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最強アイドルへの道

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最強アイドルへの道
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リアクション

「そう簡単に負けませんわよ!」
 イングリットはバリツを駆使して、しなやかに攻撃をかわしていく舞香を徐々にコーナーの隅へと追いつめていく。バトントワリング演技用のピンクのハイレグレオタード姿の舞香は、見た目の美しさでも観客を湧かせていく。
「あたしだって、負ける気はないわ!!」
 舞い踊るようなステップ。リズミカルでアクロバティックなその格闘技は、イングリットの強力な技をもいなしていく。
 チアキックがイングリットに決まる。そこに横から飛び出したのは詩穂だ。詩穂は舞香にサブミッションをかけようとするのを見切り、舞香は一瞬早く後ろ回し蹴りを放った。
「さすがに、そう簡単には決まらなかったね。でも、これはどう?」
 舞香の攻撃を上手くかわしながら詩穂は尚、舞香を狙っていく。舞香と詩穂が睨み合ったところに、裁と愛美が飛び込んできた。
「強く、華麗に、美しく☆ ボクの舞闘を魅せてあげるよ♪」
 裁はアクロバティックながらもカポエイラとテコンドー、中国系武術、ルチャ・リブレを混ぜた戦闘で、愛実を追いつめていく。
「ボクは風、変幻自在の風(ボク)の動きを捉えきれるかな?」
 素早い動きで繰り出されるフィニッシュブローが愛美に決まる。スタミナと身軽さを活かし、リング内を縦横無尽を飛び回る裁。
「こちらも負けていないよ!!」
 愛美も、影すら見えない本気の蹴りを裁に叩き込む。裁と舞香に襲いかかるのは、愛美の蹴りだけではない。詩穂のサブミッション、イングリットのバリツも襲ってくるのだ。
「く……っ!!」
 愛美の蹴りを避けた裁に、イングリットの一撃が叩き込まれる。と同時に、舞香を詩穂の関節技が捉えた。
 セレアナがクラヴ・マガの技の組み立てを駆使し、舞香に攻撃を加える。時間の経過と比例するように、セレアナの技の精度は研ぎすまされていく。リング上の緊張に、セレアナの意識が冷たく冴えわたっていく。
 イングリットと愛美に二人掛かりで押さえつけられた裁は、遂に動けなくなった。舞香も、セレアナに抑え込まれて身動きが取れなくなった。
『初っ端から二名脱落だ!! 残り十八名!!』
「まだまだ、この程度で音を上げてはならないであります!」
 相変わらず卑怯な手を使う吹雪は、ハイナをゴングで滅多打ちにしていた。……が、突然その動きが止まった。
『ちょっと待て』
 観客兼解説として座っている夏侯 淵(かこう・えん)が、フラワシを使って止めさせたのだ。
 淵は、皆が規則を了解して臨む試合に泥を塗るような反則や不正をする人を止めようと考えていた。
『ワンモアタイムで再現するか、サイコメトリをした映像をソートグラフィーでパソコンに映し出せば、動かぬ証拠となる』
「そのようなことは百も承知、反則は嗜みであります」
 吹雪も引く気はない。観客席から巻き起こるブーイングに軽く手を挙げて応えると、隙をついて吹雪に関節技をかけようとしていた詩穂に素早く噛み付いた。
『激しいブーイングを受けて尚、更に反則を重ねていく!!』
「もう怒ったでありんすよ!!」
 ハイナの踵落としに対し、背中を向け体を亀のように丸める吹雪。
「護身開眼!!」
 背中を丸めれば耐えきれる……と踏んだのだろう。
「そう簡単に怯んだりしないわよ!」
 しかし、背後から詩穂が吹雪の肩と首に複合的な関節技をかけようとする……そんな二人に、静かに近付く影があった。
『これ以上は見過ごせぬ』
 レフェリー、正子が吹雪の元へと歩み寄っていたのだ。正子は黙ってむずと吹雪の両足首を掴んだ。
「あ」
 有無を言わさず、正子はそのままジャイアントスイングをかまし、吹雪をリングの外へと放り投げた。
 が、叫びを上げたのは吹雪だけではない。吹雪の近くにいた詩穂とハイナも、吹き飛ばされる吹雪に巻き込まれて飛ばされ、ロープに当たって落ちた。
 二人はリングアウトこそしなかったものの、ロープに当たってリングに倒れた。
『脱落! 残り十七名!!』
 体力の削られた二人を見過ごさなかったのは、謎の魔法少女ろざりぃぬとハートブレイクカンナである。
 ろざりぃぬは詩穂に近寄り目つぶしをしようとした……が、詩穂は先のダメージなど響いていないとでも言うかのように素早くろざりぃぬから逃れ、体勢を整える。
 一方。既に吹雪に小麦粉で目つぶしをされたハイナには、カンナの放つえぐい本気の蹴りが内蔵を抉るように放たれた。
 標的をハイナに変えたろざりぃぬは、顔面ウォッシュでハイナにダメージを与えていく。
