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 広場の別の場所では、少しこじんまりとした別のかまくらが作られていた。
「これが日本の『かまくら』ってものなのね」
クリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)は、傍らの神月 摩耶(こうづき・まや)に教わって作り上げた雪のドームを見てそう言った。二人でゆっくりするには丁度良いくらいの大きさに仕上がっただろう。
 クリームヒルトと摩耶は早速中に入り、七輪などを持ち込んで寛ぐことにした。七輪の上には、摩耶が作ってきたぜんざい入りの鍋を置いておく。
「かまくらの中では、これを着るんだよ♪」
 摩耶は大きな半纏を取り出して羽織り、自分の後ろに入るようクリームヒルトを手招きする。彼女曰く、これが正しい半纏での防寒法らしい。
「さぁ、出来たわ摩耶! 此れで良いのかしら?」
 後ろに回ったクリームヒルトがもぞもぞと半纏の中を潜って顔を出すと、まぎれも無い二人羽織の状態となる。
「ふふふふ、摩耶♪ 抱きしめてあげる♪」
 そうしている間に、鍋の中のぜんざいがふつふつと音を立て始めていた。
 摩耶はスプーンでそれを掬いあげると、適度な温度になるよう息を吹きかける。
「ふーふー……はい、クリムちゃん、あーん……美味しい?」
「ええ、美味しいわ」
「えへへ。いっぱいあるから、どんどん食べて……んぅ!?」
 ふいに唇を塞がれて、摩耶はぱちぱちと瞬きをした。声を上げる暇もないまま口の中に甘く熱いものが流し込まれて、思わず息が詰まりそうになる。お互いにゆっくりとその甘さを味わっていると、冬の寒さなどどこかへ消し飛んでしまうのだった。
「……ふぁ、ぁう……クリムちゃんったらいきなりヒドいよぉ……」
「あら、摩耶の味がして美味しいわよ。うふっ♪」
 言葉の割に嬉しそうな顔の摩耶を見て、クリームヒルトは笑った。次いで彼女は上気した摩耶の頬に口付けると、豊かな双丘に手を伸ばす。
「きゃんっ!?ぇ、お、おっぱい揉んじゃ……」
「此方のお餅も美味しそうね、摩耶♪」
「ゃ、ボクのおっぱいお餅じゃないよぉ……きゃぅぅん♪ だ、ダメだよぉ誰かに見られちゃうぅぅ♪」
「あたし達の熱々っぷりを見せつけてあげましょうよ♪」
 嬌声とともに吐き出された摩耶の熱い吐息が、かまくらを溶かす白い蒸気となって昇っていく。
 二人だけの時間は、まだ始まったばかりだった。