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リアクション
「正義のヒーローとイコンはどこですか〜、ブっ飛ばしてやりますっ♪」
「私もお手伝いするのですー!」
「ご主人様……じゃなくてハデス博士の世界征服の邪魔はさせません!」
可愛いながらも言っている台詞はおっかなく、更に巨大化までしているのは一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)、一瀬 真鈴(いちのせ・まりん)、そして謎ハデスのパートナーであるヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)だ。
オリュンポス・パレスに進入させぬように、こうしてイコンクラスに巨大化して鼠一匹通さぬように最初から全力で来ていた。
その後ろでは煌びやかなステージが組まれていた。その真ん中に二人の人物がいる。
神崎 輝(かんざき・ひかる)、シエル・セアーズ(しえる・せあーず)の二人。セイレーンを思わせるような衣装を着てマイクをスタンバイさせている。
「ステージができるまで、近づけさせないでくださいねー! 三人とも〜!」
「頼みますよー! 守れたら、バックソングが付くからねー!」
巨大化している三人にエールを送る二人。
そこに現われたヒーローたち。
「これは、でかいな」
「でかいな、冗談抜きに」
「でかいねー!」
イコンクラスのでっかい少女たちに声を同じくして言うのは、匿名 某(とくな・なにがし)、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)、飛鳥 桜(あすか・さくら)の三人だ。
他のヒーローたちとは別行動をしていて、この巨大化三人組にぶち当たったのだ。
あまりの大きさ、しかしその可愛さから手出しが出来ない三人を見つけヘスティアが叫ぶ。
「むっ、ヒーローさんたちですね! ここから先は通れませんよ!」
「そうは言ってもな、通らせてもらわないと」
「ヒーローさんは〜皆倒しですよー!」
「おっかないことを」
「巨大化した私たちの前に敵はいないよ!」
「見えないの間違いじゃない?」
それぞれの言葉に対しての返答。しばし続けられた問答だったが、しびれを切らしたヘスティアが遂に行動に打って出る。
「最早言葉は不要です! 行きます!」
ヘスティアは【六連ミサイルポッド】を射出、それに合わせて真鈴も【六連ミサイルポッド】を同時に射出。大型ミサイルと化した攻撃が三人を襲う。
「いやはや、これは骨が折れる!」
「数でこようがでかさでこようが! ここで負けるようじゃ、誰かの荷物を抱えることもできねぇ!」
「この世にヒーローがいる限り、悪が栄えた試しはない! 君たちの野望、打ち砕かせてもらうよ!」
ミサイルをものともせず、盛大な爆発をひょいひょいっとかわす三人。
「でかい敵には足元からの攻撃が有効だ!」
「わかってるさ!」
「……待って!」
飛鳥が叫ぶ。その声を聞いて、体を止めて、後ろに下がる二人。
「一体どうしたんだ?」
「足元はだめだよ! だって見て!」
「んあ?」
某と康之が三人の巨大化娘を見る。特に変わったところはない。
「あんなにでかくても女の子、その足元に入るってことはスカートの下にはいることになる! そんなのだめだよ!」
「いや、そうは言うが近づかないと攻撃できないぞ?」
「あー、大丈夫ですよ! こんなこともあろうかと、下にはスパッツをはいてきています!」
「同じくです!」
「ヘスティアもです!」
そう言って特大のVサインをする三人。
「ならOK!」
「何なんだよ!」
そう突っ込む某。しかしこれでなんとか近づける手はずは整った。
「さあ、仕切り直しだな。全力で戦わせてもらう!」
「同じくだぜ!」
二人のミラクルバッチが光りだす。
「行くぞ、デスティニィィィ! ……運命を切り開く、そのためにも! ザ・デスディニー! 行きます!」
「怪人だろうが何だろうが、誰かを泣かせるモンがいるなら……ザ・トライアンフ! ぶった斬らせてもらう!」
「おおー! 二人ともかっこいー!」
変身した二人を見て、飛び跳ねながら感想を言う飛鳥。
