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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

「ったく、冷房の効いてない城ね! イライラするわ!」
「元々そういうものではないでしょう。それにこれほどのサイズ、冷やそうと思ったらどれだけの機材と費用が必要になるか」
「そんな細かいことはいいのよ! とりあえず、暑気払いついでにこの城の主をぶっとばしてしまいましょう!」
「まあ、それで落ち着くのならそれでもいいかしらね」
 熱く走るものと、冷ややかに走るもの、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が軽快にパレス内を走る。
 この熱く暑い酷暑を忘れるついでにに、余計なことをするここの主を叩きなおそうとしていた。
 二人がしばらく走っている通路とは違う、広い広い大広間が姿を現す。
「……いかにもって雰囲気ね」
「逆にいないかもしれないわ」
「ないわね。主はあの大馬鹿だもの」
「ある意味では絶大な信頼じゃない? 妬けるわ」
「変なこと言ってないで、戦う準備は?」
「そっくりそのまま返すわ、あんまりカッカしすぎてやられないようにね?」
「冗談!」
 会話を終えて、大広間へと躍り出た二人。
「カッカッカッ、ようこそヒーロー諸君! とはいっても二人じゃが。
 この大広間を前にして一度止まり誰かが潜んでいると的中させたにも関わらず挑んでくるその姿勢、ヒーローと呼ぶに相応しい!」
 二人の予感は正に的中、しかし敵もそれに動じない。
「わしはオリュンポス悪の大魔術師・鵜飼、鵜飼 衛(うかい・まもる)じゃ。よくぞ中枢部まで来たのう。だがそれもここで終わり。何故なら、ここがお主等の墓場じゃからのう!」
「その前口上じゃ、負けるわよ?」
「勝つか負けるか、どちらになるかはやってみなくてはわからんよ。それにここは我らのテリトリー、云わばホームじゃ。何も用意していないではお主等に失礼じゃろ?」
 口の端を少しだけ上げて笑う鵜飼。
 それを合図としたかのよう突如異変が起きる。
「これは、ルーン魔術符……」
「出迎えようにな、ありったけ無数のルーン魔術符を配置しておいた。
 それに今回はこのバッチのおかげで、超長時間における魔力維持が可能。
 ぶっちゃけてしまえば、わしがおる限り発動し続ける素敵仕様じゃ、これで四方八方から絶えず手厚く歓迎することができる」
「ありがた迷惑なお話ね。お客様のことをあまり考えていない、自己満足の一人相撲なおもてなしだわ」
「カッカッカッ、何分客人を招くのは初めてでな。至らぬところは、この二人にもてなしてもらおうと思っておる」
 いつの間にか、鵜飼の後ろには二人の人物が立っていた。
「なあおまんらヒーローだろう? 首おいてけ、首おいてけよ、なあ!」
 嘘のような大きさの剣を肩に担いで恐ろしげなことを言うのはメイスン・ドットハック(めいすん・どっとはっく)
「あら、確かにお綺麗で可愛らしいお二方とは存じますが、わたくしが求めている可愛さとは違いますわね」
 意味深なことを言いながらハイヒールをカツカツと鳴らして現れたるはルドウィク・プリン著 『妖蛆の秘密』(るどうぃくぷりんちょ・ようしゅのひみつ)
「あらあら、せっかくのお持て成しなのにこの程度なの? これじゃ満足できないわよ」
「カッカッカッ! 元気なことじゃのう。それなら、特別ゲストを呼ぶとしよう」
 鵜飼がそういい終わると同時に、上から現れたのは仮面をつけた小さな姿の人物。
「あの方の命令は絶対……、絶対だ!」
 漆黒に姿を纏わせて、竜のうろこでできた仮面。その片方の目からは鋭い眼差しで二人を威嚇するのは松本 恵(まつもと・めぐむ)
「ああん可愛いですわ! こっちに、こっちにおいでくさいませ!」
「……」
「ああっ! 何も言わないその反抗的な感じも可愛いですわ!」
「いいから首だけおいてけぇ、後の部分はいいから首だ首ぃ!」
「カッカッカ!」
「……アクの強い怪人たちね」
「それはセレンなりのジョークなのかしら?」
「そう、かもね。おかげで冷静になったわ」
 あまりの個性的なメンバーに戸惑う二人だったが、戦闘態勢に入るや否や雰囲気が変わる。
 それに対して怪人側の鵜飼たちも戦闘モードへ。
「おもてなしも用意しただけではもったいないからな……存分に使わせてもらおう!」
「なら、こっちも存分に堪能させてもらうわよ!」
 ルーン魔術符と鵜飼から魔力が暴風のように溢れ出しセレンたちへと牙をむく。吹き荒れる暴風にも怯まない二人。
「……首、おいてけ、なぁ?」
「……生憎だけど断らせていただくわ」
 メイスンとセレアナが静かに睨み合う。共に手のかかるパートナーを持ったもの同士、何か通ずるものでもあったのだろうか。
