百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

リアクション公開中!

【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!? 【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

リアクション

 ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)高崎 朋美(たかさき・ともみ)に尋ねる。

「どうだ、開きそうか?」
「ちょっと待って……」

 開閉装置の修理が終わり、朋美が魔法少女ろざりぃぬ(九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず))が聞き出した暗証番号で扉を開けようとしていた。
 そしていくつか手順を踏んだのち――

「よし、できた! 開くよ!」

 重苦しい扉がゆっくりと開きだした。


「フハハハ! 待ちくたびれたぞ!」
「!?」

 動力炉へと続く扉が開かれると、男の笑い声が聞こえてきた。
 室内からあふれ出てくる白い蒸気。
 薄暗い室内にその声の主がいた。

「我が名は悪の秘密結社オリュンポスの大幹部……ではなくマスコット、天才科学者ドクター・ハデス!
 正義の魔法少女達よ! ここを貴様らの墓場にしてやろう!」

 魔法少女の契約にサインしたドクター・ハデス(どくたー・はです)は、まるで半身サイボーグ化した熊のような姿になっていた。
 白衣をはためかせながら腕のドリルを生徒達に向けてくるハデス。

「さあ、悪の改造手術により魔法少女となったサクヤよ!
戦艦アグニトゥスを破壊しようとする魔法少女たちを妨害するのだっ!」
「ちょっと、兄さん! なんで私、悪側の魔法少女なんですかっ!
あと、改造手術じゃなくて変身って言って下さいっ!」

 ハデスの隣に立つ高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が困惑した表情で必死に訴えていた。
 咲耶の周りには完全に仲間意識で集まる戦艦の乗組員達がいた。
 なんだかよくわからないうちに魔法少女にされた挙句、気づけば生徒達の敵になってしまった咲耶だった。 
 すると、遠野 歌菜(とおの・かな)が拳を握りしめ、キッとハデスと咲耶を睨みつける。

「色々事情があるようだけど、平和を守る魔法少女として邪魔をするなら私があなた達を倒す!」
「あ、あれ? なんかあちらもヒートアップしてません!?」
「フハハハ! いいだろう。倒せるものならやってみるがいい!
 オリュンポスに刃向ったこと存分に後悔させてやるっ!」
「それはこっちの台詞よ!
 魔法少女アイドル マジカル☆カナ、参ります!」

 歌菜が箒に跨り、咲耶へと向かってくる。
 それを合図に生徒達と敵は一斉に動き出した。

「え、え!?」

 戸惑う咲耶をよそにすでに戦いは始まってしまった。
 ハデスが叫ぶ。

「応戦しろ! 改造人間サクヤよ! このままではやられてしまうだろうがっ!」
「ええ!? っていうか、もう魔法少女の「ま」の字もなくなってるじゃないですかっ!?」

 歌菜が手に魔力を集中させて炎を発生させる。

さーちあんど、ですとろぉぉぉい!!
「うわわっ、か、鏡です!!」

 咲耶は咄嗟の判断で神獣鏡を歌菜に向けた。
 
 ――神獣鏡が歌菜の放った炎を反射する。

「きゃっ!?」

 歌菜は身体を捻って跳ね返ってきた炎を緊急回避するも、そのまま地面に落下してしまった。
 肩に乗っていたため、一緒に落下してしまった黒猫姿の月崎 羽純(つきざき・はすみ)は、すぐに起き上がって歌菜に近づいた。

「大丈夫か、カナ!?」
「うん、平気。でも、どうやら魔法は危険みたいね……だったら!」

 歌菜は魔法攻撃を諦め、両手に槍を構えた。

「うう、仕方ありません」

 咲耶も鞭を取り出して構える。
 
「魔法少女に二の槍無し! 私の全力の技、見せてあげます!!」

 地を蹴り、間合いを詰めようとする歌菜。
 咲耶は【実力行使】を駆使しつつ、近づけまいと広範囲攻撃を続けた。

「カナ、いま援護に――!?」

 歌菜を援護しようと魔法を唱えようとする羽純だったが、殺気を感じて反射的に回避行動をとった。
 
 ギュィィィィン!

