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リアクション
「今日で夏最後かぁ。そうだ、ダリル、今日は連日会議やら何やらでストレスが溜まっているだろう団長と参謀長を誘って訓練しよう。体を動かせばリフレッシュ出来るし」
「ついでに二人は武人、こちらにとっても有意義な時間になる」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は本日の過ごし方を考えていた。
「という事で行こう」
ルカルカの言葉を合図に二人は金 鋭峰(じん・るいふぉん)と羅 英照(ろー・いんざお)を誘いに行った。
そして、時間に余裕があるからと訓練の誘いを快諾して貰った。
昼、教導団の訓練施設。
「一対一の軍隊格闘技の手合わせもしたいのですが、まずは市街戦の模擬戦闘をしませんか。それも組む相手を変えチーム戦を」
ルカルカが訓練について提案を。
「それは構わないが……」
鋭峰が組み合わせについて何事かを言う前に
「団長とルカ、参謀長とダリルで行きませんか?」
ルカルカが組み合わせについて提案し
「しかも純粋な格闘術で勝負です! ルカもダリルも相当強いと自負してますから思いっきりやるつもりなので団長達も手加減無しでお願いします」
ルカルカは表情を引き締め、負ける気ゼロを見せる。相手が誰であろうと手合わせするからには本気で行く。
「……そう言うのならば、お言葉に甘えさせて貰おう」
鋭峰は提案に乗った。
ルカルカと鋭峰のやり取りを見やり
「……本日は賑やかな事になりそうだな」
「そうだな。ただ、施設破壊なんて事になられなければいいが、しゃれにならないからな」
英照とダリルは苦笑しながらも和んでいた。何せ二人にはそれぞれ鋭峰、ルカルカと互いに唯一の存在を持つ者同士通じるものがあるらしく。
「とはいえ、あの二人にしてやられるのだけは避けたい」
ダリルはルカルカ達を見やった。いくら団長が相手で訓練とはいえ喜んでやられたくはない。
「訓練は訓練という事か」
ダリルの様子から察しは英照は口元を歪めた。
「そういう事だ。勝ち負けではなく切磋琢磨のためとはいえども」
ダリルも不敵に口元を歪めた。
どうやらこの時点で二人の脳内では何をどうするかという作戦が浮かんでいるようだ。
その時、
「ダリル、喋ってないで始めるよ! 参謀長もよろしいですか」
ルカルカの訓練開始の合図が入った。
「あぁ」
「分かった」
ダリルと英照はルカルカ達の元へ行き、訓練を開始した。
訓練開始後。
「……この組み合わせだと向こうは頭でっかちですから作戦や指示は全て団長にお任せします」
ルカルカは身を隠しながらふと向こうのチームが頭脳組になった事に気付き、やりにく訓練になりそうだと悟った。
「そうだな。相手が相手だけに策を弄して来るのは用意に想像出来るが、しかしこちらが対処策を用意するのを見越してあえて無策で来る可能性も」
鋭峰はあれこれと作戦を立てるも相手が相手だけに多少厄介な模様。表情には出ていないが。
「特攻ですか……でもそれもまた考えに入れて来るかもしれませんよ」
頭脳作業は鋭峰に任せているものの気になる事はルカルカも意見する。
「確かに……」
鋭峰は再び頭を巡らせる。相手が互いに力量を知る者達であるため難しい。
「多少無茶な事でもルカやりますよ! むしろ訓練ですから大歓迎です」
「そうか、ならば……」
ルカルカの発言で鋭峰は計算された無茶な作戦を考えつき、ルカルカに指示を出し、自身も行動を開始した。
一方、頭脳組。
身を隠しつつ
「さて、二人をどう相手にするかだが」
「……先の言より訓練は訓練ですが、互いに力量を知っているだけに厄介だ」
ダリルと英照は向こうの出方をあれこれ思考していた。
「二人は俺達が策を弄すると考えているだろう。となれば……」
ダリルが思考の末、ある事を思いつくが言葉にする前に
「無策で突っ込むか。しかし、それも無謀だな。向こうにはジンがいる」
察した英照が代わりに言葉にしたが、鋭峰の存在に読まれている可能性を示唆する。
「あぁ、考えに及んでいるだろう。ルカもいるとなると多少突拍子もない無茶な事をしてくる可能性がある」
ダリルはルカルカの存在から何やらとんでもない事をするのではと考える。
結果、
「……ひとまず定石で警戒しつつか」
