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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
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リアクション



stage8 魔空間を収束せよ

「結構厳しくなってきましたね」
「うん……そろそろ限界」

魔法少女ミーナ(ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ))は汗ばむ手でステッキを握りしめながら口にする。
 背中合わせに立つ魔法少女カナリア(玖珂 美鈴(くが・みれい))の表情からも、厳しい様子が伝わってくる。

 ≪シャドウレイヤー≫発生装置がある広々とした空間までたどり着いたミーナ達だったが、そこで待ち受けていた敵に囲まれてしまったのだった。
 協力しあってどうにか持ちこたえてきたが、数が多くてきりがない。
 斧を構えるティー・ティー(てぃー・てぃー)の表情にもあまり余裕がなく、その腰には怯えて涙目のイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)がしがみついていた。

「ちょっとイコナちゃん、あんまりくっつかないでください。
 動きが……」
「だ、だってわたくしお寿司を食べに来ただけですのに……」

 イコナは先ほどから「お寿司を食べに来ただけ」だと訴え続けていた。

 薄ら笑みを浮かべながら敵がミーナに襲いかかる。
 ミーナはステッキを握りしめ、迎撃しようした。
 その時――

「ミーナ、距離をとるんだ!」
「!?」

 声に反応してミーナが踏み出した足を引込める。
 すると、目の前を激しい炎が横切り、敵を黒こげにした。

 頭上から犬のぬいぐるみになった長原 淳二(ながはら・じゅんじ)が、ミーナの前に降り立つ。

「怪我はない?」
「淳二! はい、大丈夫です!」
「ちょ、ちょっと、ミーナ!?」

 ミーナが武器を手放し、淳二をぎゅっと抱きしめる。
 そんな彼女の目には涙が浮かんでいた。

「ありがとう」
「……うん」

 炎が消え、やられた仲間の仕返しとばかり淳二に向かってくる敵。

「おっと、いけませんね!」

 しかし、突如目の前に現れた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が敵の顔面を蹴飛ばし、足が止まる。
 忍び装束をまとった犬の姿をした唯斗は、腕を組んで相手を睨みつける。

「男女の感動の再会を邪魔する無粋な奴らは、犬に蹴られて昼寝でもしていたらどうですか?」

 敵が蹴られた鼻を抑えながら唯斗に挑む。
 唯斗は振り下ろされた剣を片手で受けて止めへし折ると、背後に回って思いっきり蹴飛ばした。
 そして敵の腕を背中に回して無理やり反対側に引っ張った。

「ほら、その手に持っている物騒な物を捨ててもらいますよ」

 敵は痛みに回された腕に持っていた壊れた剣を落とした。

 
 カナリアの所にもカイ・フリートベルク(かい・ふりーとべるく)がたどり着く。
 
「カイ……」
「よっ、元気だったか?」

 カイはカナリアの頭の上で笑っていた。

「こっからは俺が援護するぜ」
「だ、大丈夫、だよ……戦ってきた……もん」

 ここまでミーナ達と協力して戦ってきたことで少し自信をつけたカナリアは、金色のミニドレスに包まれた胸を控えめにはっていた。 

「へぇ――」

 おもむろにカイがカナリアの背後に【歴戦の魔術】を放つと、近づいてきていた敵が倒れた。

「本当に大丈夫かぁ?」
「カイ……いじわる」

 頬を膨らませてムスッとするカナリアだった。

 

「俺は待っていろと言ったんだが――」

 源 鉄心(みなもと・てっしん)は他の仲間と同じように排気口から飛び降り、ティーの前に着地した。
 すると、イコナがいきなり飛びついてくる。

「お寿司ぃぃぃ」
「おわっ、俺は寿司じゃないぞ!?」
「イコナちゃん、ずっとお寿司お寿司言っていましたから……」

 ティーは斧を杖替わりにしながらくたびれた笑みを浮かべていた。

「そ、そうか。ところで道は封鎖されていたはずだが、迂回してきたのかい?
 それにしてはやけに早いようだけど」
「みことさんが扉を開けてくれたんです」

 ティー達から少し離れた場所で、退魔少女バサラプリンセスみこと(姫宮 みこと(ひめみや・みこと))達が戦っている。

「なるほどな……さてと、とりあえず離れてくれ、イコナ。
 寿司を食べに行くためにもこいつらをどうにかしないいけないだろう。
 ティーはまだいけるか?」
「お寿司の後でエステサロンに連れて行ってもらえますか?」
「余裕があったらな」

 ティーは大きく深呼吸して斧を構えなおす。
 すると、相変わらず鉄心に抱きついていたイコナに、ゴン・ゴルゴンゾーラ(ごん・ごるごんぞーら)が体当たりしてくる。

「ぎゃふっ!」

 イコナは思いっきり頭をぶつけて気絶してしまった。

「……ふぅ」

 鉄心はイコナの手から抜け出した。

「よし、いくか!」

 
 生徒達は協力して戦った。
 ヘトヘトになりながらもお互いに励まし合い、助け合い、どうにか敵を排除していった。
 そうして、敵は撤退あるいはそこら中で倒れ、室内が静かになる。

