百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

温泉を巡る攻防!

リアクション公開中!

温泉を巡る攻防!

リアクション



第一章

 ヒラニプラの温泉地、各温泉へと繋がる交通の要衝である保養施設。そこには、人ではなくモンスター達が争う事なく各々くつろぎ、温泉につかっていた。
「へぇ、話には聞いていたけど、本当にモンスター達が入っているんだね」
 モンスター達が入っていると話を聞いてやってきたのはネスティ・レーベル(ねすてぃ・れーべる)
「……大人しいみたいだし、私もリラックスしようっと♪」
 少しモンスター達の様子を伺っていたネスティ。暴れそうにない事を確認すると、自身も温泉につかる。
「はぁぁぁ……気持ちいいねー。それに……」
 ネスティが周囲を見回す。そこに、人の姿はなく、あるのはモンスター達のくつろぐ姿。
「滅多に見られる事じゃないし、ラッキーよねー」
「あら、人間?」
 ネスティに気付き声をかけてきたのは、セイレーン。その手に持つ桶の中には、お湯につかり、くつろぐピクシーの姿があった。
「あ、こんにちは……で、良いのかな?」
「えぇ。平気ね」
 セイレーンは桶を胸に抱えるようにしてネスティの横に座る。
「ちゃんと言葉が通じるんだ。良かった」
「モンスターによるんじゃないかしら。通じる相手もいれば通じない相手もいるわよ」
「あたしも分かるよー!」
 桶の中にいたピクシーも手を上げて答える。
「言葉が通じなかったらどうしようかと思ったけど……。その心配もなさそうだね」
「まぁ、声をかける相手は考えるべきかしらね。話がこじれると大変だし」
「そうだね。こんなところで戦闘になったら大変だし」
「お姉ちゃん、人間なのに良く入ってこれたねー?」
「別に戦おうってわけじゃないしね。それに、モンスター達も大人しいじゃない? なら、一緒に入れる機会なんだし、入らなきゃね。モンスターがくつろいでいる姿が見れるなんてそうそうあるわけじゃないし」
 ネスティの言葉に、微笑むセイレーン。
「面白い人ね。普通なら、怖がって近寄らないと思うけれど?」
「そうかもね。でも、そちらも別に戦おうってわけじゃないでしょ?」
「えぇ。不思議とそういう気分にもならないし。他のモンスター達もそういう感じなのでしょうね」
 目の前を気持ちよさそうにぷかぷかと漂うアルラウネを尻目にセイレーンが答える。
「温泉の力は偉大だよねー」
「ふふふっ、待っていたわ。この時を!」
 まったりムードの中、響き渡る声。
「あら、何かしら?」
 全員の視線が声のしたほうに集まる。
「よりどりみどり……。まさにここは桃源郷!」
 その視線の先に立っていたのは、レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)
「とうっ!」
 掛け声と共に跳躍したレオーナ。突出した岩の上へ綺麗に着地。
「彼女は何をする気なのかしら?」
「……さぁ? でも、悪い事はしないと思うけど……」
 セイレーンの質問に首を傾げるネスティ。
「……わいは猿や!」
 野生の蹂躙によりわらわらとやってきた猿達。各々、何かをするでもなく、そのままのんびり温泉につかり始めた。
「突撃ー!」
 レオーナの合図と共に猿達が温泉へと飛び込んでいく。
「目標を……狙い撃つ!」
 最後に飛び込んだレオーナ。構えた両手から放たれたのは、綺麗な放物線を描いて飛ぶ水の塊。俗に言う水鉄砲である。
「きゃっ!?」
 目標に選ばれたのはネスティ。
「おー! 今のすごーい!」
 ピクシーがひらひらと飛びレオーナのところへ。
「ねぇねぇ、今のどうやるの!?」
「あら、ピクシーかしら。小さくて可愛らしいわ♪」
 飛んできたピクシーを手の平の上に乗せ、愛で始めるレオーナ。
「あははっ、そこはくすぐったいよ〜」
「じゃあ、ここはどうかしら?」
「あっ、そこはだめぇ……。って、そうじゃなくて!」
 するりと抜け出すピクシー。
「さっきのどうやるの?」
「水鉄砲ね。まず、両手を組んで――」
 ピクシーに丁寧に水鉄砲のやり方を教えるレオーナ。それが気になるのか、他のモンスター達も耳を立ててさりげなく聞いていた。
「――隙間を塞いで、親指側から小指側に力をこめる」
「ぅ〜……、こうだ!」
 ピクシーの手から小さな水の塊が飛び出した。
「そうそう、上手よ!」
「あまり飛ばなかったなぁ……。もう一回!」
 一生懸命挑戦するピクシー。
「……こう、か?」
 近くで話を聞いていたラミア。さりげなく挑戦してみるが、うまく飛ばない。
「ふっふっふ、ラミアちゃん。指の塞ぎ方が甘いわよ」
 その光景を見逃すレオーナではなかった。いつの間にか、ラミアの後ろへ回り込んでいた。
「わっ!? いつの間に……!」
「まぁまぁ。私が手取り足取り教えてあげるわ♪」
「やっ、ちょ、ちょっと……。そこは手じゃ……」
「うふふふ、綺麗な肌ね」
 さりげなく身体を触りまくるレオーナ。ひとしきり触った後、満足したのか、手の動きを止める。
「ふぅ、満足♪」
「はぁ、はぁ……」
「さて、しっかり飛ばせるように教えてあげるわ」
 若干疲れているラミアに水鉄砲のやり方を教え始めるレオーナ。
「…………」
 そして、完全に的にされた挙句、そのまま放置されたネスティ。セイレーンが心配そうにネスティを見る。
「……大丈夫かしら?」
「えぇ、平気よ。まぁ、悪気があったわけではないみたいだし。それに……」
 ネスティがレオーナを見る。いつの間にか、レオーナの周囲にはモンスター達が集まって、水鉄砲合戦が始まっていた。
「それそれっ!」
「きゃっ、やりましたね。お返しです!」
「やるわねっ。お返ししてあげるわ!」
「ちょ、そこは触っちゃだめぇ!」
「ここが、ええのか? ええんやな?」
「さっきはよくも……これでも喰らえ!」
「わっぷ! ラミアちゃん、上手くなったわね……。なら、私も激しく行くわよ!」
「その手の動きはなんだ!? わっ、来るなぁ!!」
「逃がしはしないわっ!」
「……まぁ、仲良くやってるみたいだし、結果オーライってやつよ」
 水鉄砲を飛ばすモンスター達に飛び込んでは過激なスキンシップをしているレオーナを見て苦笑するネスティ。
「ふふっ、そうですね」
 対して、目の前で繰り広げられる行為を微笑ましそうに見るセイレーンであった。