リアクション
第15章 対の魂 Story2
「やっぱり、別の存在として生きるのは無理なのかな…」
どちらもこの世界で暮らせる手段はないか、美羽は腕組して考え込む。
「ラスコットさん、何かいい方法ない?」
「別の者としてに、こだわらなきゃね」
「え…?」
「1つの身体を共有するってことかな。まぁ…結果的に、片方の身体的な意味の死はあるんだけどさ」
魂は生存できるが、その器であったものは機能しなくなると告げる。
「結局、片方への心臓は必要になってしまうんだよ」
「つまりどういうことなんだ?」
グラキエスはモニターに寄り、真剣に聞き入る。
「両方とも生存するためには、2つの魂が1つの身体にいればいいってこと。身体的な死はあっても魂の死はないってことだよ」
「―………?」
「どちらかの身体が死んでも、魂は生きているから結果的にどちらも生存は可能ってことですよ、グラキエス様」
「そういうことなのか。…魂を融合させるのだろうか?」
「んー、それだと意識はトラトラウキ主導にしなきゃいけなくなるね」
本質を変えることはできないのだから、災厄を甦らせた結果だけが残ってしまうと説明する。
「合わせずに、一応は赤いのほうを主と考えるべきか。残す身体は、どちらにすればいいんだ?」
「元にしたほうの能力の特性が強く残るからね。その点を考えればトラトラウキかな」
「今回の件を踏まえるとそうだな」
災厄をもたらすことを阻止することが目的だったのだから、黒のほうにする選択はありえないのだと理解する。
「(和輝、この子の体…なくなっちゃうの?)」
「(封印せずパラミタで暮らさせたいというのなら、そうするしかないな)」
「(いっこの体だけじゃ大変そうだよ。むー…、モノを壊しちゃったりするはいけないことだし。そういうのがなきゃ、アニスとも楽しくお話できるよね!)」
うまくいけばお話相手になるかな?と、にこにこしながら精神感応で話す。
「保護した子供のことと、今後について話すだけかと思ったけど。思いがけないことする人がいたものね」
グラルダは予想外のことをしてくれたものだと、グラキエスをじっと見つめる。
「いいんじゃない?元々、同一の存在なのだから不自然ってことはない」
「リスクを考えると安易な気がするよ」
よく話し合ってからのほうがよいのではとクリスティーが言う。
「本質を変えられないのに、どちらも自由にしたい。ならどうするか?幸い、赤のほうは破壊的な能力は低いようだし、アタシはその身体を使えば問題ないと思うわ」
まさに同一の存在であり、災厄との対極として同一としてありえない。
しかし、魂は対であり同一そのものである。
目で見たもの感じたもの全てが真実でなく、本質を理解することでその中に等しい物事が隠れている。
校長室でボコールに行った尋問での言葉もそれにあたるのだと今なら理解できる。
「結局、どちらかの心臓は必要ってことなんか」
「二人を自由にしてあげるなら、方法は1つしかないってことだね陣くん」
「しっかしなぁ、体1つってのは…」
「ワタシたちも神ではないから、持って生まれた本質を変えるっていうのは、すごく難しい問題なんだよ」
「どうしても何かに攻撃したいっているならさ、陣くんがいるじゃん」
「はっ、マジ…ありえんから」
さすがにイラッときた陣は、もみあげをぐいぐり引っ張る。
「砂袋なんぞ断固、断る!」
「保護して終わりではないでしょうね。スイーツショップで遭遇した時、なにやら不穏な感じがしましたよ」
「―……はぁ、厄介ごとが山のようやな」
「同一化の話題はさておき、ひとまず保護はどのようにするのかな?」
「トラトラウキさんのほうは皆さんが使っていたお教室で、暮らしてもらおうとおもいますぅ〜」
魔法学校の教室スペースを利用し、仮住まいとして与えると涼介に言う。
「黒のテスカトリポカの居場所ですがぁ…。地下にちょっとした一室があるので〜、…そこくらいですかねぇ。把握しておきたい人は、私かラスコット先生に後ほど聞いてくださぁ〜い」
「そうさせてもらうよ。で、校長。次の予定は?」
「これからイルミンスールに戻ってもらって、お祭りの準備を始めますぅ〜♪」
任務の疲労があるのにありえないとざわつく。
「文句は聞きません〜。はいはい〜、さくっと移動開始してくださいねぇ」
「エリザベート様。セレアナ様たちがまだ海で遊んでますわ」
「呼び戻すですぅ!」
簡単に建物の修繕を手伝いを済ませ、自分たちのご褒美として海へ遊びにいっているのだが、さっさと呼び戻しましょう♪などと鬼のような一言で片付けた。
「お祭りとっても、ただの遊びじゃないんですし〜。とっても急いでるんですぅっ」
幼い校長が“お祭り”と口にすると、どうにも遊びにしか聞こえなかった。
「楽しそう♪ルカもお手伝いするね」
「遊びでないと言っているだろう!」
仕方ないパートナーだと淵がため息をつく。
「淵さん、わたくしたちも参りましょう」
「あ…。そ、そうだな、オメガ」
不意に手を握られ心臓の鼓動が早くなる。
「美味しいものいっぱいあるかにゃ」
「クマラが思ってるものとは違うと思うぞ」
「元気なものだね、私はもう疲れたよ」
昼から夕方にかけて動きっぱなしのメシエは、どこかで休みたい気持ちでいっぱいだった。
「エルデネスト…」
「分かっていますとも」
疲労で眠たかったが皆行ってしまうし、祭りが気なって仕方がないという様子だ。
グラキエスを抱えて宿を出た。
「おまえも疲れているんじゃないか?俺が代わろう」
「いえ、結構です」
