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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
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リアクション

 ホラーなオープンカフェ。

 オープンしてからしばらく後。
 配布クッキーの補充に戻って来た北都は盛況な様子に
「やっぱりハロウィンだけあって繁盛してるね……ん? どこかから血の臭いが漂ってきているけど、演出かなぁ」
 満足しつつどこからか漂って来る血の臭い鼻をひくつかせるもただの演出と思い出所を追及はしなかった。

 その出所は……
「……(北都のせいで貧血で倒れそうですが引き受けた以上、最後までやらなければ)」
 客が去ったテーブルの片付けをするクナイであった。原因は北都の姿と可愛いにゃんこ語で途端に出血し、時間経過に伴い悪化の一途を辿っている。

 補充を終え現場に戻る北都は
「……クナイ、どうしたのかな。始めに比べて様子がおかしいけど」
 離れた所でテーブルを布巾で拭いているクナイの異変に気付くも自分が理由である事は辿り着いていない模様。

 クナイは空になった食器を手に調理スペースに戻るなり
「あんた、なかなかやるな。赤く染まる包帯に自然なふらつき具合、客からリアルだって好評だ。どうだ、ミイラ男役としてハウスに来ないか?」
 同じく空になった食器を運びに来ていたスタッフに絶賛の声を浴びせられた。
「誘ってくれるのはありがたいですが……」
 貧血で答えるのが辛いが、何とか平静を保つクナイ。
 最後まで答えを言う前に
「注文いいですかー」
 客のオーダーが入って来た。
「行って来ますね」
 話を中断させ、クナイはふらつきながらも急いで客の元へ行った。

 その時、
「ここで休むか」
「で、休みついでに悪戯だな」
 双子が来店し適当な席に着いた。

 席に着いて何をするかと思えば
「ここは俺が作った奴な。キスミは警戒してくれ」
「了解!」
 悪戯の準備を始め出した。
「……予想度通りあの二人来たね。しかもごそごそ何かしている」
 北都は見落とす事無くしっかりと双子を捉えていた。ハロウィンに参加した時点で双子が何かをやらかす事はすでに予測済み。
「……様子を見てこようか」
 北都はどの程度の悪戯か確認するべく双子のテーブルに向かった。もし、迷惑が掛からない程度であれば見逃すつもりで。

 双子のテーブル。

「ハッピーハロウィン♪」
 北都は籠片手に一店員として登場。
「!!」
 いきなり声をかけられた双子は肩を震わせ、行動停止。
「その危ない薬はしまってね」
 『薬学』と『博識』を有する北都は瞬時にヒスミの手にある魔法薬が危険物であると看破した。
「危なくないぞ。というか、何で知らない人に注意されなきゃいけないんだよ」
「そうそう。それに今日はハロウィンだぞ」
 相手が北都とは知らぬ双子は少し強気に反論。
「でもそれ見たところ過ぎた悪戯になって他のお客様の迷惑になるから」
 まだ初対面の人を演じる北都は再度優しく注意する。
「むぅ」
 反抗的な目で口を尖らせる双子。
 そこで
「それにね、初対面じゃ無いんだよねぇ」
 北都は表情をにっこり笑顔に変える。
「?」
 北都の台詞に首を傾げる双子。
「二人と仲良くして貰っている北都だよ」
 北都は笑顔に身も凍る冷たい気を込めつつ名乗った。
「!!!」
 名前を聞いた途端、一瞬にして双子は硬直。
 しばらくして硬直が解けたかと思ったら
「……嘘だろ。というか何でそんな正体が分かり難い格好してるんだよ!!」
「そうだぞ。困るだろ!」
 悪い顔色をますます悪くして反省の言葉ではなく北都の格好に対して抗議を始める。
「困るって二人以外誰も困っていないただの変装だよ。何より今日はハロウィンで分かり難い格好だろうと個人の自由だよ」
 北都は慣れた様子で双子の抗議を早々にあしらった。
「むぅ」
 正論であるため双子は言葉が出ず、悪戯にも手が出せない様子。
「早速だけど、それはこちらで処理させて貰うよ」
 魔法薬を速やかに北都が回収。
「あーーー」
 双子は嘆いた。
「他には持っていないよね?」
 いつもの事なので嘆きには驚かず、粛々と検査を続ける。
「このお菓子以外持ってるわけないだろ」
「後はみんなを楽しませる物しかない」
 双子はお菓子の入った容器をテーブルに置いて手を上げて主張。
 そこに
「……嘘はいけませんよ。他にも隠し持っているでしょう」
 気になって様子を見に来たクナイが加わった。しかも『嘘感知』によって双子の嘘まで見抜いてしまう。
「クナイの言う通り持っているならほら、全部出して」
 北都が再び凍る笑顔を湛えながら危険物の提出を求めた。
「う〜〜〜」
 逆らえない双子は大人しく隠し持っていた悪戯道具をテーブルに並べた。
「これは他人に迷惑が掛かる物だから処理するよ。クナイ」
 北都は手早く危険度が高い物を見抜いてからクナイに渡した。
「分かりました」
 双子の目に触れないようにと早々にクナイは引っ込み、処理した。
「あぁ、ここに立ち寄るんじゃなかった」
「何でこうなるんだよ。いるんだったらどこかに書いておけよー」
 散々な目に遭い双子はがっくりと肩を落とつつ不満を吐き出す。
「これあげるから溜息出さない」
 双子を元気付けようと北都は配布用のクッキーを渡して宥めた。
 受け取った双子はクッキーを口に放り込み
「猫の肉球かぁ」
「……美味しい」
 ぼそりと感想をこぼした。
 この後、双子は適当に注文して店を出て行った。そのまま大人しくしているかと思いきや学校に戻り荷別の悪戯道具を装備してまたハロウィンを楽しんだという。
 それに対して北都は
「……あの二人は懲りないな」
 といった感じであった。

 とにもかくにも仕事は大盛況の内に終了した。途中でユルナが変身したりと変化はあったが。
 北都は満面の笑顔で
「お疲れ様にゃん♪」
 共にハロウィンを盛り上げた皆の労を労った。
「そちらもお疲れ様。手伝ってくれて本当にありがとう」
 責任者であるサブレで変身したユルナは北都に丁寧に頭を下げた。
 その時、周囲がざわつき始めた。
「おい、大丈夫か」
 スタッフが慌てた様子で声をかけたのはクナイだった。なぜなら北都の労いにとどめを刺されて鼻血噴出で倒れたからだ。
「クナイ!」
 北都は急いで倒れたクナイの元に駆けつけた。
「こりゃ、貧血だな。少し休ませておけばすぐに目を覚ますはずだろうが」
 と男性スタッフ。
「やっぱり具合が……」
 北都が心配げに見つめるクナイの表情はいい笑顔であった。
 クナイは近くのベンチで休ませる事にした。側には北都が付き添っていた。ユルナ達が心配し残ると主張するも北都が大丈夫だと言って帰らせたのだ。

 ベンチ。

 夜空にはまだ花火が打ち上げられ、ハロウィンの空気は続いていた。
 北都は自分の膝枕で眠るクナイに優しい笑みを浮かべた。倒れてからまだ目覚めていない。
「クナイ、今日はお疲れ様」
 北都は眠るクナイを労い、頭を撫でた。