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リアクション
「倒しても倒しても、しつこい方達ですね!」
「いやはや、元気な人たちだ。その元気をもっと別のことに向けられないものか」
「だからっ! そんなに動いたらスカートが捲れちゃいます! 気をつけてください!」
「はいはーい」
「……三月ちゃん、楽しんでないですか?」
「そんなことないけど。ほらほら、次もきてるよー」
そんなやり取りをしながら黒服を寄せ付けないのは杜守 柚(ともり・ゆず)と杜守 三月(ともり・みつき)の二人だ。
「まったくもう。この体じゃ恋することもままならないですよ……」
「そうだね。その体で言うこと言われても、困りものかな?」
「しませんよ! というか、出来ません。恥ずかしくて……」
「何が恥ずかしいんだ?」
「それは勿論ってかかか、海くん!?」
いつの間にいたのか、そこには海がいた。二人を見つけて加勢しにきたのであろう。
突然の出来事に困惑する柚。その隙を見逃さなかった黒服たちが一斉に柚の元へと駆け寄る。
「しまった!?」
「……やらせるか!」
間髪いれずに柚の前に立ち、持ち前の運動神経を使いこなして寄って集る黒服たちをちぎっては投げちぎっては投げ、と柚を守る。
「らしくないじゃないか、三月……って、あー、今は柚の方だったか」
「す、すいません。油断しました」
「おーやるね。さすが海、僕が何もしなくても万事オーケーだったね」
「いや、そこは何かしろよ」
「まあまあいいじゃない。でもせっかく助けてもらったんだし、お礼でもするよ」
すると三月がおもむろに胸に手を当てる。無論、今の彼の体は「柚」のものだ。
「ちょっと!?」
「いやー、思ってたよりも着痩せするタイプでね。意外とこれが」
「だめ、だめです! なしなし、なしです!」
柚が三月の前に立ちはだかり両手をばたばたさせる。
「……あー、何て言えばいいかわからないが、ご愁傷様だな」
「……それほどでも、ありません」
「海と柚が入れ替わったら面白かったのにね、残念」
「どの口が言うんですか!」
言い争いをする二人にどうすればいいかわからない海。そこにエースとクマラがやって来る。
「んー? 他の契約者さんだにゅん?」
「バカ! 人前でその語尾はやめてくれ! 頼むから!」
「そんなこと言っても今更直せないよ?」
「しばらく喋らないでくれ、後生だから……やあやあお二方、と綺麗なお嬢さん」
英国紳士としてレディの前ではいつでも紳士で、とクマラの体で精一杯の紳士アピールをするエース。しかし、そのアピールを受けるのは……。
「ん、僕?」
「まずはこの出会いに感謝して、これを」
エースが取り出したのは、カントリーマミー。有名なお菓子だ。本来、エースが渡したかった物とはかけ離れた物だが、今更後には引けない。
「これはこれは、ありがとう」
「あー! それオイラのおやつ〜!」
「……っとそんな訳で人格が入れ替わっている訳だ。ここは一緒に協力してさっさとマシーンを破壊しよう。場所の特定はある程度済んでる」
「その意見には賛成です。早くこんな事態は終わらせるべきですからね……」
散々なエースに同調する柚。一方、クマラと三月は楽しそうに話している。
「これは君のものなんだ。それじゃ半分こしない?」
「むぅ、ホントは全部食べたいけど、そうしよっか!」
「よーしそれじゃお姉さんがあーんしてあげよう。あーん」
「あーん」
「「やめなさいっ」」
綺麗にハモった二人を最後に、海は雅羅を救出すべく四人と別れて逃走者を探しにいく。
一方の四人はマシーンがあるであろう、中庭エリアとオールエリアへと向かうのだった。
ところ変わって中庭エリア、現在も逃走者であるフリーが契約者達の手からするりするりと抜けて逃げ回っている。
「やーい! 鬼さんこちら! ここまでおーいで!」
「……ったく、どうして私が女装でこんなことをしなければならないのでしょう」
「まあまあこの場合じゃ仕方ないじゃない? それにすっごく似合ってるよ、レオン」
そんなやり取りをするのは城 紅月(じょう・こうげつ)、レオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)の二人だ。二人も例に漏れず人格が入れ替わっており、現在フリーの捕獲に当たっていた。
「まったく、そんなミニスカで動き回ったらほら。また見えてるよ?」
「だから嫌だと言ったんです! そこの黒服! こちらを凝視しないで下さい!」
『咆哮』を使い黒服達を屈服させる。どこか心の叫びにも似たスキルは、より一層強く敵に効果を与えていた。
「どうして、私が、女装なんてしなきゃいけないんですか」
「いや、レオンの体って大きいよね。じゃなきゃ女装なんてさせられなかったし」
「人の体をまさぐらないで下さい」
「いやほら、将来の伴侶の体だし気になるじゃない?」
「そんなこともしなくてももう十分知ってるでしょう?」
「あはは、それでも今以上にレオンを知りたいと思ってるんだよ。だめかな?」
「……ならさっさとこのふざけた騒動を止めますよ。お互い、自分の体じゃなきゃ出来ないこともあるでしょう」
そう言ってフリーへ向かうレオン。遅れず、紅月もスタートする。
予測不能なフリーの動きに対して紅月が『雷術』を使用し行動範囲を制限。更にレオンが『轟雷閃』、『咆哮』で追い詰め始める。
「あわわわわわっ! ちょ、ちょっとちょっと! やばいってぇ!」
「こちらはとっくにやばいんです。観念して鍵を渡してもらいますよ!」
「レオンの体も悪くはないけど、やっぱり我が身が一番だよね。いろいろと」
「捕まえましたよ……覚悟はよいですか」
『アンボーン・テクニック』使用で全ての準備が整ったレオン。いざ、尋常に。そうしようとした時、フリーが笑い出す。
「残念だったな。頭に血が上っていたのかわからないが、『偽装者』である俺の存在を忘れていたな。少し可愛いからと言っても、所詮は男。ど、動揺することなどあるまいよ」
「……」
プチンッ
何かのヒモが切れた音がする。
「そうですか。こんなに可愛い紅月を所詮程度ということですか。それはそれは……あなたの目は節穴のようですね」
「えっ、いや、そのだなっ」
「いいでしょう、もったいなきとも思いますが存分に楽しませて差し上げましょう」
『誘惑』を使いただならぬオーラ、色的には紫とかピンクとか、を纏わせるレオンIN紅月。完全に眼が据わっている。
「レオーン、それ俺の体なんだけど」
「安心してください。紅月の体は私のものです。ただ見せ付けるだけですよ、紅月の可愛さを」
「いやいや、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど本物のフリーはあっちで逃げ回って……」
「さて、私の本気を――カラダで知っていただきますよ?」
「ひ、ヒィィィィイイイイ!」
「……無理そうだね。あれは本気の時の眼だ。……というか人様の伴侶にナニされてるの君? ちょっとおふざけが過ぎるんじゃない? さっきからパンツ、ちらちら見すぎじゃない?」
「モガモガガ(俺は、何もしてないっ!)」
「……『医学』、『博識』。さてと、急所局部はっと」
「モガッ! モガモガモガガッ!(やめろ! 俺は何もしてな、やめっ)」
その後、偽装者の(無事な)姿を見た物はいなかった。しかしこれによりこのエリアの偽装者はいなくなり、フリー捕獲率が上がった。
もう二人には聞こえてはいないのだろうけれど。
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