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リアクション
――同時リングアウトにより、空になったリング上。
通常ならばこの後入場してくるのは一組であるが、この異例の事態に二組同時の入場が決定した。
一方はセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)のタッグ。もう一方は次百 姫星(つぐもも・きらら)と鬼道 真姫(きどう・まき)のタッグである。
そして、ガントレットマッチ参加者の残りも二組。実質これが決勝戦。勝ち残り戦、というよりタッグマッチになっていた。
先鋒はセレンフィリティと姫星。この試合は、先程とは打って変わった白熱した物となっていた。
「ほらほら行くわよぉッ!」
セレンフィリティが姫星にエルボーやキックといった打撃を叩きこむ。
「っくぅ!」
その打撃を、姫星は胸を張って耐える。
「ったく……随分固いわね! 絶壁なのは胸だけにしときなさいっての全く!」
打撃に怯む様子が無い姫星に、セレンフィリティが毒づく。
「ふふーん、そう簡単にはやられませんよー?」
かなりの打撃を叩きこんだはずだが、姫星は効いた様子が見られない。実際、姫星は【竜鱗化】【歴戦の防御術】といったスキルで防御力の強化を図っていた為打撃の効果は薄かった。
「こっちも行きますよー!」
姫星がセレンフィリティを捕らえて抱え上げるとボディスラムで投げる。叩きつける、というより転がすという印象が強かった。
「さぁて、反撃開始です!」
そのまま追い打ちをかけようとする姫星。だが、
「せぇッ!」
「うわっ!?」
背後から、いつの間にかリングに入ってきたセレアナのキックが放たれた。
「何するんですかいきなり入ってきて!」
「あら、ルール上反則じゃないでしょう? セレン、合わせて!」
「おっけー!」
姫星がセレアナに気を取られている内に、セレンフィリティは立ち上がっていた。セレアナの合図とともに、二人が同時に跳び上がり延髄切りが放たれる。顔面、後頭部を挟むように蹴られ、流石に姫星の身体が揺らぐ。
『セレンフィリティ、セレアナ組のサンドイッチ式延髄切り炸裂! 姫星選手溜まらずダウンしました!』
この一撃で流れを掴んだのか、セレンフィリティとセレアナが攻めに転じる。
セレアナが状況に応じてセレンフィリティにタッチや連携を指示し、姫星にダメージを与えていく。
一方的に攻め立てるのではなく、ある程度隙を作り反撃させるのだが、直後に二人の連携プレイで姫星に反撃のペースをつかませない。
スキルを用いているとはいえ、こうなると徐々にダメージは溜まっていく。姫星が捕まる場面が目立つようになってきた。
「ほら姫星ー! しっかりしろー!」
自軍コーナーで、真姫は姫星に檄を飛ばす。姫星はタッチに行こうとするが、中々セレンフィリティ達の手から逃れられないでいた。
「行くわよ! ブレーンバスター!」
セレンフィリティが姫星を高々と掲げ、滞空時間を取りながら叩きつける。
「あうっ!」
叩きつけられた姫星の口から悲鳴のような物が漏れる。そのままセレンフィリティが姫星を捕らえ、コーナーまで連れて行きセレアナとタッチ。試合権が移る。
「そぉれっ!」
セレンフィリティが一発、姫星の頭をコーナーに叩きつける。よろける姫星を、セレアナがジャーマンの形で捕らえる。だが姫星も腰を落として耐える。
「セレアナ、そのまま捕らえててよ!」
「え、何する気?」
「ふっふっふ、合体技よ!」
そう言うと、セレンフィリティはセレアナをジャーマンの体勢に捕らえる。眉山という、パートナーごとジャーマンで放り投げる技である。
「行くわよ!」
セレンフィリティが力を込める。それと同時にセレアナも力を込め、姫星を持ち上げる。
「そう、やられっぱなしじゃないですよ!」
だが投げられる瞬間、姫星が自身の尻尾でセレアナをはたいてクラッチの手を緩めさせると、反転して身体を浴びせる。
「え!?」
突然の反撃にセレアナがバランスを崩す。
「え、なにちょ……きゃあっ!」
セレアナがバランスを崩したことにより、セレンフィリティも体勢が崩れ、二人分の体重に押し潰された。
「ったた……せ、セレン大丈夫!?」
