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リアクション
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる) グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー) フランシス・ドレーク(ふらんしす・どれーく)
玄関を入ってすぐの待合室的な部屋、それでも優に大人10人は入れる広さだ、に通されてすでに5分以上が経過していた。
メイドが呼びに行ってから、なかなかこない執事が、やっときた思ったら、いきなりコレか。
ご本人は気づいていないようだし、彼の体面もあるだろうから、教えてあげたほうがいいわね。
シャンバラ教導団大尉のローザマリア・クライツァールは、ヘタをすれば中学生にみられかねない童顔に、大尉の身分を感じさせない穏やかな笑みを浮かべて、初老の執事に安心感を与えるよう努力しつつ、
「ところで、執事さん。シャツやズボンがずいぶんと汚れているようだけど、絵でも描いていたのかな。
赤い絵の具があちこちについてるわ」
女性のルージュみたいな色の、ね。
「ハッ。申しわけございません。これは、そのう、つい、さきほど」
「どんな事情があろうと私はかまわないけれど、この館での貴方の立場上、身だしなみにはお気をつけられた方がよろしいのではなくて」
余計なお世話でしたら失礼。
「は、はい。この後、シャワーを浴びて着替えてまいります」
そうですか。
着替えだけでなく、シャワーまで必要とは、それはそれは。
「私はローザマリア・クライツァール。後ろにいる2人は、私のパートナーよ。
私、アンベール男爵に呼ばれてきたゴーストハンターなの。
パートナーのグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーとフランシス・ドレークは英国ゆかりの著名人の英霊様。
どちらも私がハンターとして捕まえた獲物ですの。
ちなみにライザはエリザベス女王?世陛下、フランシスはスペインの無敵艦隊を破ったフランシス・ドレーク提督よ。
執事さん。お2人様のことは知っておられますか」
「女王陛下様とドレーク提督。
もも、もちろん、存じあげております。
となれば、このような格好の私がお二人の前にいるわけにまいりません。
申しわけございませんが、せめて服だけも替えてまいりますので、もう少々お持ちください」
礼儀正しく丁寧にお辞儀をすると執事は、足早に去っていった。
「誰が、ゴーストハンターだって。
しかも、捕まえた獲物だと。俺様はともかく、さっきの言い分は、陛下に失礼すぎねぇか。
いったい、なに様のつもりだ」
「その通り――妾がエリザベス?世だ。
ローザといえども、いたずらに妾を辱める発言を看過するわけにはゆかぬ。なにゆえの虚偽の言説か」
本日からのマジェスティクのテーマパークとしての期間限定イベントEngland‐Dayのルール、来園者は英国ゆかりの人物のコスプレをする、に従って、というか、自身本来の服装で、トリコーン(海賊帽子)かぶり、眼帯をしたフランシスと、王冠を頭にのせ、豪奢なマントを羽織ったエリザベスは、揃ってローザマリアへ不満を口にした。
「いや、あの、その、軽い冗談よ。
あの執事さん、まじめに受け取りすぎちゃいそうで怖いけど。
でも、ゴーストハンターとゴーストとして扱ってもらえたほうが、私たち、この館での真実に近づきやすいかも。
だって、どんな振る舞いをしても、ゴーストハンターとゴーストなら許される気がするし」
「もともと海が住処の俺様を縛るルールなんて、陸地にはありゃしねぇよ」
「ふ。例え模造品でも、英国の、しかもロンドンで妾に従うことを要求する規則など、存在せぬわ」
まーまー、そうでしょうね。
だから、はじめから普通じゃない人の枠に入れておいてもらった方があなたたちもやりやすいでしょ。
大尉(ローザマリア)と提督(フランシス)と女王陛下(ライザ)。
なんともいえない微妙な空気が3人の間に流れた時、ドアが開いた。
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