「変身ヒーローなら! 全力を使わざるを得ません! ミサイルポッド、全弾射出します!」
「こっちもいきますよー!」
「いつもは接近戦んだけど、今回は私もミサイル参加ー!」
ミサイルパーティーだ! と言わんばかりに、三人に大型のミサイルが襲い来る。
「確かに、その大きさは驚異的。だけど!」
「的がでかけりゃその分迎撃しやすいってもんだぜ!」
「おまけに、もう一つ特殊なことが起きるんだよ!」
某が『レジェンドストライク』、康之が『ゴッドスピード』と『金剛力』を併用してからの『なぎ払い』、飛鳥は『爆炎波』を使い次々とミサイルを破壊する。
更に、大型化したミサイルの爆発は他のミサイルを誘爆させる。あれだけあったミサイルが、あっという間に辺りからなくなった。
「こ、これだけの煙があると辺りが見えません!」
「これがもう一つの特殊なこと!」
「くっそ〜! 謀りましたね、ヒーロー!」
爆発後の煙が小さなヒーローたちを隠してしまい、三人は目標を見失う。あたふたとする三人だが、ヘスティアが康之を見つける。
「そ、そこですか!? 撃ちます!」
「あっ、待って下さいヘスティアさん! そっちは……!」
瑞樹の制止は遅く、ミサイルは放たれてしまう。
「悪いが、もう少し謀らせてもらうぜ!」
『ゴットスピード』を使っている康之は即座に戦線を離脱。目標を見失ったミサイルはそのままオリュンポス・パレスへ向かい、爆発。
「ああっ! ご主人様のお城が!」
ミサイルを受けたオリュンポス・パレスだったが、何とか持ちこたえていた。
「よ、良かったです……」
「ヘスティアさん、一回落ち着きましょう」
「そうですよ。焦ることはありませんよー!」
瑞樹と真鈴がヘスティアを落ち着かせる。
「その隙、もらった!」
「決めさせてもらう!」
「ヒーローの前に悪はなし! だよ!」
攻撃の手を緩めない三人。本来であれば、ここで決まっているか、来週へ続くのだろうが、まだまだ終わりはしない。
「これ以上!」
「やらせはしないよ!」
そう叫ぶのは輝とシエル。ようやくステージの準備が整い、歌う態勢が整ったのだ。
「ヒーローさんたちは大人しくっ!」
「サイリウムでも振りながらっ!」
「ボクの……」「私の……」
「「歌を聴けーっ♪」」
その言葉と共に、二人がライトアップされる。
そして二人は歌いだす。ヘスティア、瑞樹、真鈴の三人には応援歌となり、某、康之、飛鳥の三人には鎮魂歌となる。
まるでセイレーンを思わせる歌声に、闘志を燃やす三人。
「よおし! 頑張ります!」
「私は今まで通り、接近戦です!」
「私は【リントヴルム】で攻撃です!」
歌を聴いた三人はそれまで以上の力を発揮。
それもそのはず、輝とシエルが歌っている歌にはベースとして『熱狂』、『震える魂』、『怒りの歌』が組み込まれており、三人をパワーアップさせる効果も備えていたのだ。
「〜♪」
「〜♪」
華麗に、煌びやかに歌い続ける二人。今にもサイリウムでの光の波が再現されそうだ。
「これは、劣勢だな」
「まさか後ろの二人が、あんなに歌が上手いとはなっ」
「それもあるが、そうじゃないだろう!」
「まあまあ、ヒーローが劣勢になるのはよくあること。それは逆転のチャンスでもある」
「何か秘策があるのか? こんな泥だらけの俺たちに」
「当たり前だよ! だって僕はまだ、変身してないもん」
飛鳥の言うとおり、彼女はまだ変身していない。それが彼女の言う秘策だ。
「それに、あんなに歌われたら、こっちも黙っていられないよ!」
「何を言って……?」
「さあ、イッツ! ヒーローターイム!」
掛け声と共に飛鳥の周りを桜吹雪が舞う。その桜吹雪が舞い落ちたとき現われたのは、セイレーンと対する歌姫、そしてヒーロー。
「正義と自由のアイドルヒーロー! チェリーブロッサム! 悪の秘密結社には負けられないよ!」
「こ、こいつは驚きだな」
某が目を見開いて驚いている。相手だけではなく、こちらも歌を歌って戦うことになるとは夢にも思っていなかったからだ。
「セイレーンたち! 君たちには負けられない、ヒーローとしても! 歌う者としても!」
「〜♪ ……素敵です! まさかこんなバトルができるなんて、素敵です!」
「受けてたつよー! 歌姫頂上決定戦、負けるわけにはっ!」
「こっちだって伊達にヒーローやってるんじゃないんだよ!