 刹那、メイスンが身の丈以上の大剣をセレアナの首目掛けてなぎ払う。
 それを寸でで華麗にかわすセレアナ、衣装のせいもあり危機と隣通しの新体操を踊っているかのようだ。
「あなたも昔はさぞ可愛かったことでしょう!」
「今だって負けてないわ!」
 静かな二人とは打って変わった戦いをするのはセレンとルドウィク。
 奇しくも二人の戦闘スタイルは同じ、二丁拳銃。激しい弾丸の雨が右往左往に降り注ぐ。
「ほれほれ、こちらからもプレゼントじゃ!」
 四人の横から鵜飼が『ブリザード』、『サンダーブラスト』、『ファイアストーム』を発動。
「くっ!?」
「……まずいわね」
 セレンは『銃舞』を使い、セレアナは『殺気看破』と『女王の加護』を使い何とか致命傷を避ける。
「たたみかける!」
「……いい動きだけど、どうせなら体勢を立て直す前に攻撃するべきね」
「そんな卑怯な手、この魔法少女メフィスト・アイズには必要ないよ!」
 前衛で戦うメイスンとルドウィクに当たらぬように『雷術』を使用。その攻撃がセレアナの体をかする。
「……あなた、迷っているわね。戦場に迷いを持ち込むとロクなことがないわよ?」
「そ、そんなことない! あの方の命令は、絶対。絶対……なのに、なぜ?」
「……あーもう! うだうだじれったいわね! そういうときは真っ直ぐ突っ走ればいいのよ!」
「真っ直ぐ、突っ走る?」
「手本見せてあげるから見てなさい!」
 そう言って、『封印解凍』を使用してから両腕を平行に伸ばし、そこらに転がっていたスチール缶(さっぱりしゅわっと紅茶サワー!味)を『サイコキネシス』で腕の間にセット。
「迷わず、突き進む奴は、これくらい! 速くて、強いのよ!」
 放たれるは、『レールガン』。
 バッチの効果でセレンの両腕に電流が流れる。
 電流の強さは増して行き、強力な電流がセレンの腕に十分に集まりスチール缶を電磁誘導で押し出す。
 その速さは目にも留まらない速度で恵の横を通り過ぎる。
 恵の仮面にヒビが入る。強烈過ぎるセレンの『レールガン』による攻撃の風圧に耐えられなかったのだ。
「これが、迷わない強さ……ヒーローの力……」
「ったく。目覚めさせるためだけに使うには、もったいなかったかな?」
「いいんじゃない、セレンらしくて」
「僕は、僕は……」
 迷う恵を遮って、鵜飼が喋りだす。
「カッカッカッ! 確かに、強力な攻撃じゃ。だがそう連発はできんじゃろう? それだけ膨大なエネルギー量を消費するのでは当然」
「そうね。でも私には自分の力があるし、パートナーだっているわ? 卑屈になる要素なんてどこにもないわよ!」
 自身の切り札を使っても尚戦う意思を見せ付けるセレン。
「そういうわけ。レールガンはまだ健在よ」
 セレンの横に並び立つセレアナ。二人とも疲弊しているはずなのに、露ほどもそれを感じさせない。
 その姿からは、諦めの言葉など見えはしない。
「ならば、打ち破って見せよ! この陣を! わしを! このパレスを! カッカッカッカッカッ!!」
「……遊びは終わりじゃけ、その首、もらいうける!」
「そろそろ終わらせてもらいますわ。他の美少年・美少女を探しに行かないと、ですから」
 圧倒的優位から、攻めの姿勢を緩めない三人。
 二人には『レールガン』がある。しかし、威力に見合う分だけの隙も生じる。
 そして今回は既にタネが割れている。『レールガン』の素振りを見せれば即座に潰されるだろう。
「20、いえ15。それだけ粘って頂戴」
「まっかせなさい! 一分だろうが一時間だろう一日だろう、一生だろうが守りきって見せるわ!」
「嬉しい言葉ね」
 セレアナが『レールガン』の態勢を取る。それを見た三人が一斉にセレアナに攻撃を集中させる。
「覚悟さえしとけば、何とかなるのよ!」
 猛攻を一人で耐え凌ぐセレン。弾丸、魔法、斬撃を打ち抜き打ち払う。まるで銃を両手に踊るように。
 だがセレンは気づく。あの巨大な剣を持った、重い斬撃がないことに。
「カッカッカッ! 悪いな、図らせてもらったぞ?」
「―――私に向けられていた斬撃は、魔力による風の刃!? やってくれたわね!?」
 セレンがセレアナに振り返ると、セレアナの首目掛けて走るメイスンの姿があった。
 もうここからでは間に合わない。
「セレアナッ!」
 セレンの叫びが木霊する。セレアナは一歩も動かない。
「聞こえているだろうに、まだ動じぬか、大したタマじゃけぇ」
「……」
「―――もらうっ!」
 己が剣を空間を断絶するかと思われるほどに振り上げ、次元を絶つが如く振り下ろす。首に吸い込まれるように。
 『レールガン』が間に合わない。
 そして、メイスンの剣が。
 止まる。
「……待ってたわよ、ヒーロー」
 振り下ろされたはずのメイスンの巨大な剣。それを受け止めたのはセレンではなく、セレアナでもなく。