主のお世話をしたいアウレウスが手を差し出してきたが、きっぱりと断った。
「帰ってしまったベルクたちにも連絡してもらえるか?」
「はい、そちらも私にお任せください」
安らかな睡眠中は、全て一任してもらおうと爽やかな笑みを浮かべる。
2人の間に入れないアウレウスにとっては面白くない状況だったが、主の安眠のためしぶしぶ我慢する。
「北都、お姫様抱っこしようか?」
「ご褒美はもうあげたでしょ、やだ」
「背中なら…あっ」
「ものすごいスルーされてますね、ソーマさん」
ソーマのセリフを無視し、北都は足早に行ってしまう。
「海でもっと遊びたかったわ」
「わがまま言わないの、元々そういうことじゃなかったでしょ」
「お祭りなら出店あるかしら?」
「セレンったら…」
任務中の緊張感はどこへいったのやら、のんきに食べ物のことを考えている恋人に呆れる。
「おりりん、ねむいー」
本当は眠たくなかったが、お手伝いとして呼ばれる以外はほとんど甘える機会がなかったから、うそっこの居眠りをする。
「寝ちゃっていいよ、スーちゃん」
肩から腕へとおりてきた小さな少女を抱える。
「魔法学校に到着したら、3時間くらいの仮眠してくださぁ〜い」
「エリザベート校長、24時間寝ていいかな」
「働いてくださいよぉ、ラスコット先生」
軽い冗談なのだろうがあっさり却下してしまう。
「はいはーい、どこで寝ればいいんでしょうか」
「真宵さん、カフェがあるので適当にそこでお願いしますぅ〜」
「わたくし魔法学校のほうなんで、帰宅してからくる選択もあるかと思います」
「3時間後に起床ですからぁ、カフェでお願いしますねぇ♪」
確か、テーブルや椅子はあったが、まともに寝られるような場所はなかった気がした。
ゆったりした椅子があるネットカフェ難民よりも、さらに酷く思えたのだった。
かなり遅れてしまい、大変申し訳ありません。
次回は、お祭り事とプラス0.5ほど、どさっとある予定です。
ガイドがざっくり決まり次第、マスターページにちょいちょい書き込んでおきます。
今回、魔道具の能力が上昇した方々を、下記に記載させていただきました。
●敬称略
■涼介・フォレスト
・ホーリーソウルII
呪術の解除:呪術にかかった対象から、やや離れた位置(5m程度)で解呪を行える。
■ミリィ・フォレスト
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲350mに拡大。
呪術の解除:呪術にかかった対象から、やや離れた位置(1m程度)で解呪を行える。
■ソーマ・アルジェント
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲350mに拡大。
・結界石:神籬(ひもろぎ)
結界範囲:結界を四方20mまでとし、100m以上離れると効果が消える。
■セレンフィリティ・シャーレット
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲350mに拡大。
■佐々木 弥十郎
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲500mに拡大。
■賈思キョウ著 『斉民要術』
・エターナルソウルI
死者蘇生:2時間以内であれば、7割の確立で蘇生可能。
■セシリア・ノーバディ
探知範囲:自分を中心に、最大周囲130mに拡大。
■ヴェルディー作曲 レクイエム
・アークソウルI
探知能力:生物に憑依していない霊、魔性のみを探知しやすくなる。
探知範囲:自分を中心に、最大周囲70m。
闇黒属性への抵抗力:自分を中心に20mの範囲にいる仲間のみ、闇黒属性への抵抗力をさらに高める。
■遠野 歌菜
・ホーリーソウルII
呪術の解除:重度の呪術を治療しやすくなる。
■アニス・パラス
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲300mに拡大。
■グラキエス・エンドロア
・アークソウルI
探知範囲:自分を中心に、最大周囲300mに拡大。
・結界石:神籬(ひもろぎ)
結界範囲:結界を四方20mまでとし、100m以上離れると効果が消える。
■日堂 真宵
・結界石:神籬(ひもろぎ)
結界範囲:結界を四方20mまでとし、100m以上離れると効果が消える。
■七枷 陣
・アークソウルI
探知能力:生物に憑依していない霊、魔性のみを探知しやすくなる。
探知範囲:自分を中心に、最大周囲80m。
闇黒属性への抵抗力:自分を中心に10mの範囲にいる仲間のみ、闇黒属性への抵抗力をさらに高める。
■リーズ・ディライト
・アークソウルI
探知能力:生物に憑依していない霊、魔性のみを探知しやすくなる。
探知範囲:自分を中心に、最大周囲60m。
闇黒属性への抵抗力:自分を中心に20mの範囲にいる仲間のみ、闇黒属性への抵抗力をさらに高める。
・エターナルソウルI
▼瞬間的に上昇
最高時速(効果対象1人の場合):155kmまで、飛行・歩行等のスピードを加速させる。
発動限度:20秒。(瞬間的効果/10kmプラス20km)
対象が1人増えるごとに、発動限度10秒減少する。
▼長く持続させる場合
時速(効果対象1人の場合):125km、飛行・歩行等のスピードを加速させる。
速度上昇、対象の人数によって、疲労感・精神力の負担が増減する。
発動限度(効果対象1人の場合):20分間。(速度上昇/20分÷2km)
■ジュディ・ディライト