「あ、あう……だ、だいじょばない……」
セレアナが駆け寄るが、中々起き上がれないセレンフィリティ。眉山失敗のダメージは大きそうだ。
「真姫さん!」
「おう!」
その隙に、コーナーから伸ばす真姫の手に飛びつく様に姫星がタッチを交わす。試合権利は真姫になる。
「やぁっとあたしの出番だよ! 楽しませてもらうか……せぇッ!」
試合権利を得た真姫は、セレアナにフックを叩きこむ。
「っつぅ……痛いわねッ!」
お返しと、セレアナはミドルキックを真姫の身体に叩きこんだ。
「いいねぇ! せぇッ!」
そして真姫が再度、フックを。その次はセレアナがミドル。そして真姫がフック。
同じ打撃ではあるが、真姫は拳を。セレアナは足技を主体とした攻撃の応酬が続く。
お互い意地を見せ、一歩も引かず繰り返す技の応酬。それを最初に崩したのはセレアナであった。
「せぇいッ!」
ミドルキックを一撃当て、更に間を置かずにローキックも交え二度、三度と連続して叩き込む。
パターン化した攻撃を崩し、自分のペースへと持っていこうという策であった。そのままセレアナは真姫を投げ技に持っていこうと捕らえようとする。だが、
「甘い!」
真姫のジャブが、セレアナの顎を捕らえる。そのままジャブ、フックとコンビネーションを繋ぎ、
「ふっ!」
トドメのボクシング仕込みの強烈なボディブローが、セレアナの身体を貫く。
「ぐは……ッ!」
セレアナの動きが止まる。真姫は手を休めず、セレアナを捕らえると大きく抱え上げる。
「そぉれっと!」
そしてボディスラムで叩きつける。高い位置から落とされ叩きつけられたセレアナの身体が跳ねる。
更に真姫の手は休まらない。起き上がろうとうつ伏せになるセレアナを捕らえると、彼女の膝裏に乗り吊り天井の様に体を反らす。だが吊り天井とは違い、真姫はセレアナの顎を掴み、自身の膝を彼女の背骨に当て弓の様に絞り上げる。カベルナリアというストレッチ技である。
「ぐ……あ……」
背骨に食い込む膝。軋む身体にセレアナの腕がだらりと下がった。
「こぉの……人の恋人に何してくれてんのよぉッ!」
ダメージが回復したのか、セレンフィリティがカットに入ろうとするが、
「させませんよっ!」
カウンターで姫星のスピアーが決まる。セレンフィリティの鳩尾を衝撃が貫き、場外へとエスケープ。
一方、セレアナはと言うと苦悶の表情で呻き声を漏らしつつも、ギブアップは決してしないと技を抜けようともがく。その様子に、真姫は笑みを浮かべると自ら技を解いた。
「ならこいつはどうかね!?」
セレアナを引き起こすと、真姫は喉輪で首を掴むともう片方の手を背に添える。真姫はセレアナを高々と掲げ上げ、
「でぇやぁッ!」
後頭部から勢い良く喉輪落としで叩きつけた。
「さぁて、行くよ姫星!」
コーナーまでぐったりとしたセレアナを引き連れ、真姫が姫星とタッチ。
「はい! 行きますよ真姫さん!」
リングに入った姫星がセレアナを捕らえると、パワーボムで持ち上げる。
持ち上げた先には、コーナーに上がった真姫が待ち受けている。再度セレアナを喉輪で捕らえる。
「行くぜぇツープラトン!」
「行きますよぉ!」
姫星がパワーボムを落とすタイミングに合わせ、真姫がコーナーを飛び更に勢いをつける。姫星のパワーボムと真姫の雪崩式喉輪落としの合わせ技、喉輪ボムである。
「あぅッ!」
叩きつけられたセレアナの口から、悲鳴のような声が漏れる。そのまま姫星が叩きつけた体勢で抑え込む。
「ちょ、どきなさいよあんた!」
「悪いね、そうもいかないんだ」
セレンフィリティがカットに入ろうとするも、真姫が押さえている為適わない。動けないセレアナの横でカウントは進み、3度リングが叩かれ試合終了のゴングが鳴り響いた。
『試合終了のゴングが鳴り響く! ガントレットマッチルール、波乱の展開を繰り広げましたが最後は真剣勝負! 本日最後の試合を姫星、真姫選手がパワーボムと喉輪落としを複合させたタッグ技で勝ち残りました! さて、過激で白熱したプロレスの試合をお届けしました。全ての試合は終わりましたが、イベントはまだ終わりません。この後温泉で行われるイベントをお楽しみに!』
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