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A NewYear Comes!

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 次第に人が増えてきた会場。
 同人誌ブースのある会場から離れた位置にコスプレの会場となっている広場があった。
 開場してさほど時間は経っていないはずなのに、広場にはすでに多くのコスプレイヤーが各々の衣装を身にまとい集い始めていた。
 コスプレことコスチューム・プレイ。本来は演劇用語で時代劇を意味していて衣装劇とも呼ばれ、きらびやかな衣装を身にまとって行う劇のことを指していた。だがいつの頃からかアニメやゲームのキャラクターの仮装をすることをコスプレと呼ぶようになり、気付けばすでに定着してしまっていた。本来の意味でのコスチューム・プレイとはまた違っていはいるが実際には存在しなかっただろう衣装を作り、身にまとうことは十分衣装劇としての意味はもてたことだろう。
 コスプレはもはや世界中に広まりつつある一つの文化になりつつあるのだ。
 そんな文化の交流会ともいえる場に集まった参加者の中には、ゴールドに輝く鎧を身につけた集団や、ゲームに登場するアイドルグループのコスプレ、安定のツンデレ具合で「あんたバカぁ?」などとキャラになりきって台詞まで応じてくれる人もいる。頭から被ったダンボールに『いこん』とだけひらがなで可愛らしく書いてある、衣装というよりかは仮装という人も多く見受けられる。どうしてそのコスプレをしたといういわゆるネタ枠が増えてきたおかげで、今までに持たれていた偏った「コスプレ」という概念も少しずつ変わっていくことだろう。

 そんな他の参加者のコスプレを見ながら会場に到着したネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)たち。更衣室で早々に着替えを終えて広場に出てきたのだが、あまりの人の多さ――キャラクターの多さについつい目移りしてしまう。

「あっ見てももんちゃん、この間始まったアニメのやつだよ!」
「うわぁ可愛いね〜。今度はあれにする?」

 他の参加者が通り過ぎては楽しそうに話しながら笑うシンク・カルムキャッセ(しんく・かるむきゃっせ)樹乃守 桃音(きのもり・ももん)。仲良く隣に並んで歩いている二人が身にまとっているのは最近パラミタで放映されたテレビアニメ『極勇者なのなのダイアリー』に出てくる、紅の勇者『リック・イスミン』と翠の森のお姫様『エルベルージュ姫』の衣装だ。
 桃音と同じリスの獣人であるお姫様の衣装がとてもよく似合っている。作られたしっぽではなく生まれ持ったものだからこその強みというものがある。衣装も限りなく本物に近づけるために細かいところにもこだわり、背丈よりも大きい箒を持てば完成。さながら本当に二次元から飛び出してきたように思える。
 シンクは赤のスワロウテイルベストに黒のキュロット、当たっても怪我をしないような材質で作られたロッドを手にすれば勇者というよりかは魔法使いか賢者のようにも見える。

「すみません、写真いいですか?」

 広場に到着してからそれほど時間が経たないうちに、すぐにカメラを持った人たちが声をかけてくる。これでもかというちびっこ集団が可愛らしい格好で広場を歩いているのだ。即売会に来ている紳士たちでなくとも愛らしい存在であることは間違いない。
 そんなこんなで何人かに声をかけられ写真を撮られることになった。

「次、こっち目線お願いしまーす」
「はーい!」

 レンズ越しにお願いされて、ネージュは快く応じる。
 魔法のブーケを手に、可愛らしく、時には元気にその姿をカメラにおさめていった。

「ありがとうございました。その衣装とっても可愛いですね」
「ありがとうございます」

 にこりと笑って返すネージュ。魔法少女の格好をしているのだが、コスプレ用のものではなく、自前のものだ。薄紫の生地とピンクのリボンでアクセントのきいたスカートはふわふわで、足元はうるさくならない程度の薄桃色の靴。ツインテールを結ぶリボンも薄紫色でまとめてあり、先には白いポンポンが可愛らしく揺れている。
 ネージュは更衣室で「変身」して魔法少女としてこの場に立っているが、普段とは違ったまた楽しい感覚に自然と笑顔が零れていた。
 それは桃音とシンクが楽しそうにカメラに向かってキャラになりきってポーズをとっていることからも明らかで、嬉しくてつい笑顔になる。

「ねじゅちゃん、楽しいね」

 隣でラディーチェ・アコニート(らでぃーちぇ・あこにーと)が少し恥ずかしそうだが、優しく笑いかけてくる。ギフトのラディはあるイコンをデフォルメした姿をしており、その見た目はイコプラを意識して作られている。百合園の制服を纏ったようなその姿は愛らしく、通りがかったイコプラファンからも声をかけられていたようだ。
 他にもイコプラのコスをしている人たちに声をかけられて、一緒に写真を撮ったり話をしたりとラディも楽しそうにしている。

「極勇者リックに碧き翠の森の加護を! 極勇者に選ばれしエルベルージュも一緒に参ります!」

 桃音とシンクが劇中の台詞を再現しながらポーズを決めると、おおっというざわめきとシャッター音が響き渡った。
 早くもコスプレ会場は盛り上がりを見せているが、まだイベントは始まったばかり。
 みんながいきいきしているのを感じながら、頬に少し冷たい風を受けてネージュもまた笑顔で広場を回るのだった。