 先ほどまで羽純がいた場所がハデスのドリルによって抉られる。 

「邪魔をしてもらっては困るな。
 貴様には大人しくここで犬死ならぬ、猫死にでもしてもらおうか」

 ハデスが不敵な笑みを浮かべながら、眼鏡をドリルで器用に持ち上げていた。

「食らえ! これがマスコット化したことにより俺が得た力だ!
 ドリルミサァァァイル!」

 ハデスの回転したドリルが羽純に向かって飛んできた。

「……」

 だが、羽純は避ける気配を見せず、直立して両手をダラリと下げていた。
 
 ハデスが勝利を確信したその時――羽純の猫の目が見開かれ、瞳孔が縦に伸びる。
 そして目にもとまらぬ速さで手が動き、ドリルを殴りつけていた。
 ドリルは軌道を外れ、羽純の真横を通り過ぎて行く。

「な、なんだと……!?」

 驚愕の表情のハデス。
 羽純はすかさず魔法を唱えた。

「そう簡単にやられるものか!
 くらえ! サンダークラップ!!」
「ひぃ!」
 
 ハデスは慌てて飛びのき、どうにか攻撃を回避した。


 そんなマスコットキャラ同士の戦いが繰り広げられている間に、歌菜は咲耶と戦艦の乗組員によって徐々に追い詰められていた。

「まずいですね! さすがにこの数で攻められたら!」
「ごめんなさい。でも、妹としては兄をたたせたい気持ちもあるにはあるので……これで決めさせてもらいます」

 周囲の敵への対応で手一杯の歌菜に向けて、咲耶が【氷術】を放つ。
 大気中の水分が無数の氷の粒になって歌菜へと襲いかかる。

「しまっ――!?」 
「そうはさせません! ファイアストーム!」

 ミュリエル・ザ・マジカルアリス(ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす))の声が室内に響き渡り、歌菜と咲耶の間に巨大な炎の渦が発生する。
 氷の粒が炎の中に飲まれて消えていった。

「闇よ、奴らを包むのだ!」

 アルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)が声を上げ、歌菜の周囲が黒い霧に覆われた。
 一斉に膝をつく敵を歌菜は槍で薙ぎ払い、包囲網を脱出する。

「アルフィ、ミュリエル!」

 歌菜が嬉しそうに二人の名を呼ぶ。
 アルフェリカがニコリと笑いかける。

「周りの雑魚はわしらに任せてもらおう」
「その間にカナさんはあちらの魔法少女の相手をお願いします!」

 ミュリエルが杖を構えて魔法を唱え始める。

「ありがとう」

 心から感謝を述べた歌菜は、槍を構えなおして咲耶と向き合う。

「では、仕切り直しといきましょう」
「うう……」

 二槍流で【古代シャンバラ式杖術】を駆使する歌菜。
 片方で鞭を薙ぎ払いながら距離を詰める歌菜に、咲耶から焦りの色が見えてくる。

「ねぇ、咲耶さん。
 どうして、私達同じ魔法少女なのに戦わなきゃいけないのかしら?」
「それは……十中八九、兄さんのせいです」
「決められた運命なのかしら?」
「そうかもしれません。こんな兄を持ったが故の運命です」
「そっか……」
「――っ!?」

 歌菜の薙ぎ払った槍の棒の部分が、咲耶の脇腹に叩きつけられた。
 数秒空中を浮遊した後、地面に叩きつけられる咲耶。
 
 その様子が視界に入ったハデスが、青ざめた表情で叫んだ。

「サクヤ――!?」

 慌てて駆け寄るハデス。
 咲耶はよろよろ上体を起こす。

「……だ、大丈夫です。
 でも、強いです。兄さん、このままでは負けてしまいます」
「あ、うん。そうか……」
「どうかしましたか?」
「え? あ、いやなんでもない! 
 ん、ごほん。し、仕方ないな。こうなれば奥の手だ!」
「奥の手ですか?」
「フフ、フハハハ! そうだ!
 サクヤには隠していたがな。実は正義の魔法少女達の中にオリュンポスの同士を潜入させていたのだよ! これこそまさに敵の裏をかく作戦!
 そして今こそ我らオリュンポスの真の姿を見せる時! 
 さぁ! 来い! 同志たちよ!」

 ハデスは両手を広げて高らかに叫んでいた。