・哀切の章II(強化問わず)
効力上昇:下級の霊、魔性などを素早く祓いやすくなる。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲25mの距離。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
・裁きの章II(強化問わず)
効果範囲:自分を中心に、最大周囲25mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
・悔悟の章I
効果範囲:自分を中心に、最大周囲25mの距離。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
■仲瀬 磁楠
・哀切の章II(強化問わず)
効力上昇:下級の霊、魔性などを素早く祓いやすくなる。
中級の霊、魔性などを祓うことが可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
・裁きの章II
効力上昇:機械に憑依しない中級の霊、魔性なども対処可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
・悔悟の章I
効力上昇:中級の霊、魔性なども対処可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
■カティヤ・セラート
・哀切の章II(強化問わず)
効力上昇:下級の霊、魔性などを素早く祓いやすくなる。
中級の霊、魔性などを祓うことが可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
・裁きの章II
効力上昇:機械に憑依しない中級の霊、魔性なども対処可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
・悔悟の章I
効力上昇:中級の霊、魔性なども対処可能。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲15mの距離。
範囲を広げるためには、相応の精神力を消耗。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
■緒方 章
・哀切の章II(強化問わず)
効力上昇:下級の霊、魔性などを素早く祓いやすくなる。
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
術を発動するために必要な精神力が、祓魔術を学び始めた頃よりも3分の2軽減。
■グラルダ・アマティー
・裁きの章II
効果範囲:自分を中心に、最大周囲40mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
■清泉 北都
・裁きの章II
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
■リオン・ヴォルカン
・哀切の章II(強化問わず)
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
■禁書 『ダンタリオンの書』
・裁きの章II
効果範囲:自分を中心に、最大周囲30mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
・哀切の章II(強化問わず)
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
■コレット・パームラズ
・哀切の章I
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
■フレンディス・ティラ
・哀切の章II(強化問わず)
効果範囲:自分を中心に、最大周囲45mの距離。
・悔悟の章I
効果範囲:自分を中心に、最大周囲35mの距離。
術の効果を与える対象数は変わらず1体まで。
■五月葉 終夏
・スー(クローリスII)
1度の精神力の消耗で、香りの効果が届く範囲:スーを中心に、周囲100mまでに拡大。
香水:生成時間・1瓶×1分、1瓶につき3回まで使用可能。
持続時間は1回につき、15分。
クローリスの花で香水を生成し、呪術に対する抵抗力を得る。
■エース・グランツ
・アーリア(クローリスII)
呪術の抵抗力:下級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力が強くなる。
中級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力を高める。
■アウレウス・アルゲンテウス
・ウィオラ(クローリスII)
呪術の抵抗力:下級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力が強くなる。
中級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力を高める。
■緒方 樹
・エキノ(クローリスII)
呪術の抵抗力:下級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力が強くなる。
中級の霊、魔性などによる呪いの抵抗力を高める。
次回、シナリオでお会いできる日を、楽しみにお待ちしております。