校長室
今日はハロウィン2023
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今日はハロウィン・5 「……なかなか賑やかだな」 珍しく一人のグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は楽しそうに賑わう街の様子を見ていた。実はパートナー達には内緒でやって来たのだ。 「それでこれがハロウィンのモンスターに変身できるサブレか」 手にある貰ったばかりのハロウィンサブレに目を落とす。 途端、 「……そうだ、これで悪戯をしよう」 ちょっとした悪戯を思いつくのだった。 「まずは……」 グラキエスは悪戯作戦の始めにハロウィンサブレの効果で自分の姿を羽の生えた黒猫、サーバントキャットに変えた。 「これならウルディカとアウレウスにもなかなか見つけられないだろう。次は悪戯予告を送って……」 自分の姿を確認した後、ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)とアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)の銃型HCに悪戯予告を送った。グラキエスの目的は二人にハロウィンを楽しんで貰う事。 予告を送り終えた後、 「さてと、どこにするかな」 グラキエスは無邪気に潜む場所を探しに行った。 しばらくして呼び出された二人がこの地にやって来るのだった。 「何も言わずに姿を消したと思ったらハロウィン騒ぎに乗じて悪戯か。しかも制限時間付とは。まあ、あれの遊びに付き合うのも悪くはないが」 ウルディカは苦笑しながら送り付けられた予告に目を落とした。姿を消したグラキエスに焦っていた所に送られ、早々に会場にやって来たのだ。 「主はお優しい。ご自分が楽しむだけでなく、我等にもハロウィンを楽しませようと身を砕いて下さるとは」 主たるグラキエス至上主義であるアウレウスはグラキエスの心遣いに大変感動中。ちなみに悪戯の内容は、刻限である祭りが始まって数時間の間にハロウィンモンスターに変身したグラキエスを見付け出す事だ。二人には知らされてはいないが、失敗すればグラキエスによって『しびれ粉』で痺れさせ、無理矢理モンスターに変えられるのだ。 そうこうしている内にヒントが到着。 「……ヒントが来たな。さっさと見つけ出して説教をくれてやる」 ウルディカはヒントを確認するなり本気となった。それも完全な健康体ではないグラキエスを心配しての事。 同じくヒントを確認したアウレウスは 「何をしているウルディカ、早く主をお探しするのだ!」 ウルディカよりも先に動き、呼びつけた。グラキエスに捜せと言われたからにはそれに応えねばと燃えている。 「分かっている。それより、お前が持っているそれは何だ」 ウルディカはアウレウスが何やら荷物を持っている事に気付き、訊ねた。 「主に食して貰うお菓子だ」 アウレウスは至極当然のように答え捜索に一足先に入った。持参したお菓子は添加物や刺激物が苦手なグラキエスが食べられる物を厳選した物だ。 「……」 アウレウスの荷物を一瞥した後、ウルディカも捜索に入った。 『追跡』を持つアウレウスとそれに加え『捜索』を有するウルディカは送られた居場所と姿のヒントを手掛かりに必死にグラキエス捜索をした。 捜索中。 「……ヒントを辿るだけでは時間が掛かるな。となれば……」 送り付けられたヒントを頼りに捜索を続けるものの一向にグラキエスの姿は見つからず、ウルディカはヒントだけでは見つけ出すには時間が掛かると考え始めていた。 そんなウルディカの隣では 「主よ、しばしお待ちを! 必ず主を見付け出します!」 アウレウスがどこかに潜むグラキエスに届かぬ言葉をかけていた。捜索開始し、ヒントを辿る度にこの調子である。 そのためウルディカは 「……少し落ち着け騒々しい。アルゲンテウス、お前は周辺にいる疑わしい者に聞き込みをしろ。あれが口止めをしている可能性がある事も踏まえてな」 アウレウスを落ち着かせて協力させる。 「聞き込み……目撃者を捜すのだな」 すぐにアウレウスは『嘘感知』を併用しながら怪しい者の聞き込みを始めた。 その間、 「……俺はこのままヒントを辿る」 ウルディカはヒントを辿り続ける。 この後もヒントと聞き込みでグラキエス捜索を続けた。聞き込みの成果については口止めされているだろう者からも何とか口を割らせ、情報を得たりと精を出した。 そのおかげで最後の場所に辿り着いた時にはグラキエスの姿も明らかとなった。 