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「あっ、あの〜っ……七市さん?」

 と、そこへリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)がおずおずと近寄ってくる。

「はい、なんでしょうか?」
「も、もしよかったらですけど、私たちと一緒に崖から海へ飛び込みませんか?」
「なっ、なんですと!?」

 権兵衛はリースの言葉を聞いて目を見開いた。

「お嬢さん、崖から飛び込むなんて早まってはいけません!? まだ若いんですから、これから楽しいこともいっぱいありますよ!」
「あっ、えっと、いえ。私はそういう意味で飛び込むって言ったわけでは……」

 リースはそういって、さらに頑張って権兵衛に説明をする。
 だが、なかなか話は伝わらず、権兵衛との話は噛みあわない。

「まったく小娘は相変わらず説明が下手だのぉ」

 とそこへ、桐条 隆元(きりじょう・たかもと)がため息と共に現れる。
 そして口べたなリースの代わりに隆元が権兵衛に説明をした。

「なるほど、適度な高さから飛び込んで遊ぶわけですね」
「うむ。先ほど、もっくんに場所を聞いて飛び込むのに最適な場所もみつけておいた。おぬしも一緒にどうだ?」
「そうですか、ではせっかくのお誘いなので、行ってみることにしましょう」
「そっ、そうですか。よかったぁ〜」

 リースはそういって、ニコリと笑顔を浮かべる。
 そしてチラリと隆元を見ると、小さな声でいった。

「隆元さん、ごめんなさい。私、あんまりうまく説明できなくて……」
「ふん、まあこんな事になるだろうとは思っておったわ。いつものことなのだから、気にすることはない」
「はっ、はい」
「まあでも……小娘にしてはよくやった方であるか」
「隆元さん――!」
「なっ、なにを喜んでおる! いいからついてくるのだッ!」

 隆元はそういうと、踵を返してスタスタと歩き出す。
 リースと権兵衛は、そんな隆元の後に続いた。

「おっ、来た来た! こっちだぜー!」

 と、崖の上で待っていたナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)はぶんぶんと手を振る。
 それを見て、隆元は足を止めた。

「わしの案内はここまでじゃ。あとはふたりで行くがよい」
「えっ、隆元さんは飛び込まないんですか?」

 リースはそういって首をかしげる。

「ああっ、わしは……高いところが好きではないのでな」
「そうですか、じゃあしょがないですね」
「ほらほら、何やってるんだよ? 早く早く!」

 と、ガーランドは3人の側にやってきてリースや隆元の手を強引に引っ張っていく。
 そうこうして崖の上についた面々は、さっそく飛び込みのために準備運動をはじめた。

「そういえば、セリーナさんの姿が見えませけど……」

 体を動かしていたリースは、ふとパートナーの姿が見えないことに気がついてそうつぶやく。
 するとそれを聞いていたガーランドが答えた。

「姫さんならあそこにいるぜ」

 そいわれてリーズが海を見ると、そこにはセリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)の姿があった。
 リースと目のあったセリーナは手を振ってにこやかな笑顔を浮かべる。

「何かあったら泳ぎの得意な姫さんが助けてくれるから、安心して飛び込めるぜ。なっ、そうだろ? たかもっちゃん?」

 ガーランドはそういって隆元を見るとニヤリと笑う。

「いや、わしは高いところが苦手だから……」
「山奥育ちのたかもっちゃんが? 嘘だぁっ」
「……」

 こやつめ――。
 隆元はガーランドをジトっとした目で睨みつける。
 山で育った隆元は、海などに縁がなく、実はまったく泳げない。
 それを知っているのはガーランドだけで、他の者には知られたくないことだった。

「ほらほら、たかもっちゃん! とにかく飛び込んでみたらどうだ? 結構楽しいと思うぜ!」
(おのれ、わしが泳げないことを知っていておちょくりおって……)

 隆元はそう思いながら、従者の野良英霊・赤川元保に目配せをする。
 すると主の意志を読み取った従者は、ガーランドのことをいきなり突き飛ばした。

「ぬあっ、赤川ちゃんッ!?」

 突き飛ばされたガーランドはそう叫び、下へと落ちる寸前に思わず赤川の腕を掴む。
 そうしてふたりはそのまま真っ逆さまになって海の中に落ちていった。
 それを見たセリーナは、慌ててふたりの元に泳ぎ着く。

「ガーランドちゃん、元保ちゃん、大丈夫!?」
「ぷはぁっ――!」

 と、赤川を守るように抱きかかえたガーランドが水中から顔を出す。
 そして近くに来ていたセリーヌに向かって笑顔を浮かべた。

「ははっ、心配ご無用だぜ姫さん。俺が泳ぎが得意なのは知ってるだろ?」
「よかった」

 ふたりの無事を見てセリーナはホッと胸を撫で下ろす。

「それじゃあ、次は私がいきますね。七市さん、よく見ててくださいね!」

 リースはそういうと、手を上げて綺麗なフォーム海に飛び込んだ。
 それを見た権兵衛は感心した声をあげる。
 そしてリースの真似をして飛び込みの態勢に入った。

「権兵衛、いっきまーす!」

 手を上げてから、権兵衛は海に向かって思いっきり飛ぶ。
 そしてそのまま下に落ちると、派手な音と共に水飛沫があがった。
 と、権兵衛がぬっと海の中から現れる。

「ハハハッ、高い所から飛び込むのはやはり怖いですね」
「幽霊の権兵衛の旦那様がそういうってことは、相当なものだな」

 そういって、ガーランドも笑う。

「ちょっと、そこの人たち! こっちで一緒にスイカ割りでもやらない!?」

 と、リースたちに向かってエルサーラ・サイジャリーがそう声をかける。
 それに返事をして、海にいた彼女たちは浜辺へと向かった。