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リアクション
残すフラッグも残り一つとなり、その最後の戦場であるBフラッグ地点では契約者たちがフラッグを目指していた。
「今のところ敵に動きはないけど、それが逆に不気味だ」
「だいじょーぶだいじょーぶ! さっきうちあわせたとおりやればおーっけーだよ!」
「そうよまことん。そーたんの完璧な作戦があれば大丈夫よ」
一番先頭を走るのは椎名 真(しいな・まこと)、彼方 蒼(かなた・そう)、お料理メモ 『四季の旬・仁の味』(おりょうりめも・しきのしゅんじんのみ)の三人。
「ち、千百合ちゃん……いる?」
「すぐ傍にいるよ、平気」
真たちから少し離れて冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)、冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)の二人。
「にしても、本当に入り組んでるわね。地形を把握してないとこりゃ泣くことになるわ」
「そうならないように頼むわよ」
「お二人とも、余裕があるんだね。俺も頑張らないと」
最後方にはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)、それにレオナーズ・アーズナック(れおなーず・あーずなっく)の三人。
地形が地形なため、バラバラに行動するメリットがないためこうして固まって動いていたのだ。
「ちょっとストーップ! ……行き止まりがある地点を確認したわ。どうやらこのまま道なりに進めばつくみたい」
「いよいよですね。みなさん、先ほどの蒼の作戦もあるので俺たち三人は機動兵器の足止めをします」
「わ、私もその……あんまり早く動けないので、後方支援を……」
「了解、なら私たち二人はオフェンスね」
「俺もオフェンスに加わるよ。フラッグの奪取は任せるけどね」
真たち、日奈々たちが機動兵器の足止め担当のディフェンス、セレンたち及びレオナーズがフラッグを奪取するオフェンスに分かれることになる。
「よし、急ごう。制限時間もかなり押し迫ってるみたいだし」
「それじゃーれっつごー」
「おー!」
「……待って! その曲がり角の向こう側は普通よりも道が広くなってる、ってことはつまり」
『機動兵器が待機してるのには持ってこいってなぁ!』
セレンの予感、敵の待ち伏せがあるかもしれないという考えは的中した。
曲がり角から現れたのは強行型に乗るエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)だ。
通路が広がる一番最初の曲がり角で待機して、強襲の機会を待っていたのだ。
「あ、わわわあわっ!」
「蒼っ! 下がれ!」
突然の出来事に慌てる蒼。すぐさまフォローに入る真。
『こいつは挨拶代わりだ! おらよ!』
武装に指定したハンドガンの特性である取り回しの良さを行かして、飛び出した状態からすぐさま狙いを付けて撃つ。
「この程度っ!」
蒼抱えながら全弾かわし切る真だったが、エヴァルトも攻撃の手を緩めない。
『挨拶代わり、って言ったろ? こっちが本命だ!』
突き出されるブレード、がそれも空を切る。真は『歴戦の飛翔術』を使いつつ、壁を蹴り何とか回避に成功したのだ。
「……この狭さだと、あのブレードが長く感じる」
「にーちゃん!? 平気?」
「まことん、大丈夫!?」
「ええ、掠った程度ですから問題はありません。しかし、設置するより先に出会ってしまうとは、ってセレンさんたちは」
「私たちはオフェンスだからって、まことんが戦ってる間に足元を通っていったけど?」
「……すごい度胸だな」
そう言われた本人であるセレンは既にエヴァルトを差し置き、フラッグへと向かっていた。
「とりあえずあの機体は任せて、私たちは先行することにしましょう」
「どうせなら挟み撃ちの方がいいんじゃなくて?」
「思ったより時間が足りないのよ!」
「とりあえずあそこを曲がって」
セレン、セレアナ、レオナーズ急いで曲がり角に差し掛かる。そう、曲がり角に。
『焦りからか、先ほどあったのだから同じことはすぐには起きないと判断したからかはわからないが、命取りだなっ!』
「うそっ!? もう一機!」
「……してやられたわね」
次の曲がり角でも伏兵がいたのだ。曲がり角待機しており、牙を向いたのは夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)、阿部 勇(あべ・いさむ)が乗り込む偵察型機動兵器。
「まさかもう一機いるなんて……だけど、今度こそ挟み撃ちできるよ! 幸いにも敵が持ってる武器はショットガンだけ……」
『それを補うため、ここに射撃型がいるのです』
「あ、あっちにも!?」
甚五郎がいた曲がり角を曲がった通路の一番奥、そこにはブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)、ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が乗り込む射撃型機動兵器。
思いもよらぬ三機による巧妙な陣形、策。これにより、契約者側は進行を停止。
動揺している契約者たちに向けて迷いなくライフルの一撃を見舞うブリジット。
「おおーさすがブリジット! 見事な狙撃ですねー」
「本当は敵から視認されない位置にいたかったのですが、ここには天井がある。苦肉の策として、比較的距離が長いこの通路で応戦することにしました」
『さあこい! 気合を入れてかかってくるがいい!』
甚五郎が己に活を入れながら未だ態勢が立て直せない三人にショットガンの弾をばらまく。
「くぅー! ここまでいいようにやられるなんてー!」
「機動兵器が、機動せず定点に止まるなんて、考えもしなかった」
「考える前に、ここは一旦引きましょう。この陣形はそう簡単に崩すことはできないわ」
「……そうね。レオナーズ!」
「言われなくても引くって!」
甚五郎機とブリジット機の攻撃を潜り抜けつつ、下がりつつも甚五郎の乗る機体に攻撃を仕掛けて少しでもダメージを蓄積させる三人。
「ふむ、やはりダメージは避けて通れぬか」
「とりあえず、偵察型のメリット。試してみましょうか」
勇が操作を開始。偵察型の能力、修復を自機に使用して先ほど負ったダメージの回復を試みる。
「……完全に機能しているようではなさそうですが、応急処置程度には使えそうですね」
「使えるだけマシと考えれば良いほうだろう」
「ええ。あとは制限時間までここに留まり、フラッグの奪取を阻止できれば完璧ですね」
「だが相手は多数。……油断はせぬようにな!」
修復を使用してダメージをある程度軽減した甚五郎からは遠くはなれ、エヴァルトがいた地点まで戻ってきた三人。
『あらら、戻ってきたのか? 一体何があったんだか』
「セレンさん? どうしてお戻りに?」
「向こうにも待ち伏せがいたわ。それも二機。三人で突破が困難と判断して、一旦戻ってきたって訳」
「……このまま全員で一機ずつ倒していくのは可能ですが、それでは時間が足りませんね」
困り果てたような声を出す真。セレンも如何するべきか、唸っている。
「策ならあるわ。さっきのあなたのところの子の案主軸としてね」
しかし、セレアナに策あり。表情は変えないまま、みんなを集めるセレアナ。
『おいおい、秘密話なら俺も混ぜてくれよ』
「あのぅ……そのぅ……た、タイムでお願いします…」
『……まあレディがそういうのなら仕方ないか』
日奈々の精一杯の訴えが、紳士なエヴァルトに通じ契約者側はセレアナが考えて策を聞く。
「す、すごい大胆ですね」
「でも迷ってる暇はない、それで押し切るしかないわね」
「ち、千百合ちゃん……」
「ええ。私と日奈々はそこの機動兵器を担当する。そこから先は任せるわ」
「了解しました」
「了解っ!」
満場一致でセレアナの策を実行することに決まった。ここから契約者側の逆襲が始まる。
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