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サクラサク?

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サクラサク?
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第6章

「お待たせしました」
 御膳を運んできたセリカを従え、源とともに大広間に入ってきた涼介とヴァイスが、大広間の客たちに、口上を述べる。
「本日の料理は『行楽鱸御膳』でございます」
「かの清盛公が愛し、平家繁栄の礎ともなった縁起物を、皆様、心行くまでご賞味くださいませ」
「清盛……私のこと? 私が、この花のようにきれいな刺身を食べていいのか? 氷の船に載っているのも?」
 狙い通り、清盛は大喜び。
 運び込まれた御膳が並べば、料理レポーター、エースとクマラの出番だ。
 オーディションでは散々な目に遭ったエースだが、今は、花を愛する紳士の姿を取り戻して、桜の木に寄り添っている。
「桜の美麗な姿を愛でながら、温泉旅館で、ゆっくりまったりしたいと思っていたんだけれど。食欲魔人はくっついてくるし、桜も何か気分が乗らなくて咲いてないって言うし……」
「オイラにナイショで美味しい物を食べにるにゃんて、そんな抜け駆けはゆるさないぞー、エース。食べ物の恨みは怖ろしいっていうのにゃ。でも、一緒に料理レポーターになれたし、今夜は美味しく食べまくって、皆にその美味しさをつたえたいのにゃっ」
 と、クマラ。
「その前に、先ず、人の心草の心で桜さんと会話をしよう。『君の美しい満開の桜が見れないなんてとても悲しいよ』」
 桜に語りかけるエースを待ちきれないクマラは、全身から「うンまいにゃー」オーラ全開でまぐまぐしはじめた。
「潮汁がウマー。手まり寿司、わーいっ。お刺身だって平気です。きりっ。てんぷらとか美味しーよ。茶碗蒸しも天に昇る…! 温泉は和膳料理が最高にゃー!!」
 レポーターとしては食べ過ぎなクマラだが、可愛く美味しそうに食べるその姿は、皆と清盛の心を惹きつけた。
「おまえを見ていると、なぜか食欲をそそられる。そんなに美味いか?」
「美味しいよ! 清盛ちゃんも一緒に食べて幸せになろうよ」
「クマラ、何を馴れ馴れしく誘ってるのか……でも、桜の為には、クマラのやや強引なお誘いも有効かも」
 と、エースもマイクを握り直す。
 愛する桜の開花の為には、清盛に満足してもらわなければならないらしい。
「それに、ここがもっと有名になったら、ここの桜さんが、もっと皆の目に留まり、その美しさが知れ渡ろうというもの。だから、今回はクマラの好きにやりなさい」
「おまえの言う通りだ、刺身も料理も美味いな! 見た目も味も素晴らしい!」
 クマラとエースのレポートに気分を盛り上げられた清盛が、楽しげに料理を口にはこぶ。
 神崎 零(かんざき・れい)は、陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)に目配せして、そっと、桜の枝を示した。
「あ……一輪、咲きそうな花がありますね」
「清盛が喜んでいるからだよ。もっともっと、喜ばせて、満足させてあげようね」
 頷いた刹那が、清盛の隣に座って、語りかける。
「そなた、武芸はお好きですか?」
「ああ、もちろん! だが、今のこの姿では、私の腕を皆に披露することができない。残念だなあ」
「だったら、今夜は、決闘を見て楽しもうよ」
 と、零は、刹那の反対側から、清盛を挟むようにして微笑む。
「試合……?」
 ふたりに促されて振りかえると、桜の老木の下の舞台に、神崎 優(かんざき・ゆう)神代 聖夜(かみしろ・せいや)が立っていた。
「おお、勇ましいなあ。あのふたりが戦うのか?」
「黒い髪の地球人は、神薙流剣術の使い手です。銀の髪の獣人は、武器を持ち替える変則的な戦いを得意としています。そなたはどちらが勝つと思いますか?」
「獣人が、やや有利かな?」
「優は侍だけど、奇抜な動きで、聖夜は忍者の動きで戦うから、変わった決闘が観れて退屈はしないと思うよ」
「楽しみだが、怪我が心配だなあ」
「本物に似せた模造の武器を使用しておりますので、ご安心ください」
「武器は本物じゃないけど、お互いの動きやタイミングや癖を知っているふたりは、本気で戦うよ」
 優と聖夜が、広間の客たちに一礼して、決闘開始!