「……この周辺に潜んでいるはずだ。羽の生えた黒猫の姿でな。時間も迫っている捜すぞ」 グラキエスが潜んでいると思われる場所に辿り着くなりウルディカはヒントを確認しつつ周辺を捜し始めた。刻限まで後数十分。 「主よ、ようやく辿り着きました。もう少々の辛抱です」 アウレウスはウルディカ以上にグラキエス捜しに炎を燃やした。 さらに時間は経過して刻限まで残り数分。 「見つけましたぞ、主」 グラキエスを発見したのは血眼になって捜索していたアウレウスだった。 「あぁ、アウレウスか。よく、見付けたな」 発見されたグラキエスは自分を発見したアウレウスを褒めた。 「私は当然の事をしたまでですよ」 グラキエスに褒められたアウレウスは至福とばかりに喜んでいた。 「……アルゲンテウスが見付けたか」 他を捜していたウルディカはアウレウスの喜びぶりでこちらが勝った事を知り、グラキエスの元へ。 そして、グラキエスの前に立つなり 「……エンドロア、気持ちは分かるが、何かをする時は相談しろと言われていたのではないのか。少々、自身の状態が安定しているとは言え、完全ではないのは理解しているのか。何が起きてもおかしくないと」 自分達を楽しませようとした気持ちは分かるものの心底心配させられたのは事実であるため軽く説教をかますのだった。グラキエスは体調がそれなりに安定しているとはいえまだ補助道具は必須だから。 「ウルディカよ、そこまで主の身を気遣っていたとは」 横で聞いていたアウレウスがウルディカの優しさを感じ取り感涙。 「……アルゲンテウス」 横から言葉を挟まれ、気を削がれたウルディカは説教を終わりにした。 「…………悪かった。ただ、二人にもハロウィンを楽しんで貰いたかったんだ」 グラキエスはしゅんと元気を失った。ウルディカの言い分はよく分かる。パラミタ内海での魚竜釣りの時に他のパートナーに散々言われた事だから。 「気を落とす事はありませぬ。持参致しましたお菓子を」 元気の無い主を見ていられないアウレウスは捜索の間片時も手放さなかったお菓子をフリースペースのテーブルに広げた。グラキエスのためにと用意したためか量や種類は半端なく多い。グラキエスが喜びそうな物をという事で。 「あぁ、ありがとう」 グラキエスはアウレウスの気遣いに促され、お菓子を食べようとした時、 「……姿が変わっているが、何も異常は無いか」 ウルディカが改めて変身による異常を気遣った事によってグラキエスはお菓子から視線を逸らした。 「無い。ただこの姿なら二人でも見付けられないと思ったんだけどな……見付けられなかったらこれを二人の口に放り込んでTrick&Trick! と言いたかったんだ」 グラキエスは異常が無い事とハロウィンサブレを見せながら残念そうに自分が勝った時の事を話すのだった。ついでにどこで覚えたのか妙な台詞まで口にする。 「それならば、そう言って下さればすぐにでもハロウィンサブレを食べたというのに……今からでも」 病的なまでに主至上主義であるアウレウスはグラキエスの遊び心への感涙と希望を叶えてあげたいという思いを抱くのだった。 そして、 「アウレウス?」 グラキエスからハロウィンサブレを取り、口の中に放り込んでしまった。 途端、 「これがサブレの効果なのですね」 アウレウスはデュラハンに姿を変えた。 二人のやり取りを眺めていたウルディカは 「……エンドロアが俺達に気付かれずに消えた時点で悪戯は半分成功したようなもの。その点に関してはこちらの未熟さを反省すべきだな」 息を吐き出しながら今日の事を振り返り反省していた。自分達の注意も足りなかったと。 そして、ウルディカは 「……ウルディカ」 グラキエスが見守る中、サブレを取り口に放り込んだ。 途端、 「……言いたかった台詞があったのだろ」 ウルディカはジャック・オ・ランタンに姿を変えてもいつもと変わらぬ調子でグラキエスを促した。 「あぁ、Trick&Trick!」 グラキエスは改めてハロウィンの挨拶を口にした。心底楽しそうに。もちろん、自分の悪戯に付き合ってくれたこれからも大切な存在であるウルディカとアウレウスへの感謝を忘れずに。 「では、主」 アウレウスは再び自分が持参したお菓子を勧めるのだった。 「あぁ、食べようか」 グラキエスは美味しそうにお菓子を頬張り始めた。 「……はしゃぐエンドロアに付き合うのも悪くないか」 ウルディカは楽しそうなグラキエスの様子に小さく言葉を洩らした。 この後、三人はお菓子を食べたりと一緒にハロウィンを楽しんだ。