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リアクション
第8章 名残時8
縁日の会場では、片づけ作業が行われていた。
そこで顕仁は考え込んでいる。
「≪多くの人がある…としても、頼りとなる絆のある間柄のある者となると、ほんのわずかなこと。
人は、孤独じゃ。我に関して言うならば、回りに人があればある程に『孤独』を覚えるものだが……≫」
「ほれ顕仁、シケた顔しおったらええことないよ?」
そう言いながら顕仁の背中を押す奏輔。
ほんのり彼の顔が赤く染まった。
「イベントの類は、段取りの準備で9割方成功・不成功が決まるさかい。
せやけど今回に限れば、その一割が大成功したわけやな」
奏輔の言葉に照れる丙。
「皆さんの協力があったからですよ」
「まぁ、許可なくその辺踊りまわろうとしてたんはあかんけどな」
「そ、そこはお見逃しを〜……」
「綿菓子? 綺麗ですね。 私に下さるのですか?」
「はい! イベントの間たくさんお世話になりましたから!」
歌菜はレイチェルに感謝の品として渡すために、
屋台の人に頼んで綿菓子を残しておいてもらったのだ。
「……ありがとうございます」
「おいねーちゃん! こっちの片づけどうしとくんだったっけなぁ〜!?」
「どうやらまたお呼びだな」
「そのようですね。 今日は薔薇の学舎に協力して下さりありがとうございます」
昨日見たのと同じように、レイチェルはまた去っていく。
「さーて、お疲れ様。 羽純くん!」
「歌菜もお疲れ様だ」
「えへへ、さすがに2人だと結構疲れたね」
「ああ。 だがたまにはもてなし側に回るのも、面白い」
「うん、今日は私達も楽しめたよね♪」
「強いて文句を言うなら、運んでる料理がどれも美味しそうで困ったけどな」
「そういうと思って……じゃじゃーん! リンゴ飴だよー♪」
歌菜はそういうと飴を頬ばる。
「甘くて美味しい♪」
「……ちょっと味見」
「あ!?」
同じ飴を横から羽純も食べる。
「も、もぉー…はい、ちゃんと羽純くんの分もあるよ」
そして2人で飴を片手に片づけは小休止。
一日、付き合ってくれてありがとう、羽純くん…♪
◇ ◇ ◇
ホテルでお菓子とお茶を飲みながら、少し遅めのティータイム。
エースは貴族であることから主にサービス面についての評価を担当していた。
「それで、評価はどうだ? エース」
「合格だろう。 この花火観賞もゆったりと座って見ることが出来た。
俺が評価委員だったからここに通されたんだろうけど、きっと開放されればいいスポットになるだろうね。
飲み物やお菓子の手や口がさみしくならないのもいいし、何より植物達がきちんと手入れされていたからね」
エースは昼間、【人の心、草の心】でひたすら植物達と会話を行っていた。
彼らによれば水分や陽の当たり具合、余分な葉の取り除きや木の間引きなど、手厚い世話にご満悦の様であった。
「植物からの現地調査…らしいやり方だな。 実に面白い。 眺める分には奇妙な光景でしかないがな」
「あと悪い点をあげるなら、パンフレットは改善の余地があるだろうね。 花火のプログラムのズレがあったのが気になった。
他にも花火の名前や、花火師の名前が分かったりすれば、もっと良いものになる」
そうしてメシエと話しながら
評価委員の仕事を終わらせるエース。 淡々と仕事をこなしつつも、しっかりお菓子の入ったバスケットをつまんでいる。
それをみてメシエは、小さな笑みを浮かべるのであった。
そしてエースの仕事も無事に終了。
2人は空を仰いだ。 そこには花火の煙が晴れ、満天の星空が顔をのぞかせる。
「霧に包まれていない空はタシガンでは珍しいね」
「そうだね、観光施設として色々手は入れられているけれど星空は本物だ。 …やはり自然の作りだす美麗さには敵わないよ」
こうしてエースとメシエは雅が自然に持っている美しさを堪能したのであった。
◇ ◇ ◇
「おい、天音! 天音〜!!!!」
「ランディ。 花火のスイッチ、遅れたようだけどちゃんと届いたみたいだね」
「どうして先に一言言わない!? こっちはスイッチを押しても花火があがらないから大変だったんだぞ」
天音は軽く肩をすくめてみせる。
そこにはエメとリュミエール、ブルーズ、ランディが肩をそろえていた。
「まぁまぁ、そのくらいでいいんじゃない? なぁエメ」
「そうですね。 それにしても天音、どうして花火のスイッチを変えたりしたんです?」
「ああ。 折角なら一番素敵な思い出にしたいじゃないか。 だから勝手に花火を増やしておいたよ」
「どうりで注文以上の花火があがったわけだ!」
「我も打ち上げ花火を安全に行う事が出来る場所の下調べや、木々伐採等をして場所を整えたりと忙しかった。
今日も届け物をさせられランディには中々会えない始末。 全く…いつもお前には悩まされる」
だが、天音はランディやブルーズの言葉など気にしていないかのように告げる。
「今日はおもてなしだよ。 なら、面白くなりそう、それで理由は十分だ」
「なるほど……『面白そう』こそ、至上の動機! さすがは天音です」
とうとうエメまで天音に賛同してしまう始末。
ランディとブルーズの気苦労は、これからも続いていきそうだ。