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対決、狂気かるた!

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対決、狂気かるた!

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「6回戦、海京かるた会 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)さん対イルミンスールかるた会涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)さん。前に出て下さい」

 博識と召喚者の知識、歴戦の獲得術を併用し、カルタの決まり文字やクトゥルフ神話の知識を活かしすばやく目的の札を獲得していく涼介。

「やっぱ普通のかるたとはちょっと勝手が違うか」

 札の位置を記憶術を完全に把握しているコハクでも、博識と召喚者の知識、歴戦の獲得術の応用で挑んで来る涼介に関心を抱く。

「札の位置を把握している分、やっぱ迷いが少ないな」

 最低限の動きで札を奪いに来るコハクに、コハクと同じように一筋縄ではいかないように涼介は感じる。

「……しらつゆ」

―――スパァァン

「つらぬきとめぬ たまぞちりける」

 僅差の差で涼介が最後の札を奪い、発狂判定となる。

「あっ」

 コハクが振るったサイコロの合計値は僅かに下であった。

「ぼ、僕は『女の子の体のヒミツ』を借ります!」

 発狂を防ぐコハク。

「私はこのエイボンの書で」

 涼介はパートナーのエイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)の禁書を使い、狂気を受け流した。

「コハクさん、涼介さん共に正常! よってかるたの勝者である涼介さんは第二試合へ、敗者であるコハクさんは敗者復活へコマを進めます」

 退場していくコハクと涼介。

「7回戦、海京かるた会 ソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)さん対イルミンスールかるた会 秋月 葵(あきづき・あおい)さん。前に出て下さい」

 特設会場に上って来た葵はやや不機嫌であった。

「大会に向けての特訓は良いけど……危うく試合前に正気度がリミットブレイクする所だったじゃない」

 大会前にフォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)が葵に本番に備えてと、自らのコレクションの魔道書からクトゥルフ神話の知識を教えていた所、葵の正気度はガンガン擦り減っていった。
 実際ギリギリの所で踏み止まっている状態である。

「最後まであちらは持つのかしら? ふふ」

 発狂するのは精神の影響を受けやすい生身の種族だけで、機械である機晶姫には通用しないとタカをくくっているソフィア。
 コンピュータを起動させ、処理探索モードに入る。

「……やまが」

―――パシュ!

 決まり字のみで札を取りに行ったソフィア。

「ながれもあえぬ もみじなりけり」
「正解ですわね」
「こ、このまま素直に負けを認めてたまるもんか」

 次こそは自分が札を取ってやると気合を入れる葵。

「がらすどの そとすつきよ」

―――ばんっ

「ま、負けらんないのっ」

 発狂寸前な葵はフォンに叩きこまれた知識をフル活用して、下の句である『ランプのかげの うつりて見えず』を取りにいった。

「ランプのかげの うつりて見えず」
「よしっ」

 始めのうちはソフィアが有利に試合を運んで行ったが、最後の最後で葵が逆転して勝利する。
 発狂判定ではソフィアは狂気を耐え、葵はドキドキしながらサイコロを振った。

「同値なら多分大丈夫なハズ。どうか2が出て!」

 祈りながら目をゆっくり開くと、そこには6・6が出ていた。

「そ、そん……な」

 がっくり項垂れていると、手をついた場所が水に沈んで行く。
 はっとするが、どんどん水に沈んで行く。

―――こぽぽ……

 全身が水に包まれる。
 息が出来ないように思えるが、それよりもこのまま溶けていきたく感じる。

「溶けよう……心の解放……しない、と」

 意識が沈んで行く。
 透明だった水はいつのまにか黒いどよんだ粘りの強い水質へと変わっていた。