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【選択の絆】消え去りし火の表裏

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第2章 石原肥満と皆の想い

「石原校長……線香あげたのに、何出てきちゃってるんだ」
アルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)は、
ゾンビになって蘇って来てしまった肥満を前に言った。
『ほっほっほ、ありがとうのう。
じゃが、儂にはまだやらねばならぬことがあるからの』
「って、石原さんが迷って出たってことを、
昔、縁のあった爺様に伝えたんだ。
そしたら、やたら達筆な手紙が送られてきたから、
読むことにするよ」

アルクラントは、曽祖父からの手紙を読みはじめる。


まずアルクラントに伝えたいのは
石原さんとは70年以上会ってないということであり
それはもうぶっちゃけ忘れられてても
おかしくねーんじゃないのってことである。

そんな相手にわざわざ線香あげに行くとか義理堅いというか
別に大した縁じゃないぞ、と。一緒に活動したのも1年位。

この間帰ってきたときお前言ってたじゃんかよ。
新宿の戦争に時間遡って言った奴等がいるって。
そこから半年くらいでもう国に帰っちゃったから。
親父死んでたことわかったし。

あ、次帰ってくるときは嫁候補つれて来いよ。
流石にそろそろ俺も死にそうだし。

あ、また話それた。
紙幅もなくなってきたしそろそろ終わりにすっか。

石原さんよ、あんたそんな人じゃなかっただろ。
死んでから後託した奴らにギャーギャー文句つけてんじゃない。
あんたはあんたの行くべき場所にいけ。そのうち俺も行くし。
じゃあな。

クラフト・ジェニアス


手紙の朗読を聞いて、
シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)が言う。

「えーと、100歳越えてるんだっけ?
曾お爺さん。あれ、そういえば校長先生とどっちが年上?
とにかく、歳の割にすごい元気ってのはよくわかるわ。
アル君より強いって言ってたものね。

っていうか嫁候補連れてこいって……。
あー、そういえばこの間のときは私置いて帰っちゃったんだものねー。
二度と戻ってこないと勘違いさせられて私泣いちゃったんだけどなー」

「いや、その、今、そんな場合じゃ」
「えーっ、ひどいー」
アルクラントに、シルフィアがわざとらしく泣き真似をしてみせる。

『ほっほっほ、女の子を泣かすのはよくないのう』
「いや、だから、今そういう場合じゃなくて!」
「私のことはどうでもいいんだ……」
「だから、そんなこと言ってないだろう?
ちゃんと、そのうち、連れてくから!」
「本当? 絶対だよ。
近いうちに連れてってね。
アル君の故郷、ソコクラントに」
シルフィアはにっこりと笑ったのだった。

『話はまとまったかの?』
アルクラントはコホンと咳払いして、
肥満に向き直る。
「手紙の話に戻るけど。
要約すると何やってんだこのジジイ、ってことのようだね。
さっさと成仏してください。
目がグルグルのグール、なんて校長の雰囲気に合わないし」
『これはこれで楽しいものじゃがのう』
肥満が目をグルグルさせながら言う。
「ともかく。
後を継ぐ奴を見届けるってことなのかもしれないけど、
その役目は私に譲ってもらおう」

アルクラントは試合会場を見渡す。

「この罵助人暴瑠の結末、しかと見届けよう」

アルクラントの宣言で、ボールが高く投げられ、
試合開始となった。