「はあ……っ!」
「やあ……っ!」
 優の戦闘スタイルはスキルを駆使して、奇抜な動きで、相手を翻弄しながら受け流し、攻撃を利用して戦う居合い型だ。
 まずは、聖夜の攻撃に軽く合わせた優が、聖夜の肩に手をつき飛び越え、振り向き様に切り払う。
 続いて、横凪を利用して後ろに回り込み、攻撃。
 鞘を使った二段攻撃を防いだ聖夜が、決め技を出す。穏形の術で姿を隠し、疾風迅雷で翻弄して、ブラインドナイブス!
 しかし、優は、聖夜が繰り出した決め技に、合わせ決め技として秘奥義・十六夜を放った。
「今の技は……?」
「神薙流秘奥義・十六夜だよ。神速の居合いを放ち、刀を振り切ると同時に武器を離し、回転しながら素早く左逆手に持ち替え、右手を刀の峰に添えて、回転力を利用し切り上げを放つ技。神薙流は、相手の攻撃を受け流したり、利用したりして戦う流派だけど、あんな奇抜な動きができるのは、優だけなんだって」
「良い戦いでした」
 見事な勝利に、零も刹那も大喜び。
 決闘前、優に本気で相手してくれを頼んだ聖夜は、負けはしたものの、彼の実力を実感した嬉しさを噛みしめている。
「ふたりとも、見事だったぞ」
 清盛も、惜しみない賞賛を送った。
 その拍手が鳴り止まない中。
 ひらり。
「……おや」
 肩に舞い降りた薄い花弁を拾い上げ、エースが、桜の枝を見上げる。
 風船屋名物の老木の枝に、数え切れないほどの花が開いている。
 エースのくちびるに微笑みが浮かんだ。
「ようやく、花開いてくれたようだね。まだ、三分咲きというところだけれど」
 アイドルユニット「星空アイドル」を引き連れてやってきた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)も、桜の開花に気付いていた。
「もう一押し、だな。他のお客さんも楽しませて、場を盛り上げるぞ」
 奏輝 優奈(かなて・ゆうな)を誘って、天鐘 咲夜(あまがね・さきや)銀河 美空(ぎんが・みそら)の三人でユニットを組むなら、自分も混じるしかない。「でも、音痴だから、バックで演奏だ」と、持ってきたエレキギターを掴む。
 服は、赤と黒のチェック柄のシャツを選らんだ。ステージでは、スタイリッシュに見えるはずだ。
 本当なら料理を作りたかった勇刃だが、あらかじめ用意してきたカツカレーは、後で渡せばいい、と思うことにした。
 今は、和食の御膳に夢中な清盛ちゃんだけど、後で、きっとカレーが食べたくなるはずだ。カレーとは、そういうものなのだ。
「一緒に頑張ろうぜ! ボーカル、頼んだぜ、ふたりとも! あ、あと優奈もな」
「ステージは桜の木の下ですか……いいですね! 私、桜が大好きです!」
 と、張り切る咲夜は、彼女をテレサと呼ぶ美空とおそろいの衣装を着ている。上はブレザー、下はチェックのスカートで制服っぽいけど、ちらっと見せちゃうスカートの下のレースのペチコートが特徴というかなり凝ったものだ。
「やっぱ、見た目は大事だよね」
 と、美空。
 これがアイドルデビューになる優奈は、咲夜、美空と型は同じで、色のちがう衣装に身をつつみ、気合いを入れている。
「新米に仕事なんか、中々来ぉへんのや、これは、絶対成功させるで! 人前で本番ステージやるのは、初めてやけど……大丈夫や、練習では動けとるし、ちゃんとやれるはず! 折角、ユニット組んでくれた美空さんと咲夜さんの為にも、きっちり成功させんとな!」
 歌や踊りは自信がある。だが、ありきたりなステージでは、清盛を満足させることはできないだろう。
「普通のステージやったらあかん、かぁ。よし、スキルフル活用していくで!」
 まず、あらかじめ召喚しておいた機竜・アバランシュに、出力を調整したブレスで雪を降らせる。加えて、光術でライトアップ。
