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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
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リアクション



stage5 扉の先に魔法少女?


「どうだ朋美、すぐにでも開きそうか?」

 動力炉がある部屋の扉を前にして、ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)高崎 朋美(たかさき・ともみ)に尋ねる。
 朋美は動力炉への道を開くため、破損した開閉装置をいじっていた。

「う〜ん。さっきの戦闘で回路の一部が駄目になってるわね。
 解体していじり回せば修復できると思うけど、その後は暗証番号が必要になると思うな。
 でも、そこまでやるには結構時間がかかりそうね」
「そうか。それはやっかいだな」

 あまり時間をかけるわけにはいかない。
 敵の増援が気になる。
 ≪シャドウレイヤー≫の範囲拡大も、魔法少女としての活動時間もどのくらい余裕があるのかさえわからない。

「だったら、暗証番号のほうはどうにかしましょうか?」

 朋美とウルスラーディが困っていると、桐ヶ谷 真琴(きりがや・まこと)が突然そんなことを言い出した。
 ウルスラーディは眉を潜めながら尋ね返す。

「どうにかってどうするつもりなんだ?」
「それはほら、あの人達から聞きだせば問題ないでしょう?」

 ウルスラーディが真琴が指さす方向を見ると、敵の増援がこちらに向かって来ていた。

 確かに調べるより聞き出した方が早いかもしれない。

 朋美が問いかける。

「できるだけ早くこの開閉装置を直すから、その間に暗証番号の聞きだし、お願いできる?」
「もちろん! これも魔法少女の仕事ですから!」

 真琴はニコリと笑いかけると、ヘアーエクステンションでロングに伸ばした髪は揺らしながら敵を振り返った。

「それじゃあ……!」

 ロングスカートの下で力強く地面を踏みしめ、重々しいタクティカルアームズを構える真琴。
 上半身を覆うボディスーツのような服の上から腕に力が込められているのが見てわかる。
 どこからか吹いてきた風が、背中のマントが揺らした。
 真琴が敵の集団に向けて慎重に狙いを定め、砲撃を浴びせようとする、その時だった――

「ちょっと待て、マコ!」

 突如、ハムスターのマスコットになっている桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)が肩に飛び乗り、耳元で叫んできた。
 苦々しい表情をした真琴が、目だけ煉に向ける。

「なんですか、まったく?」
「それはこっちの台詞だ! おまえ魔法少女なのにその武器はなんだ!? それは銃……というか大砲、むしろ魔砲だろ!!
 魔法少女っていうのはもっとこう、杖とか魔法とか使うもんじゃないのか!?」
「なにを言っているんですか?
 最近の魔法少女と言ったらこれでしょう。
 重火器やミサイル、レーザーキャノンなんてザラですよ」
「どこのどいつらだよそれ!?
 俺のテレビで見る魔法少女でもそんな奴ら観た事ないぞ!?」
「ええ!? そんなことないですよ。よくやってますよ?
 深夜枠のアニメで」
「深夜枠?」
「そう、深夜番組です。観ていませんか?」
「……観てないが」
「一回観ておいた方がいいですよ。名作が多いですから」

 真琴の主張にハムスター姿の煉が顎らしき部分に手を当てて真剣に悩んでいた。
 ようやく煉が静かになった所で、真琴が武器を構えなおす。

「それでは改めまして……いきますよ! 全力全開、手加減なしで!」
「おい、マコ!
 よくわからないがその台詞は何か色々危ない気がするぞ!」

 どことなく聞き覚えのある台詞に慌てる煉だった。


「さて、私も始めるとしますか。
 でもその前に……」

 ブルーのウィッグとグリーンのカラーコンタクトをした富永 佐那(とみなが・さな)は、右手を腰に当て、指を開いた左手を敵に向けて斜めに立つ。

「魔法少女マジカルレイヤー海音☆シャナ、推参っ☆
 シャナっシャナっにしてやんよ〜☆」

 名乗りをあげておく海音☆シャナ(佐那)だった。

 敵が武器を手に向かってくる。

「ふふ、来ましたね。返り討ちにしてあげます」

 敵が武器が振り下ろす。
 海音☆シャナは体を反らしてそれを回避すると、敵の腹に蹴りをいれて距離を離し、さらに側頭部にハイキックを入れた。
 頭に蹴りを入れられた敵の足元がふらつきながら数歩後ずさる。

