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ニルヴァーナ学園祭、はじめるよ!

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ニルヴァーナ学園祭、はじめるよ!

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2章 いらっしゃいませ!

「……さてさて、こちらも準備を進めるとしますわ」
そう言って藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)は自身の出店に向けて準備を進めていた。
「こういうイベントはマメに参加して私の目的に向けて少しでも前進しないといけませんからね」
どうやら、優梨子はお手製のたこ焼きを販売するらしい。
「優梨子さん……相変わらず、なかなかインパクトのあるたこ焼きですねこれ」
事前に「根回し」で集めた作業員は少し怪訝な顔をして答えた。
「ふふっ、私がこの日の為に揃えたたこ焼きプレートなんですよ。よく出来ていると自負しているわ」
優梨子が自負するというプレートはなんと、たこ焼きの形が干し首になるようにできていたのである。
「うーん……まぁ、なんでもありだからいいんすかね」
そういうと作業員は再び作業に戻ったようだ。
「さっ、そろそろ準備は終わっているわね? それではそろそろ開店しますわね」
完成した出店はいたって普通の、教室1個分を借りてゆっくりとたこ焼きを食べれるような店に出来上がっていた。
「それでは、ニルヴァーナ創世学園干し首学科主催、「干し首焼き屋」の開店ですわ」
こうしてかなり不気味でインパクトのある出店は開店された。
ちなみにお客さんの評判は結構良かったと言う話である。


「いらっしゃいませー!」
「ありがとうございましたー!」
カワイイ声が響くカフェでは初等部の子供達が一生懸命せっせと働いていた。
「おー、案外あいつら頑張るなー」
「教職員としてうれしい限りですわ」
それを眺めているのはパートナーを手伝っている飛鳥 菊(あすか・きく)と初等部教員であり、このカフェの主催者であるマリア・テレジア(まりあ・てれじあ)である。
「やんちゃな奴もおおいから心配だけどな……ほら、噂をすれば」
「あっ、つまみ食いはいけませんよ!」
「お二人さん、サボってないで働いてぇな!」
子供達の働く光景を眺めている二人に背後から声をかけるのは接客として子供達をフォローしているエミリオ・ザナッティ(えみりお・ざなってぃ)
「せんせー、いっぱいお客さんきたよ! どうすればいいかなー」
「接客係の皆さんは、このしっぽ髪のお兄さんがお手伝いしてくれます♪」
「しっぽ髪て……普通に名前で……」
「しっぽ髪のお兄ちゃん、よろしくねー!」
「なんだ人気者じゃねぇか、よかったなエミリオ」
そんな和気藹々とした会話をしていると、不意に客席から泣き声が聞こえてきた。
「なんだぁ?」
そこにはお客さんに飲み物をこぼしてしまい、泣いてしまった子供がいた。
「ったく、ほら! 泣くんじゃねぇ!」
「大丈夫ですよ! ほらっ、泣かないでくださいー!」
そこには食べ歩きをしていた白砂 司(しらすな・つかさ)サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)の姿があった。
「そこのお二人さん、すまねぇ!」
「別に気にしてないぞ」
「そーですよ! それより……あっ」
そういうとサクラコはマリアお手製のクッキーを泣いている子供に食べさせてあげた。
「はむっ……おいしい」
「ほらっ、笑ってくださいね!」
「うんっ! お姉ちゃんありがとう!」
そういうと子供は笑顔で厨房に去って行った。
「手間かけさせたな、俺は菊だ。」
「俺は白砂司と言う。それよりこのクッキーを作った者に伝えておいてくれ。笑顔を与えるお菓子、素晴らしかったぞ」
「私はサクラコと言います。すごくおいしかったですよー! なにより子供達が楽しそうなので私達も幸せになった気分です。いいお店ですね!」
そういうと司達は菊に一礼しお店を去って行った。
「ったく……まぁ、悪い気分ではないな。」
こうして初等部カフェは終始笑顔に満ち溢れたのである。


