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リアクション
ヒーローたちの善戦もありオリュンポス・パレスに近づいたヒーロー軍だったが、その中間地点にてまたも怪人たちの攻撃を受けてしまう。
「着実にオリュンポス・パレスに近づくヒーロー一向! しかし、またも怪人たちが邪魔をする! 一体、どうなるのかー!? 実況はわたくし、黒乃 虎子(くろの・とらこ)でお送りしまーす! では第二戦線現場にいる、ベイリンさーん!」
「あーこちらベイリン・サヴェージ(べいりん・さべーじ)だ。こちらでは既に戦闘が始まっている模様だ。先の第一戦線同様、激しいバトルが繰り広げられそうだぞ。以上だ。そっちに返すぜ」
「ちょっと、ベルセー!? どこいったのー! ……あっ、失礼しました! 今回も激戦が予想されますね! あっただいま緊急ニュースが入ってまいりました。私のパートナーである黒羊郷 ベルセヴェランテ(こくようきょうの・べるせべらんて)が迷子となっておりますので、お見掛けした方は私までご一報くださーい!」
「それは黒色でもこもこして、頭に骨かぶってるやつか? それなら怪人側のほうでうろちょろしてたが」
「ホント? いま向かいまーす! それでは、ヒーローvs怪人のバトルを引き続きお楽しみ下さーい!」
「ギョギョッ、ここから先へは通行料が必要だ、ギョギョッ」
「キャラ付けが濃いヒール、とまでもいかないかな?」
対峙するのは、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)、アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)だ。
現在、アキュートはパートナーであるウーマ・ンボー(うーま・んぼー)を帽子としてかぶっている。
だけではなくマンボーっぽいものが付いたステッキを装備し、ブラックコートで決めている謎の風貌である。
「ギョギョッ、今の俺は怪人『ギョッ・マンボー』だ、ギョギョッ」
「いや、まあ。確かに怪しい人だけど、言わせてもらうよ。おまえ、それでいいのか?」
「ギョギョッ、大丈夫だ、問題ない、ギョギョッ」
「ダメみたいだね……こうなったらバッチの力で魔法少女に変身だ!」
ミルクルバッチを光りだす。九条の周りが光に包まれて、変身を果たす。
「みんなまとめてマックダウンホテルへあつまれ! 魔法少女、ろざりぃぬ! ここに推参!」
「ギョギョッ、……魔法少女のことはわからないが、多分パイプ椅子を持っている魔法少女はいない、ギョギョッ」
「さあ! 勝利のゴングはずるして騙して華麗に頂き! リングしょうかーん!」
九条がそう言うと、空からリングが降ってくる。
振ってきたリングに颯爽と上がる九条。これまたどこから取り出したのかわからないマイクを持ってアピールする。
「ついに、九条様がリングに帰ってきたぞ!」
周りの怪人たちが歓声を上げる。完全に観客になりきってこの戦いを見物するようだ。
「ギョギョッ、面白そうじゃねえか! ギョギョッ」
九条に誘われるようにしてリングに上がるアキュート、リングの上で瓶に入ったお酒を飲む。
「プロレスと聞いて飛んできました、フィーアでございます!」
いつの間にか飛んできたフィーア。即席の実況席と解説席を作っていた。
「実況・解説は僕、フィーア・四条。お飾り解説席には広有を座らせています!」
「それがし、いらないのでは……?」
「さあ、もうすぐ始まろうとしているリングの上にはヒーローと怪人が向き合っております。一方は美少女、一方は俺がヒールだ! といわんばかりのマンボウです!」
レフリー(モブ怪人)のチェックが入る。
「レフリーのチェックが終わったようです。ではゴングを鳴らしてください、広有!」
「は、はぁ……」
何がなにやらのまま、ゴングは鳴った。
二人とも動きはない。しかし、先に動いたのは意外にも九条だった。
「お互いに、いい勝負をしよう」
「ギョギョッ、悪くないじゃないか、ギョギョッ」
戦いが始まる前に握手から始める、なんとフェアプレー
「とうっ!」
「あーっと! 握手から一転、いきなり腕挫十字固に持っていったー! 外見からは想像できないラフプレーにギョッ・マンボーも成すすべなくマウントに転がる!」
「ギョギョッ、魔法少女のやることじゃないだろこれ!、ギョギョッ」
「鮮やかに決まりましたね……」
―――――いいぞー! もっとやったれー!