「雪がキラキラして綺麗やろ? 星が振ってくるみたいや! って感じ?」
「うわ〜、召喚獣を出して一緒に踊るのか……その発想はなかったぜ……」
 ど派手な演出に、客だけでなく、勇刃も驚いている。
「うわあ……すごいなあ。こんなの、初めてだ」
 清盛の目も釘付けだ。
「さぁみんな、派手に決めるでぇ!」
 満場の拍手で登場した三人が歌うのは、幸せの歌。
「その笑顔を〜そっと守りたい〜」
「あなたの心に〜幸せなひとときを〜」
 ステージで歌うのが初めてな咲夜はちょっと緊張しているが、美空と一緒なら、何とかやっていけそうだ。実は、「銀河の歌姫」と呼ばれている人気アイドルの美空も、それなりに緊張しているのだが、皆の励ましで、勇気を出している。
 優奈は、後半への盛り上がりに合わせて、ミニ雪だるまや氷兎・ゆき、召喚獣・雪だるま兵団も召喚。皆、ステージで一緒に踊りはじめた。
フィニッシュは、巨大雪だるまの召喚獣・ショーグンが登場。同時に雷鳥・ミカヅチがゴッドスピードをかけ、雷光を纏った高速飛行で飛び回って、イルミネーション代わりに。
「すごい、すごいぞ!」
 ステージに駆け寄り、夢中で拍手する清盛の頭上で、老木の桜は、満開に咲いていた。
「おお、中庭も良い感じじゃないか。こっちの撮影もバッチリだな」
 温泉レポーターを引き連れたマーガレットが、ちょうど良いタイミングで現れ、音々と源で用意しておいた屋台が、ステージの興奮を引き継ぐ。
「綿飴、おいしいよ!」
「金魚すくい、やってみるかい?」
「祭りの華は、的当てだよ!」
 呼び込みの声にじっとしていられなくなったイリア・ヘラー(いりあ・へらー)が、ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)を誘う。
「面白そう〜! 行ってみようよ、ね、ダーリン!」
「祭りもいいが、この屏風、面白いのう」
 日本文化に興味を持っているルファンは、もう三十分以上も、屏風とにらめっこを続けているのだ。
「金色の地は、本物の金粉を使っているようだ。だからこその光沢なのか……描かれている花も、鮮やかじゃな。西洋の写実主義とは全く異なる方法で描かれているが、いったい、どのような絵の具を使っているのじゃろうか……」
「ねー、ダーリン、屏風は逃げないよ、そのくらいにして、お祭りに行こうよー」
「可愛いメイドの猛烈アタック、失敗に終わる……」
 長尾 顕景(ながお・あきかげ)が、からかい口調で意地悪なことを言うので、
「長尾は黙ってて!」
 と、睨む。
 露天風呂は別々に入らなきゃいけなかったんだから、今度こそ、デート気分を味わいたい。いまだに性別不詳で、お風呂もどっちに入ったのかわからない長尾になんか、負けないんだもん。
「ねーったら、ねー、ダーリン!」
「せっかくの祭りなんだ、見物しようぜ!」
 見かねたウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)も一緒になって誘ってくれて、ルファンはようやく立ち上がった。
「わかった、わかった、祭り見物じゃな」
「やったー!」
 風船屋の浴衣を着たルファンに、イリアがぴったりと寄り添う。
「女同士で仲良くしているようにしか見えないな。姉と妹……いや、母親と娘か」
 ルファン自身は、イリアのアタックを、妹や娘がする甘えだとしか思っていないことを見抜いているが、また、意地の悪いことを言いながら、後からついてくる。
 ジャマをしたいわけではなく、色々と見回って、様々な人を観察するのが目的らしい。
「金魚すくいしたいな〜」
 と、イリアが覗き込むと、そこには、先客がいた。
「あれ? 河童?」