「閑古鳥が鳴くかと心配でしたが、すごい人ですねぇ……」
「うむ、儂らも話している暇はないな」
こちらは夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)らが出店している和風の休憩場である。
ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)の要望により今回、ニルヴァーナの地に出店することになったのである。
「ホリイ、串団子2本、お茶じゃ」
草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)は着物とエプロンの姿で接客に追われているようだ。
「羽純、その姿似合っておるぞ」
「そう茶化すのではないぞ。そういう甚五郎も作務衣の姿似合っておるではないか」
甚五郎は作務衣を着て接客をしていた。
その姿には妙な迫力があり、作務衣がまさに彼のためにあるようなものであるように見えた。
「これが儂の仕事着だからな」
「そこのお二人さーん! 忙しいんだから働いてくださいねー!」
「っと、そうであった……ところでオリバーの奴はどこへ行ったのじゃ?」
「ゴミ捨てに行くといってしばらく戻っておらんな……」
「さぼっておるのか……あいつは」
すると男女2人組から元気な声が聞こえてきた。
「すみませーん! 注文いいですかー?」
そこには司とサクラコの姿があった。
「すまない、待たせたな。注文はなんじゃ?」
「えーと……みたらし2人前お願いします」
「あっ、すみませーん! 今みたらし売り切れちゃってるんですー!」
厨房から残念そうなホリイの声が聞こえてきた。
「あらら……じゃあ、えっと……」
「ゴミ捨てから帰ってきたぞー」
オリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)がゴミ捨てから帰ってきたようだ。
「羽純、ついでになんかすごい旨いっていう粉もの屋があったからお好み焼き買ってきたぞ」
どうやらオリバーはゴミ捨てのついでにどこかの出店からお好み焼きを買ってきたようだ。
「オリバーか、いい所にきたの。お客人、みたらしが売り切れているのでこのお好み焼きでよければ少し食べてみるか?」
「なら、味見程度にもらっていいか?」
「ああ、構わぬぞ」
そういうと司はオリバーの持ってきたお好み焼きを一口食べた。
「むっ……」
「司君、どうしたのー?」
「旨い……オリバーでよかったか?ここの店はどのあたりに出店しているか?」
「あー……ここの通りをまっすぐですぐ見つかるぜ」
「そうか助かる、すまないな。あと紅茶旨かったぞ」
「あっ、司君まってよー!」
そういうと司達は早々に店を去って行った。
「なんか嵐のような奴だったな」
「オリバー、そなたが言うか」
「あっ、またサボってますねー!働いてくださいー!」
厨房からはホリイの元気な声が響いていた。
「そのお好み焼き、そんなに旨いのか? わしの分は……」
「んっ? お好み焼きならわらわがもう食べてしまったぞ」
「なっ……! 気合だ、気合……」
甚五郎はものすごく悔しそうな顔をしていたのは羽純だけの秘密である。
「なんだ、ならオラがもう一度買ってきて……」
「サボらないでオリバーさんも手伝ってくださいね!」
「……へーい」
裏ではオリバーがホリイにこき使われているようだ。


「……おい、あそこの兄ちゃんすげぇぞ!」
「焼いている手元が見えない……」
ギャラリーに感嘆させながらたこ焼きやらいか焼きなどを作っているのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)
「はい、らっしゃーい。こなものマスターの店やー」
たった一人で出店しているのにもかかわらず、ものすごい生産スピードを誇るその姿はマスターの名にふさわしい姿であった。
「すまない、たこ焼きとお好み焼きを2つずつもらえるか?」
司は先ほどのオリバーの情報どおりに裕輝の店にたどり着いたようだ。
「へい、まいどー」
すると注文と同時に信じられないことに出来立てのたこ焼きとお好み焼きが出てきたのである。
「すっ、すごいね司君……」
「うむ。……味もかなり旨いな。この技術、どこで手に入れた?」
「兄さん、それは内緒ってもんですわ。知ったらオレは兄さんたちを……」
するとギャラリーから
「やはり例の……」
「まさかあの技を習得している者がいるとはな……」
など、物騒な会話が聞こえてきた。
「そっ、そうか……。ともかく、旨いたこ焼きとお好み焼きだった。」
「おおきに。また来てなー」
司達はそういってその場を去って行った。
「さてさて、オレの封印された焼き方でも披露するときが……」
その瞬間、ギャラリーはどよめいた。
「……まぁ、そんなものありまへんがな」
儲け目的で来た裕輝だが、案外この状況を楽しんでいるようであった。
後日談であるが、彼の出店はニルヴァーナ学園祭の伝説となったようだ。


「いらっしゃいませなのであります」
「いらっしゃいませー」
こちらは喫茶店を開いている葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)の二人。
「それにしてもすごい人ね」
「そうでありますな」
二人も学園祭の熱気に当てられているようだった。すると
「うぉ! なんだこれ!」
二人が会話していると、外から男性の叫び声が聞こえてきた。
「なんでこんなところにスッポンなんているんだよ! おまけに普通のスッポンじゃねぇし!」
「……また逃げ出したわね」
「そうでありますな」
外で暴れているスッポンはどうやら吹雪たちの店から逃げ出したもののようだ。
「というか! なんで! ただの喫茶店にスッポン鍋があるよの!」
「織月の湖でいっぱい取れたであります」
吹雪が提案した喫茶店は「ニルヴァーナ特産の物を使った料理を出す」というものであった。
「だからって出さなくても……。逃げ出すし……」
「でも、結構注文はくるであります」
「そうなのよねぇ……」
コルセアは大きく溜息をついていた。
「普通の軽食もあるので大丈夫であります」
「そういう問題じゃないのよね……」
「姉ちゃん! スッポン鍋とたいむちゃんの丸焼き1つ!」
「了解であります」
「ちょ! たいむちゃんの丸焼きってなんなのよ!」
「秘密であります」
二人が開く喫茶店は違った意味で繁盛しているようだ。
「後でニルヴァーナの姿焼きでも考えるのであります」
「考えなくていいわよー!」
店にはコルセアの悲しいツッコミが木霊していた。