 
 生徒達が休息をとる中、鉄心は≪シャドウレイヤー≫発生装置に近づく。

「さっさとこいつを解体してしまわないとな」
「そういうことなら任せてもらおうじゃん」

 すると鉄心の背後から、疲れを感じさせない明るい声が聞えてきた。

「七色の光に導かれてただいまデビュー! 虹の聖霊の使者、プリズム・ミラーシェード!!」

 鉄心が振り返ると、虹色に光を反射するサングラスで目元を隠し、黒と赤のゴスパンク衣装に身を包んだ虹の聖霊の使者プリズム・ミラーシェード(トゥーカァ・ルースラント(とぅーかぁ・るーすらんと))が、眼鏡をクィッと上げていた。

「こういうのは得意分野じゃん。だ〜から、君は感謝大感激するじゃん」

 プリズム・ミラーシェードは装置に近づき、感心しながらじっくりと調べ始めた。

「はぁ、こんなのですごい威力を出すなんて、やっぱりすごいじゃん」

 人ひとりが入れそうな機械のケースの中には、ポツリと紫色の液体が入った分厚いガラス管が置かれていた。

「でも、どうやって開けるのかわかんないじゃん!」

 プリズム・ミラーシェードはガラス管を取り出すために、機械のケースを開く方法を探したが、開閉スイッチらしきものがなかなか見当たらない。

「ねぇねぇ、みこと。なんか苦戦してるみたい」
「そうですね」
「ちょっと手伝ってくるよ」

 その様子を見ていた九尾の狐姿になっている早乙女 蘭丸(さおとめ・らんまる)がみことから離れて、プリズム・ミラーシェードの傍にやってくる

「ねぇねぇ、どんな感じ?」
「今、ケースを開けようとしてるじゃん。
 でもスイッチが見つからないじゃん……」
「へぇ」

 蘭丸は機械のケースの周りを歩きながら、開閉スイッチらしきものがないか一緒に探した。

「機工士やってた時が懐かしいなぁ……そうだ」

 蘭丸は床に置かれた工具を見て、自分も解体をやってみようと思った。
 背後にパネルを見つけると、ねじ回しを使って狐の手で器用にネジを外していく。
 そうしてパネルを開くと、何やら色々なケーブルが見えてきた。
 それらをじっと見つめる蘭丸。
 そして――ぷちっ。

「ななな、何やったじゃん!?」
 
 機械のケースが急に轟音を立てて、大量の熱を発し始めていた。
 
「え、これ抜いてみたんだけど……」

 蘭丸の手には先ほど引っこ抜いたケーブルが握られていた。
 プリズム・ミラーシェードが蘭丸の横に来て、ケーブルの刺さっていた部分を覗きこむ。

「って、これ冷却装置の電源じゃん!?」
「え、そうなの?」

 次の瞬間――機械のケースが爆発した。
 大量の煙が巻き起こりむせる蘭丸。

「げほげほ……」
「災厄じゃん……」
「で、でもほら、これで取り出せるね」

 真っ黒焦げになりながらプリズム・ミラーシェードが、機械のケースに目を向ける。
 するとケースが壊れ、中の無事だったガラス管に手が届くようになっていた。
 プリズム・ミラーシェードがジト目で蘭丸を見る。

「……後はやるじゃん。下がってるじゃんよ」
「は、は〜い」

 蘭丸は慌ててみことの元へと戻って行った。

 
 離れた場所で、戦艦の端末にノートパソコンを接続してキーボードを叩くルカルカ・ルー(るかるか・るー)
 すると、トカゲ姿になった瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が話しかけてきた。

「何やっとんの?」
「艦橋に電子戦しかけてるの。
 なんかね。他の人達がこの戦艦を動かそうとしているみたいなんだけど、電子ロックがかかっていて苦戦しているみたい。
 だから、少しでも力になれたらな〜って」

 裕輝がポカンと口を開けて欠伸をする。

「はー、御苦労なこちゃ。そういうの得意なんか?」
「優秀な先生に習ったことがあるの♪」

 ルカルカは以前、電子戦のやり方を教わったことがあった。
 それ以外にも自分なりに色々学んできた。
 そして今、その成果が発揮されようとしていた。

 だが、裕輝は深いため息を吐いて、憐れんだ目でルカルカを見つめてきた。

「あんなぁ、そういうのは専門の奴に任せておけばいいんちゃうの?
 自分が思うに無理してしくじるよか、できることだけやってればいいんとちゃうの? 要は適材適所ってやつや。
 ぶっちゃけ、教えてもらたからて、そうそうできようになるもんとちゃうよ。諦めた方がいいんちゃう?」
「そ、そうかな?」
「そうや。どうせ失敗して他人に迷惑かけるだけなんやから、専門家に任せちまった方がええやろ」
 
 キーボードを打つルカルカの手が止まる。
 すると、裕輝がミニドラゴンになったカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)に踏みつけられた。

