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リアクション
酒杜 陽一(さかもり・よういち)は高根沢 理子(たかねざわ・りこ)、ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)とセレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)を誘ってやって来た。本日は四人で遊ぶのではなく幼稚園の手伝いをする事に決め、ナコと他の引率者達と打ち合わせをするべく急いだ。
途中、
「結構、減ったな」
「食べたら……本当、ハロウィンサイコー」
随分減った悪戯菓子に満足げの双子が前を歩いていた。
しかし、双子は陽一には気付いてはいない。
「あの悪い顔、また何かやらかしたな」
陽一は静かに双子の話の内容を聞いていた。
双子を知るため、このまま黙っておく事は出来ず、
「二人共、ハロウィンだからと度が過ぎた事をしているんじゃないか」
いつものように声をかけた。
「!!」
双子は知る声に勢いよく振り向いた。
そして、
「……来てたのかよ」
「ハロウィンに悪戯は必要不可欠だぞ」
会いたくないというか怖い人に会った双子は優れない顔色。
さらに双子にタイミング悪くあちここちで
「むぐぐぐおわぐぐ(ガムを食べたら何か口が開かない)」
「あぁ、お菓子が突然弾けたと思ったら私のお気に入りの服が……何よ、この塗料」
「さっきのチョコを食べた途端変なホラーチックなうめき声が耳に響く」
悪戯菓子の被害者の声が上がってきた。
「あっ」
「……何でこのタイミングで」
双子はしまったの顔になった。中には双子ではなく双子菓子を持った別の人に貰った被害者がいるが双子は知る由もなく全て彼らの責任となるのだった。
「注意だけで済まそうと思ったけど、そうはいかなくなったね」
陽一はにこやか。
「ちょっ、どういう事だよ」
「本当に注意だけでいいぞ」
双子はそのにこやかさに怯えた。
陽一が双子の言う事など聞くわけもなく
「少しこの二人に用事が出来たから後の事は任せていいかな」
理子達に後を託す事に。
「いいわよ。陽一が遅くなる事は伝えておくし悲鳴がした人の様子も見ておくから」
理子はぐっと親指を立てて引き受けた。
「三手に別れた方がよかろう」
「急ごう、あまり時間も無いし」
セレスティアーナとジークリンデも異存は無く速やかに行動を開始した。
このバタバタの内に
「今の内に」
「あぁ、逃げるぞ」
双子は逃亡を図ろうとする。
しかし、『行動予測』と双子の行動を知る陽一にとっては想定内。
深紅のマフラーを伸ばして双子を捕獲。
「他の参加者に迷惑がかからないように……」
捕獲したまま人目に付かない場所へ連行。
到着するなり戒めを解く。
「……何か、嫌な予感が」
「ヤバイぞヒスミ」
何かを悟る双子。
「季節柄、随分寒くなったから少し温まった方がいい」
陽一は指を鳴らし、すでに待機させていたハロウィンサブレにて妖怪に化けたパンツ一丁の特戦隊達を呼び出した。最近恒例のおしくらまんじゅうをするために。
見た途端、
「ちょっ、またこれかよ〜〜〜」
「よ、よるなよ〜〜〜〜」
察するも包囲され逃れる事は出来ず、叫び声がこだまするだけとなった。
仕置きが終了すると声が出ないほどぐったりした双子の側に近付き、
「ハッピーハロウィン」
陽一は口直しに伝説のテイストミースイーツを二人のお菓子入れに入れてから双子を放置したままこの場を離れ、先に行った理子達とナコ達に会い、無事に今日の打ち合わせを済ませた。
それから陽一は『ちぎのたくらみ』で自分を5歳ぐらいの姿に変え、『タイムコントロール』で理子達三人を10年分若返らせて8歳から10歳程度の姿にしてから皆ハロウィンサブレを使用し園児達に混じって楽しいパレードに加わった。連れて来たペットや従者達に園児達がはぐれたり危険な場所に行かぬように注意をして貰いながら。
パレードの道々。
「ふわふわのドレス、可愛いねー」
赤好きのキリスがセレスティアーナに話しかけた。セレスティアーナは白色のふわふわなドレスに可愛らしいティアラを頭に載せた蝋人形のように色白の姿に変身していた。
「そうか。貴様は私と違って真っ赤だな」
セレスティアーナは自分の姿よりもキリスの姿に驚いていた。
「へへへ、可愛いでしょ。すごいよね。髪も目も真っ赤になったんだよ」
「うむ、すごいな」
