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ぶーとれぐ 真実の館

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ぶーとれぐ 真実の館

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エピローグ

戯祭 紳士(ざれまつり・しんし)



道端に、古い型のブラウン管TV置かれている。
画面の大きさはおそらく15インチほど。
ボタン式ではなく、ラジオのようにダイヤルを回して、周波数を合わせるタイプだ。
もちろん、リモコン操作などはできないし、HDMIもビデオ端子もない。
背面に、アンテナから引っ張ってきたコードをむき、中の銅線をTVに直接、結び付ける、アンテナ端子だけがついている。

ここは空京にある、19世紀末のロンドンの街を再現したテーマパーク、マジェスティック。
テーマパークとはいっても、ここにすむ住民たちもおり、学校、病院、役所、警察といった公共施設もあり、観光を主な収入源とする一つの街として、独立自給自足している。

ひとけのない石畳のうえのブラウン管TVは、深夜で観光客がいなくても、地球の19世紀末を模した文化の中で人々が生活しているマジェスティックの街には不似合だった。

それにしても、いったい誰がこんなものを捨てたのだろう。

電源もつながっていないのに、画面にあかりがともった。
特殊な病室かなにからしい殺風景な小さな部屋が映しだされる。
四方をレンガの壁にかこまれ、鉄製のドアがある、家具も窓のない部屋。
部屋には誰もいない。

「こんばんは。
わたくし、戯祭紳士でございます。
みなさま、あれからいかがおすごしでしょうか?
はい。
真実の館での一件からでございます。

あれ以来、わたくしはマジェスティックが気に入ってしまいまして、時おりこうして、この街を訪れているので、ございます。
どうか、おみかけの際は、お気軽にお声をおかけくださいませ。

ただいまの中継画面をご覧いただけば、まだまだこの街が賑やかで騒がしいのが、ご理解いただけるかと思います」

スピーカーから流れていた男の声がやむと同時に映像も消えた。

そして、TVのしたの地面に体が埋まっていたかのように、石畳に手、足がはいだしてきて、頭部はTV、体は紳士用の燕尾服を着た長身の人物は立ち上がった。
どこからか取りだしたシルクハットをTVの頭にのせ、うやうやしくお辞儀をして去ってゆく。