―――――汚いなさすが魔法少女きたない
「会場からはブーイングと歓声が一緒に押し寄せております! 誰が想像したのかこんな展開! ギョッ・マンボーはどうするのか!?」
「ギョギョッ、普通ならこれで終わりだろうが、もう一人いるんだぜ?、ギョギョッ」
被っていたマンボーハットが宙に舞い上がる。そして次の瞬間、強烈な閃光が辺り一帯を包む。
「ぐぅっ!?」
強烈な光から網膜を刺激され、腕挫十字固が緩まる。その隙を見逃さず、アキュートは脱出に成功。
「これは、マンボーから発せられる閃光、言うなれば『マンボーフラッシュ』を利用し、ろざりぃぬ選手の気を逸らして腕挫十字固から抜けた、巧妙なプレーです! この光ではレフリーも何があったかわからず、審判の下しようがありません!」
「いつの間にサングラスなんて……」
閃光の中でフィーアが叫ぶ。
次第に閃光の力が弱まっていく。ウーマ・ンボーもレフリーに気づかれる前にマンボーハットに戻る。
「成る程、一筋縄じゃいかないってことだね」
「ギョギョッ、もう簡単には取らせんがね、ギョギョッ」
「試合はリスタート。何がおきてもおかしくないこの状態、次は何が起こるのか! 起こすのか!」
九条は考える。サミング(簡単に言えば目付き)を狙うにはあのマンボーハットが邪魔すぎて上手く狙えない。外してしまえば逆に技をかけられるかもしれない。
そう、ここはフェアプレーでいくしか
「あーっと足が滑ったー!」
「ギョギョッ、ギョギョッ!?、ギョ、ギョッ……」
レフリーが割ってはいる。九条の足が、あくまで誤って滑ってしまい、故意でないものの、アキュートの股間部分へと当たってしまったのだ。
レフリーが警告に入る。
「いやぁ汗で滑っちゃいましてー」
九条は狙っていたのだ。レフリーが先ほどの閃光から未だ回復しきれない両目を、休ませることを。
「ギョギョッ、だっ大丈夫だ、問題ない、ギョギョッ」
(浅かったか……)
何とか立ち上がるアキュートに、頑張れーという声援が。
一方の九条には、堂々と戦えというブーイングにもっと攻めろーという歓声が上がる。
「……もういいよ。ラフプレーフェアプレーもない。この勝負は、そういうものじゃない」
「ギョギョッ、ほう、ギョギョッ」
「……あーっと、ここでまたしても握手を求めるろざりぃぬ選手! 信用できる要素が何一つ無いまま差し出された手! どうするギョッ・マンボー!」
「それがしなら断りますね」
「ギョギョッ、ふむ、ギョギョッ」
差し出された手を、アキュートは。
「握ったー! 何という紳士! 何という親切! ヒールではない、あなたこそリングの天使だ!」
「だけど、その甘さが命取りだよ!」
無条件に詰められた間合いを利用して、サミングを実行。
「ギョギョッ、なに、俺も無条件に飛び込んだわけじゃねえさ!、ギョギョッ」
「……! マンボーハットが!」
「ギョギョッ、いけ!、ギョギョッ」
マンボーハットは既に上空、そして降り注ぐは鱗の雨。
「これは、マンボウの鱗です! さながら『鱗カッター』! これを無数に撒き散らす極悪非道の攻撃だー! 天使などいない、今は悪魔が微笑む時代なのかー!?」
観客にも襲い掛かる鱗。レフリーも何とかするので手一杯。
「この程度でっ!」
「ギョギョッ、まだまだ!、ギョギョッ」
隠し持っていたマンボーステッキを取り出した、回転しながら突撃。
華麗なステッキ捌きとダイナミック体捌きで、九条を翻弄する。
「ウ〜〜ッ、マンボォォ!」
同時に、爆発が起こり、羽が舞い散る。
「謎の爆発、謎羽が舞い散る! マンボーステッキを装備し、ブラックコートを翻しながらスタイリッシュに戦う姿はまさに怪人!」
「ぐぅ……!」
「ギョギョッ、これなら、帰って飲むコーヒーは格別だな。濃いヤツがいい、とびっきりな……、ギョギョッ」
ステッキをしまおうとするアキュート、だが九条がその手を掴む。
「ギョギョッ、三度目の握手か? 今度は何をしてくれる?、ギョギョッ」
「……何もしないよ、言ったでしょ? ズルして騙して頂きだって」
ぱっと手を離し、そのまま倒れこむ九条。何もないことにただのプラフだと思い込むアキュート。この時点で勝敗は決した。
カンカンカンカンカーン!
「ギョギョッ、ゴングにはまだ早いぜ?、ギョギョッ」
「……負けですよ、ギョッ・マンボー。あなたの反則負けでね」
「ギョギョッ、……ステッキか!、ギョギョッ」
武器による攻撃、そう判断したレフリーが下した判定はアキュートの反則負け。
最後の最後で、九条に裏をかかれたのだ。
「ギョギョッ、やられたか……。だが、ただじゃすまさねえ!、ギョギョッ」
飛び上がるアキュート。飛び上がった先でマンボーハットを巨大化して最後の攻撃を仕掛ける。
「ギョギョッ、ハデス、俺はここまでだ。お前は世界を手に入れろよ……、ギョギョッ」
『ギガマンボースラッシュ』。決死のダイブによる最大の攻撃、自身へのダメージも深刻な最終奥義。
リングが揺れる、その揺れから考えられるダメージの量は致死量必死。これに対して九条は。
「いやぁ、お水がうまいねぇ」
リング外で水を飲んでいた。試合は終わったものと考えてリングの外で水を飲んでいたのだ。
「ギョギョッ、……コーヒー、飲みてえな、ギョギョッ」
8分56秒 ○魔法少女ろざりぃぬ 反則負け ×怪人 ギョ・マンボー
こうしてリング上の戦いは正統派魔法少女に軍配が上がったのだ。
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