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リアクション
〜 CM 〜
「陽竜商会の冒険者向け超強力ボディソープ【バニシュメル】は!
ブロック! ブロック! ブロック! ブロック! BBBBBBBBBBBLOOOOOOOCK!!!
体臭ブロック効果18じかぁぁぁぁあああんん!」
くちゅくちゅ……とルイの胸の筋肉が上下に震える。
18HOUR!
BLOCKER!
「パパパッパッパ、パパゥアッー!」
背後で画面が爆発した。
== 陽竜商会 ==
〜 CM 〜
「陽竜商会の冒険者向け超強力ボディソープ【バニシュメル】は! 18時間も体臭を防ぐほどパワフル! あまりにパワフルすぎて太陽まで消しちまうぜ! でもそれじゃ寒くなっちまう、だから俺はもうひとつ太陽を作ったぜ! ブレイク! サン! パゥワぁぁぁぁぁああああアアアアアああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
くちゅくちゅ……とルイの胸の筋肉が上下に震える。
18HOUR!
BLOCKER!
「パパパッパッパ、パパゥアッー!」
背後で画面が爆発した。
== 陽竜商会 ==
◆
〜 episode8 ドラゴンは死なず! 〜
―― カテゴラス製薬研究施設 ―― 屋上
戦いは終わった……。
ドラゴンたちの活躍により、カテゴラス製薬の悪事は暴かれ、ドクターは警察の手に落ちた。後は、他の警官たちが施設内を逐一調べて回っている。
巨大化するボスはなり手がいなくてシーンはカットされた。
カールハインツの扮していた課長は、事件の黒幕だった。
見た目以上に大物だった彼は、カテゴラス製薬に出資して裏から操っていたのだ。警察には操作のかく乱のために入り込んだだけで、「ばっかもん!」と怒鳴るだけの簡単なお仕事を忠実にこなしていただけだった。
その課長も薬を飲みすぎてドラゴンたちの前に現れたときにはすっかり老けており、派手なシーンと共に登場した後は、グハッと血を吐いて倒れ、動かなくなった。
「死ぬがよい!」と言った新風 颯馬(にいかぜ・そうま)の台詞は自分に宛てられたものだったのかもしれない。
空京から離れたこのドラクーン森林にも、今日も何事もなかったかのように夕日が沈んでいく。これからは平穏になるだろう、その象徴のようだった。
「雅羅……」
「夢悠……」
激しい戦いを終えた研究施設の屋上で、戦いを終えたドラゴンの想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は、ヒロインの雅羅と向き合う。
お互い、そっと抱き合い見つめあいながら、顔を近づけていく……。二人の唇が触れそうになる瞬間。
魔法のステッキが、カメラを遮る。
魔法の煙に包まれながら出現したのは、魔法少女の想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)だった。その煙はかなり濃かったようで、夢悠と雅羅は咳き込みながら距離を話す。
「お前の仕業だな!」
夢悠はけ雅羅を守るように手をかけたまま、魔法少女に怒鳴った。
「私というものがありながら、他の女へ手を出してる貴方が悪いのよ、ダーリン」
瑠兎子は悪びれることなく言う。彼女は、ドラゴンに好意を抱いているようだった。
「あら?あの子が恋人? ふぅん、じゃあ彼女とお幸せにっ」
ヒロインの雅羅は、急に不機嫌になってドラゴンから背を向ける。夢悠は慌てて言いつくろった。
「「誤解だ! 俺には他に恋人なんていない! 頼む、俺を信じてくれ!」
「へぇ、そうなの……」
雅羅は言葉を続けた。
「……貴方は子供の頃から、そう、『俺を信じてくれ!』と言っては私を助けてくれたわね……信じられたわ。さっきまで。でもこれは別よ!」
「どうして!?」
「『信じてくれ!』だけじゃ足りないの! ……ばか、これ以上言わせないでよ……」
「……」
夢悠は目を見開いて真っ赤になった。雅羅も後ろを向いたまま顔を赤くして俯いている。ドラゴンはしばらく悩んでいた。何度もためらってから、真剣な表情になり、言う」
「心から君を愛してる。俺と結婚して欲しい」
「……!」
憮然とした表情のまま顔を赤くして、雅羅は振り返った。
「私は……」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオッッ!