「いらっしゃいませ」
「キャーーーー!」
さわやかな笑顔と紳士な接客で女性客を熱狂させるのはエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)
「エオリア、たいむちゃん人形焼きとシフォンケーキを頼めるかな」
「了解です。すぐに作りますね」
厨房でせっせと料理を作っているのはエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)である。
エース達が出店しているのは「たいむちゃんカフェ」と言う名の喫茶店である。
「エオリア、そういえばリリアの姿が見えないけど……」
「リリアさんはダリルさんと学園祭を回りに行きましたよ」
「ふふっ、なるほどね」
そんな会話をしていると五月葉 終夏(さつきば・おりが)達が来店したようだ。
「いらっしゃいませ」
そう言うとエースは終夏にスターチスと蒼いトルコ桔梗と白い薔薇で作ったミニブーケをプレゼントした。
「わぁ……。綺麗だねっ! ありがとう!」
エースのプレゼントを終夏はとても気に入ったようだ。
「おにーさん、かっこいいのにかわいいねー」
「うさぎさんのみみだー」
タタとチチはエース達のたいむちゃん風の衣装がすごく気に入ったようである。
「ありがとう。可愛らしいお子様達だね」
「私自慢の子供達だもん! ……あっ、それじゃあ私には紅茶で。子供達にはなにか甘い者をお願いできるかな?」
「注文、承ったよ。紅茶は俺が淹れるから、エオリアは甘い物をよろしくね」
「甘い物二人分ですね、了解しました」
「りょうりしているおにーさんもかわいいー」
「うさぎさんのみみいいなー」
エース達の喫茶店は女性陣にはもちろん、子供達にも大人気だったようだ。
料理の方でも、女性のハートをわしづかみにしていたようで何人かの女性は何度もエースたちの喫茶店に遊びに来ていた。


「さぁ、そこの兄ちゃんいらっしゃいだ!」
こちらは店の雰囲気がインド風なその名も「ナラカレー」を出しているテレジア・ユスティナ・ベルクホーフェン(てれじあゆすてぃな・べるくほーふぇん)のパートナーであるマーツェカ・ヴェーツ(まーつぇか・う゛ぇーつ)である。
マーツェカは今回ナラ科をアピールするために出店をしているようだ。
「うわっ……すごい真っ黒なカレーだけど……大丈夫なのか?」
「食べれるのかな……?」
訪れた客は全員口をそろえてその見た目に不安を抱くが
「まぁまぁ、とりあえず食ってみようぜぇ?」
と、自信ありげな顔をしてマーツェカが言うので恐る恐る食べてみる客たちであった。
「……んっ。うっ、うまい!?」
「だろぉ!」
一口食べた客は皆驚いた顔をしていた。
外見は従来のナラカをイメージしたものであるが、肝心の味は抜群においしいのである。
「外見と中身の違いを愉しんで貰おうって思ってな。ナカラだってそうなんだぜぇ?」
このカレーはナラ科のカリキュラム基本方針である「ナラカの暗いイメージを払拭する事を目指す」というものをイメージして作られたようだ。
「すみませーん。この奈落カレーって同じじゃないんですか?」
一人の客がそう質問していた。
「おっと……それに目をつけちまったか……まぁ、食べてからのお楽しみだぜぇ?」
「それじゃあひとつお願いします」
「あいよ」
そういうと厨房からは先ほどのナラカレーと同じ様なカレーが現れた。
「ほれよ」
「それじゃあ、いただきます。……っ!」
一口食べた客はその場で悶えているようだ。
「奈落カレーはその名の通りブッ飛ぶくらいの激辛なんだぜぇ? ほら、まだ上には涅槃と浄土がまってるぜ?」
マーツェカは不敵に笑っていた。
その後、辛さに自信のある強者が何人か浄土に挑戦したが全員医学部教室行きになったそうだ。
医学部教室で治療をしている人に後で怒られたそうだ。