「カッパー!!!」
 見事に金魚をすくった喜びに、手をばたばたさせているのは、ゆる族の鬼龍院 画太郎(きりゅういん・がたろう)だった。
「がーちゃんは、紳士なカッパなんだよ」
 と言ったのは、ネーブル・スノーレイン(ねーぶる・すのーれいん)
「がーちゃん、来て。シュガーさんを紹介するよ」
 ネーブルは、新しく加わったシュガー・ヴィネガー(しゅがー・う゛ぃねがー)の歓迎会を開きたくて、この旅行を企画したのだ。
「はじめまして、わたくし、お嬢様専属メイド、シュガー・ヴィネガーと申しますの」
 ネーブルが手を引いて連れていった桜の木の下、シュガーが礼儀正しく頭を下げる。
「テレビの撮影が終わるまで温泉に入れず、遅れてしまいました」
 頷いた画太郎が、巻物に何かをしたためる。
『温泉はいいですね。俺も大好きです』
「えっと、えっとね? 一番最初に契約してくれたがーちゃんの他に、新しく獣人のシュガーさんが、お手伝いに来てくれたんだよ。でね、もっと皆で仲良くなれたらと思ってね。歓迎会をこの三人で開こうって思ったんだぁ……♪」
 ネーブルの心遣いに、シュガーも画太郎も、胸がじーんと熱くなる。
『シュガーさんは、俺もほとんど知らない間にお嬢さんが契約してたので、歓迎会を通して交流が出来ればいいですね。えっと、確かメイドさんをしてる方だとお聞きしましたが……』
「画太郎さんは、執事をされていらっしゃるとか……わたくし、代々メイドとして働かせて頂いているのですが、ちゃんとしたメイドとは言い難く……そう、どちらかと言いますと、攻撃や護衛等のボディーガードとしての方が得意なんですの。ですので、執事である貴方に、是非、ご指南頂ければと」
『なるほど、確かにメイドらしくないメイドさんかもしれませんね。ああ、悪口とかでは決してありませんよ。一緒に頑張って行きましょうね』
「はい、頑張ります! わたくし、こう見えて器用…ってきゃー!!」
 画太郎の方へ乗り出した途端、シュガーは、桜の木の根に躓いて転んでしまった。どうやら、かなりのドジッ子のようだ。
「い、痛いですわぁ…! ……あ、し……失礼致しました……」
 めそめそをこらえるシュガーに、画太郎が、ハンカチを差し出す。
「カッパー♪」
「あ、ありがとうございます……」
 ゆる族なので顔は見えないが、心意気がイケメンな画太郎だった。
「折角だから、お祭り軽く見学して……後、枕投げ…しようね」
 仲良くできそうでよかった。
 そう思いながらも、ネーブルは、シュガーに、あらためて尋ねてみる。
「えっと、でね。森で出会った時、本当にいいのかなって思ったんだけど……私と一緒に来てよかったのかな……?」
「ふふ、お嬢様が、私を森の中で見つけて下さって感じたんです。貴方の様な方を守る為、メイドが居るんじゃないか、って」
 にっこりと笑い合うネーブルとシュガーを包むように、琴の音が聞こえてきた。
「せっかくのステージだ、からっぽのままじゃ、もったいないぜ」
 と、琴を借りてきたウォーレンの演奏だ。
 契約前の旅で覚えた自己流だが、なかなかの腕前である。
「良い曲だな……」
 雅でありながら、どことなくロマンチックな曲想に誘われるように、清盛が、桜を見上げる。
「なぜかはわからないが、桜が満開になったら、心が軽くなった。よい気分だなあ」
 そんな清盛をちらちらと見ながら、木曽 義仲(きそ・よしなか)が、高柳 陣(たかやなぎ・じん)に何やら囁いている。
「なぜ、清盛がここにおる!?」
「お前と同じ英霊だからだろ」
「む……そうであったな。しかし、あのような愛らしい女子になっておるとは……」
 平清盛と聞いて、「放っておくわけにはいくまい」と思った。
 だが、一体、どう接すればいいのだろうか。