突然屋上の床を破壊して、巨大なモンスターが出現した。
「グルォアァアアアァァァアアアッッ!!」
激怒の咆哮を挙げたのは、ドラゴンを完全に殺すために生まれた生物兵器の四谷 大助(しや・だいすけ)だった。巨大と言っても、イコンほどもなくせいぜい人の慎重の倍くらいか。だが、ゴーグルで顔を半分隠し漆黒のコートで全身を覆っていて外からは誰か分からない恐ろしげな風貌だった。
碧日蟲と同化しているが、大助自身も若干暴走気味で蟲の侵食による炎の模様が顔の右半分まで達していて血管のようにドクドク光っている。
ドラゴンとヒロインのハッピーエンドを粉砕するために全ての技能と怨念を凝縮させた怒りのモンスターが満を持しての登場だった。
燃え上がる瞳がドラゴンを射抜く。
「……え?」
と夢悠は目を丸くした。
「コードNo.「D−001」型。戦闘行動を開始します」
大助のパートナー四谷 七乃(しや・ななの)は魔鎧コートの状態で機械的に喋る。
「目標補足。「D−001」型は「ドラゴン」の殲滅を最優先」
「ゴオオオオオオルォォォォォッッ!」
大助はもう一度咆哮する。七乃に言われなくてももとよりそのつもりであった。
他の誰かが、雅羅とキスするかもしれないだと……!?そんなこと、認められるか……!!
雅羅に強い好意を寄せるものの地味な外見のせいでいま一つ主役になる自信を持てなかった大助は、一晩中悶々とした挙句ブチ切れたのだ。
目の前でドラゴンを演じる夢悠に本気も本気、全力で襲い掛かっていく!
「えっ……?」
夢悠はもう一度唖然とする。
バギィィィッッ! と本気攻撃がまともに命中して吹っ飛んだ。
「な、なにするのよ……!?」
瑠兎子が血相を変えて助太刀に入る。
もちろん、本気大助に見境はない。まとめて抹殺するために攻撃を加える。
たちまちにして両者の間で激しい戦闘が始まった。
と……、
「ばかぁぁぁぁっっ!」
雅羅が叫ぶ。
「やめて! どうしてそういうことになってるのよっ!」
「……」
「……」
夢悠と大助は攻撃の手を止め、雅羅を見る。
彼女は目に涙を浮かべて怒っていた。大助の前までツカツカと歩いてくると、彼の身体をグーで殴り始める。
「あなたは……! そんなことして何か解決すると思ったの! 誰かが喜ぶとでも思ったの!?」
「……」
「シーンに入りたかったら、思い切ってくれてもよかったのに!」
「……ごめん」
「私のことが好きなんだったら……好きになった女に心配かけさせるなぁぁぁぁっ!」
雅羅はもう一度叫ぶ。大助の完全敗北だった。
その声に呼応するかのように、大助の足元が崩れ始める。
演出効果のため、セットが全て倒れ始めてきたのだ。本来なら安全なはずだった。それが……。チープなセットのおかげで、余分なところまで倒れてくる。
「ごめん……。出直してくるよ……」
雅羅に当たらないようにセットを全身で受け止めながら、大助は平静を取り戻しシーンの彼方に沈んでいく。
怒りに燃える最後のモンスターは、姿を消した。
それを悲しそうな目で見やって、雅羅は身を翻す。
「さあ、いきましょう……」
夢悠のドラゴンと手を振る先に、救援のために駆けつけてきたヘリコプター(のセット)が飛んでくるのが分かった……。
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