百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

『電撃・ドラゴン刑事(デカ)』 ~ C級映画がやってきた! ~

リアクション公開中!

『電撃・ドラゴン刑事(デカ)』 ~ C級映画がやってきた! ~

リアクション




〜 episode0 CM 〜


 この番組は
 
 
       === 提 供 ===


           世界の未来はぼくたちの手に!
   蒼 空 の フ ロ ン テ ィ ア  〜 創世の絆 〜


           強く! 正しく! 美しく!
    シ ャ ン バ ラ 教 導 団


            18H 体臭 BLOOOOOOOOOCK! 
     陽 竜 商 会 
         


 ……と、御覧のスポンサーの提供でお送りいたします。


         === 提 供 ===



         オリュンポス製薬  


          山場建設  



◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 それは……。ある晴れた休日のことだった。
 千葉の埋立地にあるかの有名なネズミー遊園地で、CM出演者である魔威破魔 三二一(まいはま・みにい)は一人待つ。
 目の前を通り過ぎるのは、楽しそうな家族づれや、仲のよさそうな恋人たち。彼らを寂しそうな瞳で見やって、三二一はため息をつく。
「ねんがんのネズミーゆうえんちのちけっとをてにいれたぞ! ……なのに」
 彼女ががっかりした苦笑を浮かべたのは、デートをすっぽかされたからでもパートナーの男が現れなかったからではない。アトラクションの行列が長すぎたからだ。
 そう、彼女はネズミー遊園地のアトラクションを楽しむために、並んでいるだけなのだ。そんな光景が映し出されている。
「これだけ待っても、アトラクションの楽しみを味わえるのはごくわずかな時間だけ、なのよね……」
 待ちくたびれた三二一はどこからともなく銀色のビニール容器に包まれたゼリー状の液体を口に運ぶ。
「待って待って……。長時間並んで、初めて体験できるその楽しみがあるの。長きにわたる道のりがあるからこそ、その一瞬がまばゆく輝くのよね」
 気を取り直し元気になった口調で三二一は、ゼリー状の液体をちゅるちゅると吸いこみつつ、笑顔で頷く。
「その十秒のために、二時間蓄えろ。……チャージ&ゴー!」
 そして、カメラに視線をやり決め台詞を口にするのだ。
「二時間チャージ! 十秒キープ! オリュンポス製薬『ダークマター』!」
 ふと……、何かに気づいたように三二一は首をかしげた。
「シーンは悪くないし、挿入句も意味ありげなのに、どうしてこんなに商品がダメなの? なによ、二時間チャージ十秒キープって!? 健康飲料として全く役にたたな」
 セリフの途中で彼女は両脇を抱えられ連れ去られていった。
 出演者が商品にクレームをつけちゃいけないということだ。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「壁殴り代行始めましたのよ!」
 一途なまでに強さを求める少女がいた。
 戦うお嬢様、イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)が己を鍛え高めるために選んだ相手は……壁だった!
 強敵を破壊するために壁を殴り続け、高みに達したイングリットが選んだのは、その力と技を恵まれない者、弱者のために役立てることだった。
「むかついたけど壁を殴る筋力がない人、壁を殴りたいけど殴る壁がない人。そんな人たちのために……」
 延々と向こうまで続く壁を背景に、イングリットは腕を組み笑みを浮かべる。その力強い口調は見る者を勇気付け、壁を殴らせたい衝動に駆り立たせるのに充分だった。
「壁殴りで鍛えたわたくしが、一生懸命あなたのために壁を殴ってさしあげますわ」
 ふっ、と身を翻したイングリットは、華麗で優雅な戦闘フォームとともに、壁を殴り破壊し始める。ボコボコとリズミカルな音を響かせて、壁は砕け散っていく。おおおっっ……、とどこからともなく歓声がもれ出るのが聞こえた。
「もちろん、壁を用意する必要はありませんわ。あなたの家の近くの壁を無差別に殴り壊して差し上げます!」
 とんでもないことをさらりと口にしつつポーズをとったイングリットは、もう一度カメラの前に向き直り、スカートの裾をつまみあげ恭しく一礼しながら締めくくる。
「壊れた壁の修繕、建造物の再建築のご用命は……山場建設へ。
 高いは正義! 頑丈は美徳!  ――山場建設……って、あれ……?」
 紹介されたCMを演じていたイングリットはハッと我に返って、目を丸くした。
「これ、わたくしの壁殴り代行のCMではなかったのですの? ……といいますか、山場建設って、先日ちょっと噂になった、社長がテロリストたちと組んでいた悪徳企gy」
 イングリットは、台詞の途中で何者かに口を押さえられ羽交い絞めにされて連れて行かれてしまった。
 どうやら強力無比な見えざる力が働いているらしい。見かけ以上に過酷な撮影なのかもしれなかった。