「まだまだですよっ!」

 海音☆シャナは笑みを見せると、二、三歩助走をつけてジャンプした。
 空中で体を横にすると、腹に相手の顔面をつかせるように肩の上に自分の体をのせる。
 敵が倒れないように前のめりになる。
 すると海音☆シャナは肩の上で半回転して後頭部に回り込み体重をかけ、地面に足がついた瞬間――敵の両脇に手を入れて体を捻らせながら自身の後方へと投げ飛ばした。
 背中から堅い床に叩きつけられる敵。そのまま呻き声をあげて立ち上がる気配はなかった。

 海音☆シャナが呼吸をして空気を肺へと送り込む。
 だが、休む間もなく次の敵が襲いかかってきた。

「あまりモテすぎるのも困りものですね」

 向かってきた敵がナイフ突き出してくる。
 海音☆シャナはそれを外側に回り込むように避け、敵の二の腕を掴み、反対の肩に手を添えた。
 そして肩においた手に力をいれながら相手の背後に浮きあがると、頭の上を跨ぐようにして足を引き抜き、二の腕に触れていた方を両足で挟み込んで体重をかけた。
 片側に体重をかけられた敵は回転しながら地面に叩きつけられる。

「魔法少女式☆腕ひしぎ逆十字固め!」

 海音☆シャナはそのまま両足で挟んだ手を締め上げる。
 敵は激痛から必死に反対の手で床を叩いていた。

「安心してください。独りぼっちは、寂しいですものね☆
 いいですよ、私が眠りに落とすまでは、一緒にいてあげます☆」
 
 海音☆シャナは敵が気絶するまで、腕に体を密着させていた。

「ま、こんなもんですかね?」

 立ち上がりながら服についた埃を掃う海音☆シャナ。
 周囲を見渡すと仲間の活躍で徐々に敵の数が減ってきていた。


「くぅぅ、あっちも盛り上がってるなぁ。
 よぅし、私も派手に暴れるとしますかぁ!」

 海音☆シャナの戦いを見た魔法少女・ろざりぃぬ(九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず))は興奮した様子だった。
 すると、足元から斑目 カンナ(まだらめ・かんな)が叫ぶ。

「暴れるのはいいけど、ちゃんと暗証番号を聞き出すんだよ」
「わかって――くすっ」
 
 カンナを見たろざりぃぬが、堪えきれず笑い出した。
 徐々に顔が赤くなるカンナ。

「な、なんだよ……」
「その姿は……ククッ、笑えすぎ……何度見ても……ククク」

 腹を必死に抑えるろざりぃぬ。
 カンナは今ろざりぃぬのマスコットパートナーになっていた。
 可愛らしいふかふかのうさ耳と尻尾がついたカンナ。
 いっそのことウサギになれればよかったのに、なぜか素顔を晒したピンクのウサギの着ぐるみを着た状態になっていた。しかも着ぐるみなのに、体に張り付いたように脱げない。
 とてつもなく恥ずかしい思いをしているカンナだった。

「う、うるさいな!
 いいから戦えよ!」
「はいはい……クックックッ」

 涙目になりながら、ろざりぃぬは何度も深呼吸してようやく平常心を取り戻していく。

 そうこうしている間にも敵はろざりぃぬを狙って攻めてきた。

「おっと、危ない危ない」

 ろざりぃぬは勢いよく突撃してきた敵をひらりと回避する。
 すると、ろざりぃぬは素早く相手の背後から腰に手を回した。

「それよっと!」

 ろざりぃぬがガッチリ両腕を回して腰を抑えると、敵を持ち上げる。

「マジカル☆スープレックスゥゥ!」

 綺麗なブリッジを描くろざりぃぬ。
 肩から首に強烈なダメージを受けた敵は、手をダラリとさせていた。
 ろざりぃぬは三秒間その状態を維持したのち、ゆっくりと敵を離した。