キリスの極度の赤好きにセレスティアーナは適当な事しか言えなかった。
「すごい、強そうだな」
「でもずるいぞ、三つもお菓子入れ持ってるの」
モンスター少年二人は顔三つ腕六本の三面六臂の凛々しい騎士の姿のジークリンデに釘付けになり当然不満を口にする。
「後で分けてあげるよ」
優しいジークリンデは分ける事を約束。
「ありがとー」
少年達は喜んだ。お菓子は子供にとってお宝なので。
「このてん可愛いね。本で読んだ事はあるけど実物は初めてだよ」
読書好きのシュウヤは博士ゾンビとなりイタチの妖怪てんを抱き抱えていた。
「百聞は一見にしかずというものね」
ハロウィンな海賊姿の理子はてんの頭を撫でながら言った。本日てんは陽一達と遊べると知って仲間を連れて来たのだ。
「しかも五匹いるから火柱が見る事も出来るんだよね」
シュウヤは陽一がてんについて警告していた事、数匹いるから重なって格子状にして火柱を生まないように気を付けろと言っていた事を思い出していた。
「見たい?」
理子は悪戯っ子の笑みを浮かべながら訊ねた。
「見たいかなぁ」
シュウヤは素直に思った事を口にした。
「だったら……」
理子はきょろりと自分達に注意が向いていない事を確認し始めた。つまり、火柱を軽く起こそうと考えているのは明らか。
「危ないよ」
賢いシュウヤは理子がしようとしている事がどれだけ危険なのかを分かっていた。
「大丈夫よ。連れて行くのは三匹だけだし。ほら、あそこで……」
理子は絶好の場所を発見し、指を差しながら誘う。
そこに
「理子さん、子供の前で何、約束破って危ない事しようとしてるんだ」
身に付けている服や眼鏡以外透明になっている陽一が呆れながら止めに入った。内心理子が子供のように楽しんでいるのは嬉しいのだが。
「あら、子供の前って今、あたし子供だけど。ほら、見てみよう?」
理子は肩をすくめながら反論。言動も少し子供。
「……危ないし、いけないよ」
シュウヤは興味はあれどそれは口にせず逆に理子を注意する。
「シュウヤ君の方がまだ大人だ」
陽一は苦笑しながら理子に言った。
「陽一、余計な事は言わないのよ……という事で少し列を離れるわね」
「ちょっ、お姉ちゃん?」
軽くむっとした顔で言うなり理子はシュウヤの手を引っ張っててんの火柱を見るために一時離脱し、見終わったらすぐに戻って来た。その時の理子やシュウヤは好奇心を満たし満足そうであった。
「理子さん達も楽しんでるみたいで今日は誘ってよかったかな」
陽一は園児達と戯れる理子達の様子を微笑ましそうに眺めていた。
その時、
「今日はいっぱい、お友達連れて来たんだね」
「絵音ちゃんが言ってたペンギンのペンタもいるし」
お揃いの魔法使い服の絵音とスノハが声をかけてきた。二人の側にはペンギンアヴァターラ・ヘルムのペンタもいた。
「二人はお揃いなんだね」
陽一は手を繋いで仲の良い絵音達ににっこり。
「うん。陽一お兄ちゃんの透明人間もかっこいいよ。あのサブレ、いろんな物になれるんだねー」
絵音は透明人間の陽一の姿に驚き、ハロウィンサブレの効果に感心した。
「その子もかわいいね」
スノハは陽一の側にいるケルベロスジュニアを撫でた。
「……でも陽一お兄ちゃん達大人なのに小さくなってて何かおかしな感じ」
絵音は陽一達をじっと見た後、不思議そうに言った。何せ、いつも見上げていたお兄ちゃんが小さくなっているのだから驚いても仕方が無い。
「そうかな」
「そうだよ。でも一緒に遊べるからいいかな」
聞き返す陽一に絵音は楽しそうに言った。
パレードを開始して結構な時間が経った時、
「どうした?」
パラミタセントバーナードが何かを訴えるように陽一の服の裾を引っ張った。その理由はすぐに判明する。
「陽一、二人おらぬと、子供が言っておる」
セレスティアーナが異変を知らせてくれた子供を連れて緊急事態を知らせに来た。
「キーアちゃんとヒルナちゃんがいないの」
黒ウサギに変身した少女が消えたお友達を知らせた。
「あぁ、あの二人か。何か興味を引く物でも見つけたのかな」
陽一はすぐにどんな子供なのか思い当たった。好奇心旺盛な子供でペット達の隙をついて行ってしまったのだろうと。
陽一はすぐに『テレパシー』で呼びかけた。
“キーアちゃん”
“あ、お兄ちゃん。面白い妖怪がいて、こっそり追いかけてたら……ごめんなさい”
陽一が呼びかけるとすぐにキーアは答えるも迷惑をかけた事を謝ってきた。
“それは後でね。ヒルナちゃんも一緒? 今どこにいるのか分かるかな?”