「どジャアァ〜〜ん! 私の魔法はダーティディーズダーンダートチープ!(いともたやすく行われるえげつない行為)」
 ブーイングという名の歓声を浴びるろざりぃぬは、楽しそうだ。一方、倒れたハイナを横取りするように、押さえつける詩穂。……ハイナが三カウント内に立ち上がることはなかった。
『おおっと! 続いてもう一人脱落だ!! 残り十六名!!』
「まさか、こんなに早くハイナが脱落するとはな……まあ、ついていなかったということもあるだろう」
 エクスは横目でハイナを見ながら、周囲を挑発する。
「妾にはこの身一つで充分! 小娘共、かかって来るが良い!」
「じゃあ、お相手を頼もうかしら」
 セレンがエクスに対峙した。
「妾を挑発しようとは、良い度胸ではないか!」
 エクスはニヤリと笑うと、セレンの脇をすり抜けた。が、セレンはエクスの姿を目で追いながら、
「最後に立つにはこのあたし……誰にもこのあたしを倒せないわよ!」
 エクスはその小さい身体を活かしてちょこまかと動いては、柔術を用いて翻弄していく。
「ククク……遂に妾の力を見せる時が来た!」
 掌打と平手打ちを組み合わせながら、顔を狙っていく。一方のセレンはエクスの攻撃をかわしながら、セレンクラヴ・マガと格闘技、プロレス技などの組み技をかけていく。
 と、そこに横から飛び込んできたのは、ルーシェリアだ。狙われたのはエクス。ルーシェリアはエクスと同等の素早さで背後を取ると、腕で首を締め上げた。
 エクスの体力が奪われていく……かとおもいきや、横から飛び入ったカンナが、ルーシェリアに毒霧を放った。そこからのバズソーキックという連携が決まり、ルーシェリアは意識を失った。
『脱落! 残り十五名!!』
 ろざりぃぬに攻撃を仕掛けてきたのは、セレンだ。ろざりぃぬはセレンの攻撃に対して受け身を取った。観客からも、その魅せるような受け身に対する声が上がる。
「そう簡単にやられないよ☆」
 セレンの技にダメージを受けつつも、どうにかその手から逃れたろざりぃぬは、必殺のスリーアミーゴスをかけた。そこからのフロッグスプラッシュというコンボに、セレンが倒れた。
 ……が、すぐに起き上がるセレン。むしろ燃えてきたとばかりに、その瞳は熱く戦場を見据えている。
「こんな程度で、離脱なんてしないわよ!」
 セレンは、見境なく目の前にいる女たちに技をかけていく。その標的となったのが、二人の覆面ペガサスたちだ。
「いくわよ!」
 マスク・ド・ペガサスはコーナーの最上段から、リングに倒れているブラック・ペガサス目掛けて飛び降りた。間一髪、転がって避けたブラック・ペガサスは、素早く体勢を立て直して容赦ない一撃を加える。
 そこに飛び込んでいったセレンに、マスク・ド・ペガサスとブラック・ペガサスの目が向けられた。どちらが、というわけでもなく、二人の覆面ペガサスたちは同時にセレン目掛けて飛んだ。
 交差するように放たれる一撃。セレンは面白いとばかりに受け身をとり、そのまま攻めに転じる。
 マスク・ド・ペガサスに打撃を加えると同時に、コーナーの隅で攻撃の機会を窺っていたルカに一撃を加える。ルカは目立たないように隅に陣取り、僅かな隙にも呼吸を整えて乳酸の蓄積を抑制していたのだ。
 だが、攻撃を受けたとなれば話は別だ。ルカはセレンの呼吸を奪うべく、心臓の位置目掛けて的確に突いた。強力な一撃に膝をつくセレン。そのままセレンを引き倒し、ルカは関節をきめようとした、まさにその時。垂の投げ飛ばしたイングリットがセレンにぶつけられた。
 イングリットとセレンは、凄まじい勢いでリングの外へと飛ばされた。
『一気に十三名まで減った! それでもまだリング上は混み合っているな』
 ブラックペガサスに飛びかかっていったのはルーシェリアだ。背後から飛びかかっていき、その勢いのままに押さえつける。マスク・ド・ペガサスには、カンナの蹴りとろざりぃぬの目つぶしが襲いかかる。
「この……!」
 翼を使って飛び上がろうとするマスク・ド・ペガサスの足をろざりぃぬが引っぱると、カンナが容赦ない蹴りを叩き込む。
「うっ……」
 二人がかりで抑え込まれたマスク・ド・ペガサスは、そのまま動けなかった。
『残り十二名……っと、おお!?』
 敗れたマスク・ド・ペガサスの敵とばかりに、ブラックペガサスがカンナ目掛けて空中殺法を放つ。と同時に、ブラックペガサスはそのままカンナを抑え込んだ。
「そんなことしちゃうと、こうだぞ☆」
 横からろざりぃぬの邪魔が入る……と思いきや、ろざりぃぬにルーシェリアの飛び蹴りが炸裂した。そのままもみ合った二人は、ブラックペガサスが横からかました強力なタックルもあり、リングの外へと落ちてしまったのだった。
『三名脱落!! 一気に残りは半分を割って九名だ!!』
 いよいよ、決着がつこうとしていた。