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美食城攻防戦

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美食城攻防戦

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饗宴


 広間にはタキシードやドレスを纏った招待客らが、シャンパングラスを片手に優雅な時間を送っていた。
 日もすっかり暮れ、ライトアップされた美食城は実に美しく夜空に浮かび上がる。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
 御神楽 舞花(みかぐら・まいか)はルドルフと談笑している。
 足首に小さな擦り傷があるのは、アッシュを追いかけようとしたところ擦り剥いてしまったのだった。
「楽しんでもらえてるかな?」
「はい。本当ならご招待を受けた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)も一緒に来るはずだったのですが……」
「いやいや、自由参加なので、来るも来ないもその人の自由だ。ただし、力ずくで潜り込もうとするヤツは大概だが」
「はは……」
 舞花は苦笑いをした。
「それにしても用意された料理はおいしいですし、内装もお洒落で……本当に全部食べ物で出来ているなんて信じられません」
「あはは、信じようと信じられまいと、君はもう食べてしまっているんだよ」
「え、何をですか?」
「この城をさ」
「ど、どういうことですか?」
「今ここに用意されている料理は、すべてこの城の調度品を変化させたものだ」
「え?!」
「例えばこのローストビーフ。ついさっきまで蝋燭立てだったよ」
「ということは私は蝋燭立てをおいしくいただいちゃった、ということですか……?」
「そうなるね」
「はは……」
 舞花はやはりまだどこか浮世離れした話だとしか思えなかった。
「お茶飲む?」
 突然間に割って入ってきたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は、空のティーカップを2つ持って舞花とルドルフの顔を交互に見ていた。
 どうやら自慢のメイド向け高級ティーセットで淹れた紅茶を振舞いたいようだ。
「ルドルフさんはいかがなさいます?」
「いただこう」
「わーい。お紅茶2丁はいりまーす!」
「もう、ノーンったら。もっとおしとやかにしてください」
「いやいや、元気があっていいじゃないか」
 ルドルフは笑う。
 それならいいんですけど、と舞花はノーンが失礼をしないかどうかはらはらしながら、顛末を見守るのであった。

「アグラヴェイン。あなたは仮にも勝者なのだから、もっとくつろいぐべきですわ」
「ですがお嬢様。私はお嬢様に仕えるのが使命です。お嬢様のお世話を他人に任せるなんてもってのほかです」
「そういわれてもねぇ……。わたくし、とても悪目立ちをしている気がしてなりませんの……」
 テーブルにかけている麗の元へ取り分けた料理の数々を運んでくるサー アグラヴェイン(さー・あぐらべいん)を、麗は少しだけ恥ずかしく思っているようである。
 敗れた罰として、攻撃に参加した面々が給仕その他雑用に携わっているのだが、麗だけは例外である。
「それにしても……」
 麗は天井を見上げた。
 いくつかの家具は料理に変貌したのだが、あの大きな大きなシャンデリアや、そのシャンデリアがぶら下がっている天井。
 そしてその上の屋根。
 果たしてこの人数で食べつくすのに幾日かかるやら……。
「ねえアグラヴェイン」
「はい、お嬢様」
「わたくし、ダイエットの必要が出てきてしまいそうですわ」
「……いかにも」

 果たして、美食城攻防戦は防御陣営の勝利により幕が下りた。
 この宴が終わる頃には、各人、特に女性諸君がダイエットに勤しむ姿が目に浮かんでくるのであった。


―了―

担当マスターより

▼担当マスター

マリツキ

▼マスターコメント

こんにちはorはじめまして
マリツキです

さて今回のシナリオ、かなり楽しく書かせていただきました
それもこれも、みなさまのアクション投稿のお蔭でございます

ご期待に添えない方もいらっしゃったかもしれませんが、もし気に入ってくださったのならば、次回以降もシナリオへのご参加よろしくお願いします

では、また会う日まで