怒るかどうかは本人が無事である事を確認してから。キーアがしっかりしているため状況確認を速やかに行う。
“クッキー屋さんの近くだよ。今、近くで猫の妖怪と頭に口がある妖怪が何か喧嘩してる”
キーアは近くにエースの店がある事、猫又ミッカと二口女双葉が意地汚い争いをしている事を確認。
“それじゃ、ヒルナちゃんと一緒にクッキー屋さんの前に待っていて。分かったね?”
“分かった”
陽一はキーアに合流地点を伝えてから話を終えた。
「陽一、居場所は分かった?」
話し終えたのを見計らって理子が案配を訊ねた。
「分かったよ。クッキー屋の前に待っているように言っておいたから急ごう」
陽一は話の内容を伝えてからすぐに向かった。クッキー屋はまだ立ち寄っていないため子供達も一緒に加わった。
一方、キーア達は、陽一と話を終えるなりクッキー屋に向かっていた。
「……みんな来るかなぁ」
ヒルナはしっかりとキーアの手を繋ぎながら泣きじゃくっていた。
「ごめんね、ヒルナちゃん。アタシのせいで。でも大丈夫だよ。すぐにみんなが来てくれるから」
キーアは自分の好奇心に巻き込んでしまった事を謝りつつも笑顔で励ました。
「……うん」
ヒルナはこくりとうなずき、涙を拭った。
何とかクッキー屋に到着すると
「おや、これは可愛いお客さんだね。クッキーをどうぞ」
エースが配布用のクッキーを差し出した。様子から誰かとはぐれた事は容易に想像出来、励ましにと。
「ありがとう」
キーアは温かな励ましににっこりした。
「えぇ、ハッピーハロウィン。紅茶もどうぞ」
笑顔のエオリアが紅茶を二人に渡した。少しでも不安な心が安らげばと。
「うん」
ヒルナはほっとしながら紅茶を受け取り飲んで表情が少し和らいだ。
しばらくして、陽一達が駆けつけた。
「二人共、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ごめんなさい。勝手に行っちゃって」
心配する陽一にキーアはしゅんと小さな体をもっと小さくして謝った。
「ごめんなさい」
ヒルナも続いて謝った。
「どこかに行く時は言うんだよ。みんな心配するから」
陽一はすっかり反省している二人を怒るような事はせず、注意だけにした。
「はい」
キーア達はこくりとうなずいた。
そこに
「そうは言っても何かに夢中になっている時は忘れるものよね。そして気付いたら……」
理子が朗らかに茶々を入れる。場を和ませようという事で。
「うん。気付いたらいつの間にかみんないなくて」
キーアは理子の言葉に激しく賛同した。
「何とか会えたから、トリック・オア・トリートしよう。みんな、お菓子が欲しくてうずうずしているから」
ジークリンデが子供達の気持ちを代弁した。
それを聞いた子供達は
「そうだよ。早くお菓子、お菓子」
「お菓子欲しい」
お菓子欲しい発言。
「という事だ。よいか?」
セレスティアーナは話をクッキー屋の主達に向けた。
「もちろんだとも」
「全員分ありますから。並んで下さい」
エースとエオリアはすぐにお菓子配布の準備を始めた。
陽一達はハーブクッキーを貰った後、別の所へお菓子を求めて歩いた。
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