さあ、正義の光でlock−on、君たちの悪事をJudgement!」
「ボクたちの!」
「僕の!」
「「「歌を聴けーっ!」」」
こうして始まる歌の三重奏。辺り一体には三人の歌が響き渡る。
最初こそ互角だったものの、徐々に飛鳥の歌声が周りを包み始める。
「そんな、どうしてですか!」
「負けてるなんて、そんな!」
「ふっふっふ、私には仲間からもらった、これがあるから!」
そうして取り出したのは。
鐘。
「鐘さ☆」
「だからなんですかー!」「だからなんだー!」「だからどうした!」
輝とシエル、味方である某まで叫ぶ。しかし、あながち間違いではなかった。
大きな鐘は飛鳥の歌声を反響させ、遠くまで響かせていた。ミラクルバッチでヒーローに変身した飛鳥の声と鐘の反響効果により二人の歌声を僅かに上回っていたのだ!
「さあ、二人とも! 僕の歌に合わせて踊って!」
「あ、ああ!」
「戦場に響き渡る歌声に乗せて、踊り戦うぜ!」
鼓舞されるように二人は駆け出す。その速さは、先ほどよりも増して風を切る。
「ボクたちだって負けないんだから! 三人とも頑張って!」
「了解ですっ!」
「【リンドブルム】はまだまだあるよー!」
「接近戦だってお茶の子さいさい!」
それを迎撃しようとヘスティア、瑞樹、真鈴。ミサイルポッドと、【リンドブルム】、それを掻い潜って来る瑞樹の『乱撃ソニックブレード』。
だが、二人は怖気ず果敢に前へ前へと行く。
「俺たちは、切り開く者。その俺たちがここで立ち止ってちゃ意味がない!」
「何があろうと突き進んで、ぶった斬る! 何より今のオレたちには」
「「歌がある!」」
後ろでは必殺技『ファイナルリュングベル』、鐘を大きく振りかぶり数多の怪人をホームランしながら歌う飛鳥がいた。
『一人じゃハーモニーなんて奏でれない! それぞれの音、集まれば響き合うっ』
流れて行く歌詞と同じように、モブ怪人たちも吹き飛ばされていく。
『青空からビートが聴こえてきたら それが合図だっ!』
「「『It’s Showtime!!』」」
歌詞と同時に【氷雪比翼】で飛び上がった飛鳥が、氷の羽と光術の矢まるで演出のように飛ばす『ビック・ティンバー』で攻撃する。
歌詞も知らないはずの某と康之も、ノリだけでその言葉を紡ぐ。
『鳴らして! 君だけの音 かっこ悪くたっていいんじゃない?』
「そうだ! 俺たちは英雄ってガラじゃない、それでも泥だらけになっても守りたいものがある!」
『その位がちょうどいいんだよ この共鳴がその証拠』
「わかるぜ! 他のヒーローたちも頑張ってるんだってな! ならオレたちだって負けちゃいられない!」
土だらけになった二人、それでも膝を折らずに巨大化した相手に一歩も退かない。それどころか追い詰めていく。
「こ、この強さは予想外です!」
「巨大化したのに押されるなんてー!」
「聞いていませんよー!?」
二人のヒーローのオーラに圧倒されてしまう三人。後ろで歌う輝とシエルの歌声の効果も徐々に弱まっていく。
『僕たちだけの旋律 ほら、広がっていくー! ……これが僕の、僕たちの!』
「「「『BEAT』だ!」」」
飛鳥が歌い終わると同時に、二人の猛攻も終わる。巨大化した三人娘は尻餅をついていた。飛鳥の歌声でパワーアップした二人が何とか場を制したのだ。
「ふぅ、何とかなったな」
「それもこれも、あの歌のおかげだな」
「二人ともー! 僕の歌ー、聞こえてたー?」
「ああ、いい歌だったよ。掛け値なしに」
「二人もかっこ強かったよー、それじゃ勝利の合図!」
三人は向かい合って、右手を天に突き上げる。そして笑いあう。
しかし、それも束の間。不穏な影が三人を狙っていた。
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