 起き上がるろざりぃぬ。
 すると、新たに近づいてきた敵が刀を振り下ろす。

「うわっ」

 服が多少破けたものの、間一髪で体を反らせて回避するろざりぃぬ。
 だが、体制を立て直す間もなく、今度は顔面に強烈なパンチがめり込んだ。

「くうっ!」

 鼻を抑え、ふらつきながらも敵から必死に目を離さないろざりぃぬは、どうにかバックステップを踏んで距離をとる。

「大丈夫ろざりぃぬ!?」
「オッケー、まだまだ問題なし!」

 鼻から流れる血を手の甲で拭いながら、ろざりぃぬは嬉しそうにしていた。

「さて、お返しはさせてもらおうかな!」

 走り込んできた敵が刀を振り下ろす。
 ろざりぃぬはその一撃を回避しつつ手刀で相手の手首を正確に叩いた。
 敵が武器を落とす。

「まずは危険物を排除!」

 すると、またしてもストレートがろざりぃぬの顔面に向かってくる。

「くっ……」

 だが、ろざりぃぬはギリギリで顔を反らし、拳は空を切っただけだった。
 反撃にビンタをお見舞いしたろざりぃぬは、怯んだ一瞬の隙をついて敵の背後に回り込む。
 そして左手で相手の左腕を無理矢理背中で押さえつけ、敵の右の脇の下から顔を出す。
 正面から見れば敵に肩を貸しているように見えなくもないこの状態から、ろざりぃぬがは右方向へ体を捻りながら敵を後方へと引っ張った。

「いっくぞぉ! マジカル☆ペプシツイストォォ!!」

 ろざりぃぬは身体を捻りつつ、勢いよく伸ばしていた右手で地面に倒れ込んだ敵の喉元へとラリアットを叩きつけた。
 回転と落下の衝撃が追加された一撃が入る。

 敵が喉元を抑えて息苦しそうに呻く。
 だが、ろざりぃぬの攻撃はそこで終わらなかった。

「続いて! マジカル☆アナコンダバイス!」

 仰向けになっている敵の右側にしゃがみ込むろざりぃぬ。
 
 敵の右腕を後頭部に無理矢理回させると、ろざりぃぬはそれを右手で掴み、相手の左耳に自身の右腕が接触する。
 さらにろざりぃぬは敵の右腕の間を抜けるように左手を通すと、自分の右手を掴む。
 そして、身体を相手の胸の上に乗せて支点にすると、そこから無理やり上体を起こすように締め上げた。
 腕を後頭部に固定され、胸の上にろざりぃぬがいることで起き上がることもできない。
 特に首へダメージを与えていく。

「暗証番号を教えろ!
 でなきゃ、もっと痛い目をみるぞ!」
 
 痛みに耐えきれなくなった敵が暗証番号を話した。
 だが、ろざりぃぬはすぐに拘束を解くことはせず、必死に床を叩いていた敵の動きが緩慢になるのを見計らって、ようやく止めた。

「どうだ!」

 敵は涙目で今にも死にそうな顔をしていた。
 すると、黙って様子を見ていたカンナが声をあげた。

「そうだ、ろざりぃぬ! ウォールオブカンナだ!」
「……はい?」

 ろざりぃぬはカンナに近づき、思いついた技の説明を受ける。
 今すぐ披露して欲しいと言われ、ろざりぃぬは仕方なく死に掛けの敵に技をかけることにした。

「じゃあ、おまけのウォールオブカンナ!」

 ろざりぃぬは仰向けになっている敵の両足を脇の下で抱え込むと、跨ぐようにして無理やりひっくり返した。
 そして、ろざりぃぬは立った状態で身体を反らし、うつ伏せになっている敵の身体を無理矢理「く」の字に反らさせようとする。
 腰に多大のダメージを受け、限界に達した敵はそのまま気絶した。

 敵は一通り迎撃し、周囲に静けさが戻る。

「よし、暗証番号も聞き出したし、私完璧!」

 両手を腰に当てて鼻を高くするろざりぃぬ。
 すると、カンナが足を蹴飛ばしてくる。

「あのさ、魔法少女ろざりぃぬ」
「なに改まって?」
「魔法は?」
「……あ、あ〜」

 すっかり忘れていたろざりぃぬだった。