「馬鹿が!」
「おい、こら! ひとを踏むなちょうねん」
「人じゃなくて今はトカゲだろうが!」

 カルキノスが足に力を入れ、裕輝が苦しそうにする。

「ルカ、裕輝の言葉は無視していい。真剣に学んできたんだろう。だったらそれはルカの力になっているはずだ。それはルカを裏切らない。
 失敗したっていいじゃないか。その時は、みんなでどうにかしよう。
 歴史上の偉人たちも皆最初から成功をおさめたわけじゃないんだ。
 だから、頑張れ!」

 その言葉にルカルカは目元を指で拭うと、カルキノスを抱きしめた。

「ありがとうね、カルキ。ルカ、頑張るよ」
「う、うむ」

 赤くなって照れるカルキノス。
 裕輝が舌打ちして離れていった。


「やったじゃん!」

 プリズム・ミラーシェードが機械のケースから、紫色の液体が入ったガラス管を取り出す。

 ――≪シャドウレイヤー≫が止まり、嫌な気配が消えていく。

 まだ姿は元に戻っていないが能力の弱体化は消えた。
 生徒達の表情が一同に笑顔に変わる。
 
 すると、通路から続々と敵がやってきた。

「迎撃するじゃん!」

 プリズム・ミラーシェードはガラス管を仲間に預けて、銃を構えた。
 唯斗は周囲を確認すると、戦闘態勢に入っていた鉄心に声をかけた。

「ちょっといいですか」
「はい?」
「半分以上の生徒がこれまでの戦いで披露しています。
 このまま全員で戦うのは危険です。
 だから、そいつを持って先に行ってください」

 唯斗は液体の入ったガラス管を指さしながら、叫ぶ。
 確かに多くの生徒達から疲労の色がはっきりと見えていた。
 このまま戦闘になれば、足手纏い所か、大怪我をしかねない。

「こいつらは俺達が足止めします。
 もう一方の通路から甲板に向かってください。
 その液体を絶対敵に渡すわけにいきません」
「……わかりました。
 皆さん、俺について来てください」

 鉄心が走りだす。その後を多くの生徒達がついていく。

「ルカ達も退却――」

 ルカルカも仕方なく、パソコンを閉じようとする。
 すると――

「いいから続けろや!」
「え?」 
「ここはオレがどうにかするっちゅうねん!」

 予想外の裕輝の言葉に豆鉄砲を食らったようになるルカルカ。
 言葉の意味を理解するのに少しばかり時間がかかった。

「あ、ありがとう」
「……ふんっ」

 裕輝は四肢を動かし、敵に向かって進み始める。
 カルキノスが隣に並んで飛ぶ。

「なんだ。やっとルカの頑張りを認める気になったか?」
「はぁ? 冗談やろ? そんなわけあるかい。
 ただの憂さ晴らしや!」

 裕輝はさらに速度を上げて敵に近づくと、死角から確実に脊髄や後頭部を狙って体をぶつけてくる。
 倒すとはではいかないものの、肘をつかせていく。
 しかし、空中に浮かた所を掴まれてしまった。
 すると、裕輝は敵の指に噛みつき――

「実はオレ、ドクトカゲやねん。
 だから噛みつくと数分で……」

 慌てて離した所で、顎へとジャンプして脳震とうを起こさせた。

「うっそや!」

 裕輝は笑って敵をかく乱してまわった。
 後方からカルキノスが叫ぶ。

「裕輝、あんまり動き回るな! 巻き込んでしまうだろう!」
「あほか! 動き回らな、こっちがやられるやろ! 
 そんでおのれがオレに当てるようなら、そっちがへたくそなだけや!
 ったく、これだからドラゴンってやつは……」
「なにをぉ!」

 カルキノスが【雷術】を放つが裕輝はひらりと回避し、変わりに敵が食らっていた。

「当てるつもりなら、もっとちゃんと狙えや、へたくそ〜」


 裕輝がカルキノスをからかっている間にも、他の生徒達と戦っていた。

「それっ、これはおまけです!」

 唯斗は敵の足を掴んで空中で回転させると、地面に落下した際に追撃でエルボーを食らわしていた。

「トゥーカァ、援護をするぞ! ちゃんと決めるのだぞ!」
「おっけー、当然じゃん」
 
 プリズム・ミラーシェードのマスコットパートナー クーちゃんとなったクドラク・ヴォルフ(くどらく・うぉるふ)が【サンダーブラスト】を放つ。
 稲妻が敵に降り注ぎ、痺れさせた。
 プリズム・ミラーシェードが黒薔薇の銃を構える。

「虹の聖霊のキラメキをくらうじゃん! プリズム・キルゼムオール!
 ……なんちゃって〜」

 プリズム・ミラーシェードが引き金を引く。
 弾丸が足や腕に当たった敵が次々に眠っていく。
 さらに援護に徹するクーちゃんは、魔法を駆使して敵の動きを次々と奪っていく。

 生徒達は確実に足止めの役目を果たしていた。

 そうこうしているうちにルカルカ電子戦の成果をあげる。
 
「……できた! これで、艦橋の操作ができるはずだよ!」

 戦艦が揺れ始め、移動が始まる。
 
「よし、皆さん俺達も退却するぞ」
 
 生徒達は先に出て行った仲間を追ってその場を後にした。