 それを考えると、なぜか、手のひらにじっとりと汗が滲んでしまう。
「ま、こういう機会があっても、いいんじゃねぇか?」
 桜が咲くというから久々にやってきた風船屋。まさか、そこに義仲の因縁の相手がいるとは。
 陣としては、苦笑するしかない状況だ。
「むむむ……確かに、今の世は、源氏も平家も争っておった時代ではないしのぅ。うむ、和睦を図る事も必要か」
「ちょうどいい機会だし、話でもしてみろよ。俺はゆっくり風呂に入っ……」
「ま、待て!」
 去ろうとした陣を、義仲があわてて引き留める。
「どうも複雑な気持ちなのだ。よもや、このような場所で清盛と逢うとは……しかもジジイではなく、あのように愛らしく、俺より幼い女子の姿に……むむむ」
「複雑なのは、清盛が、お前の好みにピッタリだからじゃねぇ? 勇敢で一途……だろ」
「むむむ……」
 さらに唸る義仲だったが、ついに心を決めた。
「あ? ついて来い? しゃぁねぇなぁ。スポンサーとしてついてってやるか」
 と、ぶつぶつ言う陣を従えて、桜の木の下に立つ少女に、声をかける。
「清盛よ。数百の時を巡り出会うも、何かの縁。過去は過去とし、今を語り合わぬか」
「……義仲か!」
 驚く清盛に、笑みを浮かべ、手を差し伸べる。
「ようするに、俺とデートせぬか。祭りも独りではつまらぬであろう」
「デート? おまえと?」
 デート。
 それは、確か、お互いに好意をもつ者同士が、出掛けることだったような。そう、例えば、今日のこの祭りのような場所に。
「なぜ、おまえなどと、と言いたいところだが、まあいいだろう」
 義仲の手を握って、清盛も、にっこりと笑う。
「だが、おまえの連れはいいのか?」
「なに、陣はスポンサーになってくれるらしいのでな。俺は、清盛と祭りを楽しみたい」
 手を繋いで屋台をめぐる義仲と清盛を、こっそり見ていたイリアが、ため息をつく。
「あのふたり、いい雰囲気だよね。うらやましいなあ」
 そうして、楽しい祭りの夜は更けて。
 別れるのが惜しくなったふたりは、再び、桜の木の下へ。
「きれいだなあ……」
 リースが光術で作り出した蛍くらいの小さな光が漂い、花たちは、幻想的な雰囲気に包まれている。
「指きりで約束してはくれまいか。また、逢おうぞ」
「……うん」
 指切りの後で、清盛は、義仲の頬にくちびるを寄せた。
「な……!?」
「デートのときには、こうするものだろう。拾った雑誌で読んだぞ」

 そんな源平ラブコメが行われている老木の反対側では、マーガレットが、音々の手をとって叫んでいる。
「桜は満開! 露天風呂も料理も抜群! 番組は大成功だ! 秋の『温泉へGO! 特番だよ大集合!』は、風船屋の特集に決めたぞ! また、よろしくな!」
「ウチと風船屋……また、みなさんのおかげで、救われた……ありがとうございます、ありがとうございます……」
満開の桜の花は、それぞれの思いをのせて風に舞い上がり、穏やかに美しい夜の中へと降り積もるのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

ミシマナオミ

▼マスターコメント

 ミシマナオミです。今回はじめて風船屋さんに来てくださった方、2度目の方、3度目の方、皆様ありがとうございました!
 皆様のおかげで、風船屋さんでの収録は大成功! 女将の音々だけでなく、ちょっと無茶振りなプロデューサー、マーガレット・スワンも大喜びしています。
 今回も、皆様のアクションのおかげで、楽しく執筆することができました。
 皆様にも、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
 また近いうちにお会いできますように!