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【選択の絆】消え去りし火の表裏

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【選択の絆】消え去りし火の表裏
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旧シャンバラ王都にやってきた
酒杜 陽一(さかもり・よういち)は。

(石原校長は、過去に日本政府から金を奪ってきたらしい。
今回の宝はその金かもしれない。
……その可能性は低いかもしれないが、
パラ実の略奪文化からの脱却の為に活動してきた自分としては、
日本人が身を削って納めた金をパラ実が着服する事態は避けたい。
先んじて宝を奪うか破壊したい)
という、思いがあったのだが。

「なのに、なんなのだこいつらは!」
蝉人間やアールキングの根を見て、陽一は怒りをあらわにする。
「人に襲い掛かってくる者を無視できない。
それに、アムリアナ様や古王国の臣民たちが
築いた旧王都を荒らさせる訳にはいかない!
進みたくば、俺を倒してからにしてもらおうか!」
陽一が宣言すると、
蝉人間たちが襲い掛かってくる。
「面白い。我らの力、わずか1週間の命だが、その間の輝きを見せてやろう!」
陽一は、蝉人間たちを引きつけると、
路地裏などに誘い込んで、各個撃破していった。

倒すか、抑え込むかした蝉人間に、タイムコントロールを使い、
幼虫に戻して逃がす。
(殺すまでもないだろう……)
陽一の、蝉人間への優しさであった。

他方、
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は。

「旧シャンバラ王宮の物でしたら現シャンバラの宝。
それがあればシャンバラが豊かになったりいいことが起きるはず。
ひいてはヴァイシャリーにも恩恵がある。
つまり静香さんにもいいことがあるはず。
そして、それは私にとってもうれしいことです!」

そんな思考の元、パワードスーツフル装備に、
黄金の種籾戟を持ち、
旧シャンバラ王都を進んでいた。
そこに、蝉人間やアールキングの根が現れる。

「これはいったい?
静香さ……もとい、シャンバラ王国のために行きたかったのですが、
他の皆さんが宝さがしに専念できるよう、
なんとかしないといけませんね。
か弱い乙女の足止めではたよりないかもですが、
私にできることをさせてもらいます!」

ロザリンドは、そんなことを言いつつ、
思いっきり黄金の種籾戟を振るって、蝉人間やアールキングの根をぶっ飛ばしまくる。

「えいっ!
やあっ!
きゃああ、怖い!」

「こ、こいつ、手ごわいぞ!」
か弱い乙女とか言いつつ、ロザリンドが力いっぱい攻撃するので、
蝉人間たちも警戒している。

「アールキング、
エリュシオンだけで飽き足らず、
結局シャンバラの方にまでやってきてしまったのか?」
セルマ・アリス(せるま・ありす)は、因縁の相手である、
アールキングの根の出現の話を聞いて、
ミリィ・アメアラ(みりぃ・あめあら)とともに、
旧シャンバラ王都にやってきていた。
「あの大量の蝉人間もアールキング絡みか。
勘弁して欲しいな……。
だけど、宝が本当にあるなら、
あいつらに渡すわけにはいかない。
行こう、ミリィ!」
「うん、ルーマ!
ワタシがあれを一箇所に集めるよ!
それを一気にルーマが掃討して!」
「了解!」
ゆる族のミリィが、軍神のライフルの陽動射撃で、
蝉人間たちを引きつける。
「おーい、こっちだよ!
蝉さんこちらー、てーのなるほーうへー!」
わざと注意を引くために、
ミリィは、蝉人間たちに呼びかける。
案の定、蝉人間たちは、ミリィを追って飛んでくる。

聖邪龍ケイオスブレードドラゴンに乗ったセルマが、
上空から、蝉人間の群れや、アールキングの根に向かって、真空波を放つ。

「わずか一週間の命をこんなに無残に削ってもいいものなのかとも思うけど……。
アールキングの眷属なら、容赦はしない。
アールキングすら手を出そうとしたお宝ってなんだ?
ここであいつらを足止めすることで、
無事に手に入れられるといいんだけど」

そこに、ロザリンドや、陽一も一緒に戦闘に参加する。
「か弱い乙女ですから、あまりお役にたたないかもしれませんが、
敵の足止め、一緒にがんばりましょう!」
「俺も、外見は愛する人に似て可憐な姿だけど、
敵の足止めには全力で協力しよう」
「いや、その、どこから突っ込んでいいのかわからないんだけど……」
パワードスーツ姿のロザリンドと、
理子の影武者の姿の陽一の言葉に、セルマが言った。
「だけど、アールキングは、因縁の相手だ。
一緒に戦ってくれると助かるよ!」
「うん、ルーマ、気を引き締めていこうね!」
セルマの言葉に、ミリィがうなずいた。


水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)と、
マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)も、
蝉人間やアールキングの根の掃討を担当していた。
「……許してほしいとは思わないけど、こうするより他にないのよ」
ゆかりは、蝉人間に同情しつつも、
ヘビーマシンピストルを二丁かまえ、
マリエッタと連携しながら攻撃を行っていた。
ゆかりのクロスファイアで、
蝉人間たちが一気に吹き飛ばされる。
空飛ぶ魔法で空中を舞っていたマリエッタのブリザードにより、
残りの蝉人間の群れも凍りついていった。

「カーリー。本気出してないでしょう」
マリエッタが、冷徹になりきれていない、ゆかりを責めるように言った。
「えっ、そんなこと……」
「だったら、もっと、集中しなさい!
どうせ、こいつらが1週間の命しかないのにとか、
余計なこと考えてたんだろうけど……。
戦場では、そういう隙が、命取りになるのよ!」
「……」
ゆかりは、パートナーの言葉に、唇をかみしめた。
「もし、部下のいる状況ならどうするの?
部下の命を危険にさらしても、敵に同情する気?」
「そ、そんなこと……!」
ゆかりは、マリエッタの言葉に、
目前の敵を見据えた。
そして、急所を狙いすまして、一撃で仕留める。
それが、敵に対しての、せめてものはなむけになると信じて。

その様子を見て、マリエッタはため息をついた。
(わかればいいのよ。
でも、いつまでも、放っておけないところがあるわね)

「あぁ、テメェ等アールキングの犬か?
前回派手にぶった斬ったんだが、まだ生きてんのか」
柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、
22式マルチスラスターの高速飛行と、フライトレッグの姿勢制御で、
蝉人間に対抗していた。
「ミンミンジージーうるせえんだよ、この虫どもが!」
蝉人間の鳴き声に、
嫌悪感をあらわにして、
トイボックスで片っ端から撃ち落とす。
「安心しろよ、一週間と言わずに今すぐあの世に送ってやる」
恭也は、アールキングへの怒りもあって、
蝉人間に一切容赦しなかった。
【落ちる男】という二つ名を持つ恭也は、
苗字の【柊】と合わせて、一部から【オチラギ】などと呼ばれているが、
今回ばかりは、空中から落ちる様子はない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
文明の利器の前に屈するがいい羽虫ども!」
恭也に撃ち落とされ、
蝉人間は続々と倒されていった。

こうして、蝉人間やアールキングの根といった脅威を、
引きつけてくれている者たちのおかげで、
探索を担当する契約者たちは、スムーズに進むことができているのであった。