「それが無難だろ」
ダリルと英照は警戒強めで行動に移った。
訓練の模様はルカルカが鋭峰の作戦を受け、突拍子も無い無茶な事で攻める、しかしある程度の警戒をしていた頭脳組は一瞬不意をつかれるも立て直し、頭脳組らしく細工の利いた感じで対応。ルカルカの裏で動く鋭峰ともやり合ったり。
使えるのは自分の頭と拳だけなので魔法や武器のような派手さはないが、それぞれが持つ身体能力の高さは目に見えてはっきり映り面白いものであった。
一通り市街戦の模擬戦闘を終えると
「次は軍隊格闘技で一対一の訓練だよ♪」
ルカルカが元気に予定していた次の訓練に誘うと
「では俺は……」
ダリルは別行動に入ろうとする。
それを見て
「ダリルもやろ?」
ルカルカが誘うが
「……いや、俺は……」
ダリルは少々渋る。先程の積極的だった市街戦と違い鞭や銃を愛用するだけあってか消極的であった。
しかし、
「そう渋らず、ひと試合どうだ」
という英照の誘いに
「……そうだな。お手柔らかに頼む」
ダリルは折れて訓練に参加する事に。
そのため自然と
「団長、油断せず、全力で行きます!(今日は良い勉強になりそう!)」
ルカルカは鋭峰の相手となった。ついでに戦闘の良い勉強になりそうと思ったり。
「あぁ」
鋭峰は真剣な表情のルカルカをいつもと変わらぬ様子で迎える。
ルカルカは言葉通り全力で拳や蹴りを繰り出していく。鋭峰は難なく回避し、無駄のない体捌きで攻撃を仕掛けるが、ルカルカもギリギリで回避したりとなかなかの接戦。
しかし、
「……(やっぱり、団長は強い……)」
相手が相手だけに苦戦をするもルカルカはいい顔をしていた。ルカルカの目は相手の動きの癖、息遣い、目の動き、足の運び、その全てを追い、記憶しこれからの糧にしようとしていた。
そのルカルカの気持ちは
「……(ふむ、なかなか)」
鋭峰に筒抜けだった。そもそもこれは訓練という事もあってか本気を出しつつもルカルカの糧になればと動いていたり。ダリルと英照は互いの動きの読み合いをしていた。もちろん対戦相手の変更もした。
訓練が一様の落ち着きを見せた時、
「少し休憩しませんか」
ルカルカは持参した弁当を鋭峰と英照に見せながら声をかけた。
「随分、用意がいいな」
「そりゃ、団長と参謀長との訓練ですから。用意は完璧ですよ」
鋭峰の言葉にルカルカは持参した軽食を広げながら胸を張り、誇らしげ。
「まずは冷たい茶で一息入れましょう」
茶の用意担当のダリルも誘う。
その上
「……折角ですから、ジン、一息入れましょう」
英照にも言われ
「そうだな」
鋭峰は休憩に入る事にした。
休憩時。
「どうです?」
ルカルカは少々緊張しながら食べる鋭峰に味を訊ねる。
「……悪くない」
鋭峰はわずかに手を止め、答えてからまた食べるのを再開した。
「今日は思いっきりやれて気持ちよかったです。こんなに楽しい訓練は久しぶりでしたから。何せ普段いい勝負が出来るの相手がパートナー以外に居ないので」
ルカルカは食べながら楽しそうに言った。
「……こちらも有意義な時間を過ごせた」
鋭峰の淡々としながらも喜んでいる一言。
「そう思って頂けて光栄です。ところで、団長達はいつもはどんな鍛錬をしているんですか?(二人は幼い頃から一緒だったから何か特別な事をしているかも……参考に出来ればなぁ……というか純粋に知りたいし)」
ルカルカは嬉しそうに言うなり気になった事を訊ねた。
「それは俺も興味がありますね」
興味を持つダリルも加わった。
「……現在は基本的な基礎鍛錬だな」
鋭峰はちらりと英照の方に軽く視線を向けてから答えた。
「基礎鍛錬ですか。基礎がなっていなければ、応用は形を成しませんからね。何より戦闘だけでなく基本というものは料理や勉学などにとっても重要ですからね」
ダリルは茶を飲みながら賛同だと鋭峰にうなずいた。
「それで……」
英照がダリル達を見て何事かを訊ねようとするが、内容を察したダリルが
「俺達の方ですか? 俺達は自宅のトレーニング室や背後が森なのでランニングと森での訓練に後は……」
先回りして答え
「ルカファミリー四人の合同だったり単独だったり色々だよ!」
ルカルカが最後を飾る。
「デスクワークばかりじゃなまるしな」
ダリルが苦笑いをしながら言った。
「……そうだな」
英照は同感だとばかりに僅かに口元をゆるめた。
休憩を楽しんだ後、四人は再び訓練を再開した。