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リアクション
プロローグ 狂い始めたモノ、あるいは予測されたモノ
ドニアザードの村。
そう呼ばれるこの村に、ドニアザードの名を持つ者は二人いる。
部族の長であるドニアザードと、次代のドニアザード……すなわち、シェヘラザードの幼馴染であるドニアザードである。
そのうち……長である方のドニアザードは、暗い地下の奥……迷宮のように入り組んだ場所の、最奥に横たわっていた。
それを囲むのは部族の精鋭達と……その静かなざわめき。
「信じられぬ……本当に、あの水晶の骨と融合するとは……」
「しかし、これは……」
彼等の目の前で起こった光景は、酷く単純だ。
長は自らを殺し、安置されていた水晶の骨に倒れこんだ。
ただ、それだけの話だ。
それだけで水晶の骨は長の血肉を纏い、そこに本来あった骨格を消し去り入れ替わった。
長の側から見れば骨を入れ替えた。
骨の側から見れば、肉を纏った。
どちらが正しいのかは不明だが……水晶の骨を持つ長は、ゆっくりと起き上がる。
長とはいえ、その姿は精々20代の女性に見える。
いや、実際そうなのだが……シボラの部族では、これが普通である。
長はゆっくりと目を開くと、静かにその身体を石のベッドから起こす。
そう、ここは大英雄の墓と呼ばれている場所……その、最奥であった。
「長……ご気分はいかがですか?」
「あの者達に騙されていたかと心配しましたぞ」
口々に言う精鋭達の顔を一人ずつ眺め、長は怪訝な顔をする。
「……ガルデ殿の姿が見えんな」
ガルデ・ラルネン。ネバーランドの副機関長の名前を聞いて、精鋭の一人は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「奴等なら、もう役目は終わったから帰る……と」
「如何します、追いますか」
「構わぬ」
溜息をつくと、物憂げな表情で長はガルデを思い浮かべる。
「実に良い男だった……野望と力に満ち溢れていた」
「長……?」
「我もよい年だ……あれ程の男に、また出会えるものか分からん」
そう言って、長は静かに溜息をつく。
そう、シボラの部族は総じて短命。
フェイターンの呪いとも、種族的な問題とも言われているが、詳細は未だ不明だ。
だからこそ、だろうか。
シボラの部族の人間には、少々積極的な一面もある。
「奴の子種が欲しかったの、だがな……」
その言葉に、周りの精鋭達が深い溜息をつく。
今代のドニアザード、ドニアザード・アルグリッテ。
シボラの部族のほとんどの例に漏れず世間知らずながら野望は大きく……しかし、この村の男衆には結構人気者の女性である。
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