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飛び交う光線と博士の砦

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飛び交う光線と博士の砦

リアクション

 無言で先手をうったのはセレンフィリティだった。
 その手には光線銃が握られている。光線銃は先の警備ロボットとの戦いの際に取り上げた者だった。
「……忠実光線銃ですね。私を忠実状態にさせてどうするおつもりですか?」
「博士を押し倒して貰うわよ!!」
 助手は表情1つ変えずセレンフィリティの手元を見ていた。
 トリガーをセレンフィリティが引こうとしたときだった。
「っ!?」
 セレンフィリティは助手が背後に回ってくることを”行動予測”で察知し、慌てて背後を振り返った。
「あなた……ただの助手じゃないわね」
「……AI01。人間により近い思考能力、それ以上の機動力を持ったアンドロイドです」
 淡々と答えた後に助手は続ける。 
「もう一度忠告させていただきます。お引き取りをお願いいたします。さもなくばここで貴方達と戦わなければ行けません」
「悪いが、その忠告を飲むことは出来ないぜ?」
 平助は拳銃を取り出しながら静かに言った。
 助手は平助の攻撃に備えようとしたその時だった、助手は警備アンドロイドに捕まえられた。

「何のつもりですか? DDM−23号」
「ピピ……カクホメイレイ遂行」
 警備アンドロイドのうち1体が、助手の背後から羽交い締めしていた。
 助手は背後を見るなり、すぐにそれが忠実光線によるものだとわかり、あたりにスキャンをかける。
 そして、ようやく部屋にもう1人潜んでいることを助手は察知した。
「隠れて光線銃を放つとはやられました……隠れても無駄ですよ」

「あ〜あ、ばれちゃった」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は”ベルフラマント”を外して、仕方なくその姿を現した。
 その手には光線銃が握られているが、すでに警備アンドロイドに使ったためもう使い物にはならない。ノーンは光線銃を投げ捨てた。
 本来であれば姿を消したところでアンドロイド達のセンサーに引っかかるはずだった。
 しかし、運良くセンサーがたまたま働いていなかった警備アンドロイドから光線銃を奪ったのだった。
「刑事さん、ダメ元で提案だけど博士が投降すれば全て許すって駄目かなあ?」
 ノーンは平助を見るなり唐突にそういった。
 思わぬ言葉に平助は驚き、助手は口を小さく開けた。
「おいおい、お嬢ちゃんなにを言ってんだ。あの極悪人を許すたぁ」
「極悪人って言っても、クリスマスプレゼントを強奪しただけだよ。それに未遂だから、それなりに刑は安いはずだよ」
「クリスマスプレゼントを奪うなんて凶悪犯よ!?」
 ルカルカが猛烈な批判する。途中セレンフィリティ達も「犯罪者に変わりは無いわ」などと反論する。
 それでもノーンは”判官の心得”を元に、いままでのペーパの刑は軽い事を主張する。
 ノーン達の会話は平助にとってはちんぷんかんぷんらしく、始終髪の毛をかいて聞くことしかできなかった。
 ノーンには平助が改心してくれればという期待があった。
「だったら、警察に強力してもらうっていうのはどうかなあ。きっとみんなの為にスゴイ発明をいっぱいしてくれると思うよ?」
「ああ、そりゃあありかもな……だがそれは裁判が決めることだ。それに博士が改心するとは限らないだろう?」
 平助は腕を組みながら答える。そして、助手を見た。
「まあ、万が一改心することがあれば、情状酌量はあるかもな」

 それを聞いたノーンの表情がぱあっと明るくなった。
「なら、早く博士のところへ……あれ?」
 そういって、扉へとノーンが真っ先に向かったときだった。
 ”野生の勘”で何かに気がついた。
「段ボールなんてあったっけ……?」
『ぎくっ!』
「え」
 セレンフィリティやルカルカ達が、段ボールを取り囲むようにしてのぞき込む。
「なっ、何!? 段ボールから煙が」
 段ボールから白い煙が勢いよく吹き出し、部屋中へと立ちこめる。
 たちまち視界は煙に取られていった。

「泡銭さん、動かないで!」
「なんだ!?」
 ”銃型HC弐式”で体温を元に平助を探していたルカルカは慌てて叫んだ。
 まさに、足下で誰かが”トラッパー”でトラップをしかけて居るのが見えたからだった。
「ええいっ!!」
 ルカルカは”覚醒マスターニンジャ”と超加速で平助の元へと駆けつけ、遠くへと避難させた。
 途端、『ポンッ』という音と共に、何かが爆発した。
 ようやく白い煙は消えていく。
「……博士が開発した”987号・モワッとケムリ君”……封印していたはずですが」

「戻って!」
 ”野生の勘”で不穏な空気を感じたノーンは警備アンドロイドに、助手の束縛を解き回避することを命令する。
 直後その場所に小さな爆発が起きた。
 いつの間にか”歴戦のダンボール術”を解き、横にいる葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の手元を助手は見た。
「……それは思ったところに【笑い】を起こすことができる”集中爆発光線”」
「くっくっく、これがあれば今度こそ奴らを……!」
 助手の解説を聞くなり吹雪はにやりと笑みを浮かべた。
 吹雪の背中には今様々な、発明品が盗みもとい担がれている。

「……よく分かりませんが助かりました……どうして助けてくれたのですか?」
「戦友が危険に陥れば助けるのは当たり前であります!」
 実は博士の発明品が一番の目的であることは、ひとまず心の奥に押し込める。

「むー、邪魔するなら無理矢理でもどいて貰うよ!!」
 ノーンは吹雪を軽く睨みながら、刑事に先へ行くように指示する。
「だが、嬢ちゃん1人で大丈夫なのか」
「大丈夫だよ! すぐ追いつくから!!」
 ノーンの言葉に刑事は頷いて先へと急ぐ。
 だが、助手に行く手を塞がれた。
「失礼します」
「ちっ、やっぱりやるってのか」
 助手は低姿勢で平助へ目がけ突進する。
 そんな平助を守るようにして、警備アンドロイドが入り込んだ。
 刹那、アンドロイドの素早い蹴りが助手に繰り出される
「っ……正気に戻す方法がない光線銃を作る、博士の駄目発明品加減はさすがですね」
 助手は格闘にも強い警備アンドロイドに苦戦を強いられた。
 平助は助手が警備アンドロイドに気を取られている間に、先へと進むのだった。

「喰らえでありま――あ」
 吹雪は背中に背負っていたバックパックから発明品のうち一つを取り出し投げつけようとする。
 だが、然斬りかかってくるノーンの”レストレーションソード”が目に入り、慌てて吹雪はそれを避けた。
 何者かが足下に足を引っかけたようだった。
「邪魔はさせないんだから!!」
「なら、さっさと片付けて追いかけるまでであります!」
 ノーンは吹雪に攻撃をさせる暇を与えず、”ホワイトアウト”であたりを真っ白に染め上げた。
 吹雪の周辺は吹雪につつまれ何も見えない。
「無駄! この発明品があればそんなもの――」
 吹雪は背中にある発明品のうち1つを取り出すとスイッチを押してみた。
 途端、袋が割れたような破裂音が響いた。
「ありゃ?」
 吹雪自身、どんな効果があるかも分からないその発明品はまるで炸裂弾のように当たりを火花を散らす。

「何? なんだか、急に眠気がふわぁああっ……」
「……それはどんな寝不足も解消する爆睡……ライト……」
 吹雪、それにノーンと助手は静かに眠りにつくのだった。

 この後、吹雪とノーンは丸1日眠ったままだった。