが槍の先を強盗達に向ける。
「生存戦略しましょうか?!」
 セフィー・グローリィアの刀の切っ先が光を反射し煌めいた。
「ヴィクトリーシークレットの愛用者として、イベントを妨害するヤツは許せないな」
 瓜生コウが手に彼等から奪った銃口をむけている。
「お説教はまだ終わってないわよ」
 ルカルカ・ルーが鞭をパチンと鳴らしていた。
「石化したら後で戻してあげますから」
 穏やかな声で不穏な事を言うのはミスティ・シューティスだ。
「私の美脚と雷で身も心も痺れさせてあ・げ・る」
 ユピリア・クォーレが逆恨み(?)をぶつけようとしている。
「どれ、もう少し遊んでやろうかのぉ」
 織田信長が刀の切っ先を向けてくる。
「エロスの原因は一斉排除します」
 アイビス・エメラルドが表情一つ変えずにそう言う。
「ここで写真とったら、どうなるだろーねぇ」
 藍華信がカメラを構えている。
「お、お師匠様とナディムさんの仇、とらせてもらいます」
 リース・エンデルフィアが司書のケープを翻した。
 ちなみにお師匠様もナディムさんもまだ死んでなかった。
「女性の皆さん上着きてください……」
 ルファン・グルーガは気遣いの人だった。
「がうがうがううう!」
 紛れ込んでいたテラー・ダイノサウラスがキメてくれたが、何を言っているのかわからなかった。
 にじりよってくる女性たちの威圧感に、追いつめられた強盗団達がぶるぶると震えている。
 そこへ美羽に手を引かれたジゼルが飛び込んできた。
「皆待って、きっとこの人達にも理由があるのよ。ね、そうなんでしょ?」
「あんた……分かってくれるのか!? 俺達の空しさを、分かってくれるのか!!?」
 膝立ちでジゼルを見上げる強盗団の面々は、彼女に切々と告解を始めた。