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リアクション
ヒーローvsオリュンポスの戦いも熾烈を極めているものの、ヒーローたちがまたも歩を進める形でオリュンポス・パレスへと近づいていく。
その距離も大分縮まり、あと一歩というところまで来ていた。
だが、みすみすそれを見逃す怪人たちではない。三度目にして、ヒーローたちの快進撃を喰い止めるべく尽力するのだった。
「こちらベイリンだ。ヒーローサイドの猛攻の甲斐あってかオリュンポス・パレスはもう目前だ。あとは中にいる親玉を倒すだけ……ん?」
「今日のロケ弁はどこにあるんですー??! お腹ぺこぺこですよー!!」
「……さっき言っていた黒いもふもふ羊っぽいの、オリュンポス・パレス中へ入ってったな、あとで知らせておくか。それじゃヒーローと怪人の戦い、三戦目。ゆっくり見ていってくれ」
「ヤツはそこにいる! 皆、あと少しだ!」
『グオオオンッ!』
「油断は禁物だぞ! ヤツは何かを隠し持っているかも知れないからな!」
「そんなタマじゃないけど、そんなことは考えそうね、あの変人なら」
「いいの? それで」
「構わないわ、あいつが選んだ道だもの。まあ一度だけチャンスは与えてあげようかしら」
オリュンポス・パレスの眼前で話し合うのは、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)、龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)、高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)、ラブ・リトル(らぶ・りとる)の四人だ。
正義の塊と言っても過言ではないハーティオンがこの事態を見逃すはずは無かった。
「正義からは逃れられない! そう決まっているのだ!」
「その前に、いいかしら? 少しだけ言っておきたいことがあるから」
「ああ! 大丈夫だ!」
「それじゃ、遠慮なく」
「あーあんまり言い過ぎないようにね?」
「平気よ、ありのまましか言わないから」
そうして手に持っていたメガホンをオリュンポス・パレスにいるであろう、黒幕に向けて恐ろしい提案をする。
『あー、そこにいる謎ハデス、というか謎御雷。これが最後通告よ。最初からクライマックス全開で言うから耳の穴かっぽじって聞きなさい。
今すぐ、この馬鹿騒ぎをやめて謝るなら許してあげる。9割殺しで。けど、まだ続けるって言うなら「9割、9部、9厘」に擦り殺すわよ?
涅槃寂静ほどは生かしてあげるけどね。さあ、答えなさい』
メガホンのスイッチを切った鈿女。しかし一分、二分経っても返事は無い。
「……オーケー、あなたに相応しい罪状は決まったわ。みんなで皆殺しよ」
無言を肯定と受け止めた鈿女は紙を取り出して、なにやらサインを書き始めた。
「ねぇ鈿女、その紙なに?」
「くだらない文書よ? 『御雷が仮に事故で死んでも、一切の責任は本人にあります』っていうね」
「でもそれってさ、本人が書かなきゃいけないんじゃ」
「私に無言で返すってことは肯定なんだからいいのよ」
目が据わったまま話す鈿女に、恐怖を感じるラブ。
「そ、そっかー……今日がヤマだね。ここまで鈿女を怒らせたのが悪いよ。大丈夫、お線香の代わりにソーメン刺しておくから」
「もったいないわ、埃やら塵やらで十分よ」
「親族、ってこわ〜い……」
っくしょん!
「むっ、何か怖気がしたが、気のせいか?」
「説得は失敗だったようだな、残念だ……。こうなれば戦うほかあるまい!」
「失敗というか、失敗させたというか……」
『グォオオオオオン!』
「そうだな! 細かいことは別によいのだ! いざ、オリュンポス・パレスへ乗り込むぞー!」
「そうは、さっせないよー!」
『空飛ぶ魔法↑↑』を使って飛んできたのは、及川 翠(おいかわ・みどり)だ。今回の騒動をいつも通りのただの遊びと認識しており、ハデス側へとついていたのだ。
「うわーヒーローさんたちいっばいだね! すごいすごい!」
「ハデスさんの戯言に、よくもこれだけの人数が……」
「すごいんだが、バカらしいんだか……」
この騒動を見て、はしゃぐのはアリス・ウィリス(ありす・うぃりす)、呆れ返るのはミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)、ティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)の三人だ。
翠と一緒に遊ぶためにアリス、ただの付き添いとしてミリアとティナが来ていたのだ。
「少女諸君! そちらは危ない、早くこちらに来なさい!」
「ほら、ヒーローに心配されているわよ」
「無理も無いわね」
「まっけないよー! 出でよ【エリート怪人5人衆】!」
【特戦隊】を使用して、五人のモブ怪人よりも強いエリート怪人を呼び出した翠。更にモブ怪人も加わり数ではハーティオンたちを圧倒していた。
「私も指揮官としてがんばるよー!」
「私たちは、見物かしら?」
「遊びに来たわけじゃないからね、そうなるかなって、あれ? わたげうさぎがいない?」
いつもはティナと一緒にいる二匹のわたげうさぎがどこにもいないのだ。
「あっ、あそこ! あのロボットの足元!」
ミリアが指差した場所は、ハーティオンの足元付近だった。そこにわたげうさぎたちいた。
「大丈夫だ、怖くないぞ! さあこっちへ来るんだ!」
「だ、だめ! 今動いたらわたげうさぎが!」
ハーティオンが一歩踏み出したしまう。
「あっ」
ドスンッ!
ピュ〜――――――。
ハーティオンの踏み出した時の風圧で、わたげうさぎは飛んでいってしまった。
「あぁっ、わたげうさぎが!! ……あなたたち、覚悟は良いわね……!?」
「……動くなって言ったじゃない!?」
わたげうさぎを飛ばされたミリアとティナが戦闘態勢に入る。ミリアは【召喚獣:ヴァンディゴ】を二体召喚。
「そう、そのアクティブさでこちらに来るんだ!」
「いやいや、あのアクティブさで多分そのまま襲ってくるよ、ハーティオン……」
ラブの言うとおり四人の美少女怪人とエリート怪人とその他モブ怪人が一斉にハーティオンとドラゴランダー四人に飛び掛る。
「……そうか! この少女たちも操られているのか! ならば一刻も早く元凶を倒さねば!」
「前向きね……」
ラブがハーティオンを見ながらそう言う。
「わたげうさぎの仇!」
「やったのは私たちじゃないわ。あの生物はこちら側の責任で飛んだわけではないと思うけれど?」
「動かないでって言ったじゃない!」
「……これ以上何を言っても無駄ね。損でしかないわ、あとよろしく」
『グオオオオオオオオン』
下がった鈿女の代わりに現れたのは、ドラゴランダー。
「なんて大きさ、イコンクラスじゃないの!」
「それがデフォルトよ」
「ミリア!」
「……平気。こちらには数の有利がある。それに、この子たちだっているわ!」
【召喚獣:フェニックス】に【召喚獣:サンダーバード】を呼び起こすミリア。
ヴァンディゴ×2、フェニックス、サンダーバード。
対するは、
『グオオオ、グオオオオオオオオオンッ!!』
漆黒のメタリックボディを持つイコンクラスの大きさのドラゴランダー。本日二度目の怪獣大戦争勃発である。
「にしても、鈿女は攻撃に参加しないの?」
「そんな無駄なことしないわよ」
「無駄って」
「それに、これだけの戦力が揃ってて私に手出しの余地があるとは思えない。最後の説得もしたし、後は皆のフルパワーに任せるわ」
「あー、確かに……それなら私は、レクイエムを歌ってあげよう」
ゆっくりと『悲しみの歌』を歌い始める。それは謎ハデスへと捧げる最後の歌だった。
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